光学による伝達手段
「いえ……」
と、気付けば私は否定の言葉を漏らしていた。
ほとんど反射的に。
だからその直後、
「レルのお気遣いはありがたいことだと思います」
と、フォローする。フォローしながら、その気遣いを却下してしまった自分の心境を文章化してゆく。
「最終的には、その、こちらの村にお世話になるかもしれませんけれど――」
そう。
ロート村にお世話になるのは最終手段だ。
なぜなら――
「その前に、出来ることはやっておきたい、という心境なんです私」
「ですが、あなたが熊退治というのは――」
真っ直ぐなレルが、変わらず私を心配してくれる。
だからこそ私は、まずそれを否定する。
「そんなことしませんよ。退治の時に私が加わったって、邪魔になるだけですから。言ってみれば退治の前の準備に、少しアイデアを出そう、というぐらいのもですね」
「? それはどういう……?」
「リーンさんの説明では、まず――」
熊の居場所がわからないことが最大の問題であることが判明している。ならば捜索範囲が狭ければ、伯爵家にしても動きやすくなるのではないか?
……と、説明しておく。
出来るだけ、子供らしい言葉を選択して。
何せこれから、日本人としての知識を披露せざるを得なくなるだろうから、少しでも言い訳しやすいようにしておくに越したことは無い。
「それは確かにそうなのでしょう。ですが――」
当たり前にリーン女史が、私の提案に苦言を呈した。
何せこのままでは、方向性は合っていても、具体性が何もないからね。
「リーンさんの心配はわかります。そこも何とか出来るとは思っているんですが、その前にハラー村と同じような感じの村がいくつあるのか教えてください」
つまり、ハラー村と同じように、山というか連峰に位置していて、贅沢を言うならロート村と道が繋がっている村という事になる。
同じ山に存在しているって事は、その全ての村が巨大熊の被害を受ける可能性があるって事だ。
その私の質問の意図が伝わったのだろう。
レルのお父さんが、ハラー村の他にメナン村とザーギ村の名前を挙げてくれた。
ちなみに北からハラー、メナン、ザーギという名の村があり、三つの村ともロート村と道が繋がっているとのこと。
限りなく、私の考えている状況に近い。
地図が欲しいところだけど、地図はきっぱりと軍事機密に属する可能性があるので、要求するのはやめておいた。
今のところ、無くても説明出来そうだし。
そしてその三つの村が、ロート村よりも高い位置にあることを確認すると、私はこう切り出してみた。
「でしたら、それぞれの村で煙が出るようにすれば、合図をいち早く遅れるんじゃないでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます