第6話 ギルド登録で世界が変わる!
ライオネルとの一件のあと、俺たちは
目的は――冒険者ギルドへの登録。
「ご主人様、初めてのギルドですね。ふふ、なんだか緊張します」
ティアナが微笑みながら腕に絡んでくる。聖女の服装のままなのに、どこかラフな雰囲気を出しているのは、旅の間にすっかり“庶民慣れ”したせいだろう。
ミランは尻尾をふりふりさせながら前を歩き、「にゃはっ、ギルドってお肉の匂いがするにゃ!」と嬉しそうだ。
ルシアンはというと、後ろで無言で剣の手入れをしている。相変わらずクールすぎる。
木製の重厚な扉を押し開けると、そこにはざわめきと酒の匂いが満ちていた。
冒険者ギルド《ラグロット支部》。
昼間だというのに、受付前はクエスト掲示板を取り囲む冒険者たちでごった返している。
「おい、新顔だぜ」「あれ、聖女ティアナじゃね?」「猫耳もいるぞ、やべえ、パーティ華やかすぎ」
そんな声が聞こえてきて、思わず耳が赤くなる。
俺はできるだけ冷静を装って受付カウンターへと歩いた。
受付嬢の女性は、淡い金髪をまとめた知的な美人だった。
彼女は俺たちを見るなり、営業スマイルを浮かべる。
「ようこそ、ラグロット冒険者ギルドへ。初登録の方ですね?」
「はい、俺たちは今日から正式にパーティを組もうと思っています」
「承知しました。代表者の方のお名前と、スキルをお願いします」
……来た。
俺の黒歴史ともいえるこの質問。
「えっと……名前はカイ。スキルは——《ゴミ拾い》です」
受付嬢の笑顔が、数秒間止まった。
そして、機械のようにぎこちなく動く口。
「……ご、ごみ……?」
「はい。《ゴミ拾い》です。今までいろんなものを拾ってきました」
後ろでミランが胸を張る。
「にゃっ、ご主人の拾うゴミは全部キラキラしてるにゃ!」
「そうです。彼のスキルは……奇跡を拾う力です」
ティアナが真面目な顔で言うものだから、余計に誤解を生む。
ルシアンは腕を組み、「拾うという行為は、創造の裏返しだ」とか哲学っぽいことを呟いていた。
ざわ……と周囲がざわつく。
「ゴミ拾い……?」「は?」「なんでそんなスキルで聖女連れてんだ」
俺はあえて何も言わず、淡々と登録用紙にサインをした。
「では、こちらが冒険者証になります。……パーティ名は?」
パーティ名? そんなの考えてなかった。
ティアナが指を立てて提案する。
「“ゴミ拾い隊”はいかがでしょう!」
ミランが尻尾をぴんと立てて叫ぶ。
「ださっ……じゃなくて! “黄金のゴミ箱”にゃ!」
ルシアンが腕を組んで静かに言った。
「……“拾いし者たち”。悪くない」
みんなが俺を見る。
「……じゃあ、“拾いし者たち”で」
俺がそう答えると、受付嬢は頷いてパーティ名を記入した。
ギルドカードが光り、金属音が響く。
【パーティ:拾いし者たち 登録完了】
その瞬間、背後からどよめきが上がった。
「おい、あいつら本気だぞ」「ゴミ拾いで登録してる!」
「うそだろ、あんな美女三人連れて?」「おい、世界終わるんじゃね?」
俺はそのざわめきを背に、カードを握りしめた。
「行こう、みんな。俺たちの冒険が、ここから始まる」
ティアナが微笑む。
「はい、ご主人様」
ミランが尻尾を揺らす。
「お宝いっぱい拾うにゃー!」
ルシアンが静かに剣を抜き、光を反射させた。
「拾う者が、いずれ世界を救う。そういう予感がする」
俺たちは、ギルドの大扉を再び押し開けた。
背後で冒険者たちのざわめきがまだ続いていたが、もう気にならなかった。
なぜなら、俺たちはもう“ただのゴミ拾い”じゃない。
拾うことで、世界さえ変えられる。
そんな気がしていた。
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