マリッジ・スイング ~婿になりたいなら、ホームラン王!~

市來 茉莉

1.結婚のため、打席立たせるね

 その日美蘭みらんは、テレビから聞こえてきた声に釘付けになる。


「うちの選手でホームラン王にならないと結婚できないヤツがいるんで。どんどん打席に立たせようと思ってる」


 ここ1年ほど、美蘭の心にずっと張り付いていたフレーズがテレビから流れてきたもんだから、リビングの真ん中で、冷や汗がじわりと滲む。


 このセンセーショナルな発言に対し、スポーツメディアが一斉に飛びついたことが美蘭にも伝わってくる。

 派手な色使いの文字で『監督のチーム私物化か?』という問題提起のタイトルまでつけられていた。

 カメラのフラッシュをいくつも浴びながらも、笑顔で平然とすり抜けていくのは、紺色の野球ユニホームを着ている男性。

 野球界のみならずメディア全般で注目されるその男は、彫りの深い美貌に淡いブラウンの髪をもつハーフ。

 城ノ内レイジ。北極カシオペアーズの監督だった。


 もう美蘭はふるふると震えていた。おぼつかない手でスマートフォンを取りだして、震える指先でメッセージアプリをタップ。この数分で胸にいっぱいに溜まった不安を、指先で一気に放つ。


宇汰うた君! 監督が、変なこと言いだしていない!?』


 ぱっと既読がついて、即返信がやてってきた。


『安心して。俺、やるから』


 余計に……。スマートフォンを持っている美蘭の手が震える。

 そして、両手で頭を抱え、天に向かって叫んだ。


「もうもうもう! お父さんのせいなんだからーー!」


『ホームラン王にならないと結婚は許さない』

 これは美蘭の父が、野球選手である恋人『上田宇汰』に言い放った文句だった。

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