お人好し大学生は普通の恋愛がしたい

リカルド

第1話 お人好し大学生

俺の名前は渚。大学に通う2年生。

身長は160センチでチビだ。恋愛経験は中学で少しだけ。

今まで背の低さから可愛いとは言われたけど、かっこいいとは言われてこなかったし非モテ人生を送ってきた。

でもこの大学ではなぜか、そこそこいけてるグループに入れた。

それは俺を含めて男女3人ずつの、計6人のグループ。

彼らはいわゆる陽キャで俺とは真逆の存在だった。

そんな彼らと出会ったのは大学一年生の頃。


入学式を終え、大学へ通い始めると部活やサークルなどの勧誘がすごい。

バスケ部、テニスサークル、ダンス部など陽キャが入りそうなところからも声がかけられる。

実は非モテの俺も、小学校から高校までバスケをやっていて、つい先日ボクシングジムに通い始めたほどのスポーツマンではある。

この大学に格闘技系のサークルがあれば入りたかったが、下調べが足りなかったな。

ちなみに部活はもう懲り懲りだね。

そして本当はバスケサークルに入りたかったけど、キャンパスが違うので、行くのがめんどくさいから却下。

テニサーとかもどうせ飲みサーかヤリサーだし、俺には向いてない。


部活やサークルに入らなくても、新歓にいけば友達もできたろうに。俺はそんな機会まで逃してしまった。

でも当時は授業で友達もできて、その友達の友達とも仲良くなれたから、大学生としては上々の滑り出しだろう。

なんとか普通の大学生をやれていたと思う。

授業で友達と談笑して、一緒に昼飯食べて、放課後はずっとやりたかったボクシング。最高の大学生活。

部活や受験から解放され、好きなことをやれる。あとは彼女さえできれば良いんだけどね。


5月に入って、大学にもなれてきたけど、1限にはなれなくて眠い。

その授業では急に席替えをするという通知がアプリにきて、友達と離れた席になってしまった。

そして隣になったのは女の子。緊張したっけ。

授業が開始する10分前にはお互い座っていて、チラチラこっちを見てた。

ここは男の俺が話しかけなきゃだろって感じで話しかけてみた。

渚「あの!」

?「はい?」

俺が声をかけると、彼女は大きな目をこちらに向ける。

すごく美人だ。とてもドキドキする。

渚「俺、渚って言います。あの・・・何年生ですか?」

?「私も一年生だよ!莉愛っていうの!よろしくね」


彼女はとても明るくて、俺には眩しい存在だ。

その時はもう、この子は仲良くできないかもって思っちゃった。

莉愛「話しかけてくれてありがとね!」

渚「うん。明るい子でよかった」

彼女はとてもフレンドリーな感じがしてすごく話しやすい。

しかし真っ直ぐに俺の目を見つめていて、俺はやはり緊張してしまう。

莉愛「私ね、渚のことは知ってたよ?」

いきなり呼び捨てで正直嬉しかった。

女子には”さん付け”で呼ばれることが多かったので、これは少し距離が近い感じがして嬉しい。


渚「え?なんで?」

莉愛「ボクシングやってる子がいるって友達から聞いてさ。珍しいなって」

そういえばいくつかのクラスで自己紹介をしたことがあったっけ。

ボクシングをやっているなんて言うと大体驚かれて印象に残りやすいのかもしれないな。

渚「そうなんだ・・・莉愛は趣味とかあるの?」

俺も呼び捨てで呼んだけど、大丈夫か心配だった。

莉愛「買い物とかかな?」

渚「そっか」

会話が広がらない。どうしよう・・・こんな時にコミュ障出すなよ俺!

女子と話す時はいつも沈黙ができてしまうんだよな。


莉愛「格闘技?好きなのかっこいいね。怖くないの?なんで始めたの?」

彼女が更に話を広げてくれる。やはり会話し慣れている感があるなあ。

渚「俺小さいから舐められること多くてさ。自分を守りたくて、あと人と喧嘩したくなくて始めたんだ」

莉愛「え?ボクシングやってるのに、喧嘩したくないってどういうこと?」

渚「んー・・・人の痛みを知れるからかなあ?」

正直自分でも何言ってるかわかんなかった。

格闘技やってる人って喧嘩っ早いと思われがちだが、俺は人に拳を振るうことはしたくない。

大切なものを守るために使いたいんだ。

莉愛「・・・かっこいいね」

渚「えへへ」

キモい反応をしてしまった。変に思われてないよね?


莉愛「本当だよ?女の子も守れるじゃんね?」

渚「彼女ができればね」

大切なものを守るためとは言っても、俺にはそんなものないかもしれないな。

莉愛「そうだね。やっぱ欲しい?」

渚「・・・うん。でもモテないから」

今まで彼女ができたことは一度だけ。

自分からアプローチもしたことはない。

莉愛「そんなことないよ!かっこいいって!」

満面の笑顔で俺に向ける。なんて素敵なんだろうか。

渚「ありがと」

莉愛「うん!」

笑顔が眩しくて惚れてしまいそう。


?「2人とも仲良くなったんだ」

誰かが俺に話しかけてくる。

莉愛「大!1限起きれたんだ」

そこには大柄のイケメンがいた。顔がすごい濃い。俳優みたい。

大「まあな。で・・・渚だっけ?話聞こえてたけど」

渚「うん。大であってる?」

威圧感を感じるが、決して悪い人には見えない。

大「うん。よろしくな。莉愛って男子と仲良くするの珍しいんだぜ?」

渚「そうなの?仲良くしてたかはわからないけど・・・」

自己肯定感の低さから、余計なことまで言ってしまった。

莉愛「キモい目で見てくる人たちとは違うってわかるからさ!」

大「モテ自慢いらねえ」


渚「2人ともモテそう」

大「まあな」

それはそうだよね。きっと俺とは全く違う、華やかな人生を送ってきたはずだ。

莉愛「もう、本当にバカ」

大「俺もう彼女出来たしな」

莉愛「はあ!?早すぎ!」

やっぱ陽キャってすごいと思ったのと同時に、莉愛が大と付き合ってないことに少し安心した自分に驚いた。

もう俺は莉愛に惚れちゃったのかな?

大「莉愛のこと貰ってやってくれよ渚」

莉愛「渚に迷惑かけないでよヤリチン」

渚「あはは・・・」

こんな素敵な彼女、俺にはもったいないよね。


大「渚ボクシングやってんだろ?すげえな」

渚「素人だよ。いっつもボコボコにされてるし」

実際に俺は素人に毛が生えたレベルだからね。

全く自分に自信なんか持てていない。

大「でもすげえって!」

渚「ありがと」

彼らと会話しているとすごく話しやすいし気持ちがいい。

俺も見習わないとなあ。

莉愛「私が渚と話してんだから邪魔しないで!」

大「はいはい。じゃあ俺は行くから」

渚「うん」

少し莉愛が嫉妬したような表情を見せたのが嬉しかった。


莉愛「LINE交換しよ!」

渚「え・・・いいの?」

俺はすごくドキッとしてしまった。

こんな美人さんと会話できただけではなく連絡先まで教えてもらえるなんてね。

莉愛「読み取って」

彼女は俺にQRコードを見せてくる。

莉愛「インスタやってる?私の検索してくれる?」

渚「おっけー」

あっという間に女の子と連絡先を交換してしまった。

高校でもこんなことあったけど長くは続かなかった。今度こそは頑張ろう。


その授業は莉愛とペアワークしながら、楽しく授業を終えた。

莉愛「渚面白いね!」

渚「ありがと。俺も楽しかった」

彼女のおかげで常に会話は弾みすごく楽しかった。

莉愛「そうだ!みんなにも紹介したいしさ、お昼一緒に食べよ!」

渚「え?いいの?」

莉愛「うん!あとで連絡する!」

彼女の友達と言ったら、きっと大みたいにイケている子達なんだろうな。

少し緊張はするけど仲良くなりたい。

莉愛と仲良くなれてよかった。

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