異能対策室〜王来王家燕〜
@IXA_666
プロローグ【王来王家燕】
2020年。
日本全土を巻き込んだ大規模な戦争が勃発した。その引き金を引いたのは、革命を志す異能者と呼ばれるテロリストたちによる過激な蜂起だった。
異能と呼ばれる異端の力を集結させたテロリスト集団は、現状に不満を抱えた異能者たちが中心だった。
彼らは理想を掲げ、日本の社会秩序を根底から覆そうとした。
それに対抗するため、これまで隠れ潜んでいた異能者たちも決起し、また、それに呼応して一般市民も立ち上がった。
いや、もはや「非異能者」と呼ぶべき存在であったかもしれない。
この二つの勢力の激突は、凄まじい破壊力を持って日本全土に及び、関東と関西の一部を除くほとんどの都市は機能を失った。
戦争は終結したが、それはテロリストたちの完全な壊滅を意味しなかった。
生き残りは存在し、その中には首謀者の男も含まれていた。
その男は、日本の都市機能が壊滅した北の地、北海道へと逃げ延びた。
彼はかつての手腕を活かし、数ヶ月のうちにその地で独立国家「
テロリストたちの残党や、社会に対する不満を抱く異能者、犯罪者、さらには元軍人や半グレまでもがこの新国家に集結し、北州は一種の帝国として君臨することとなった。
その後、日本は戦争の傷跡を深く残したまま、各地で犯罪が蔓延する暗黒時代に突入した。
戦争に触発された異能者たちによる暴動が相次ぎ、かつては超能力と揶揄されていた異能は、今や非異能者たちにとって恐怖の象徴となった。
異能は命を奪うものであり、それは救う力でありながらも、破壊をもたらす恐るべき力であった。
異能を持つ者たちによる犯罪が、人々の日常を侵食し、怯える生活を強いる現象となったのだ。
そして、私もその波に飲まれた一人だった。
私――
その時の痛みは、言葉に尽くせないものだった。
怒り、憎しみ、そして異能者に対する赦せない感情が心を占めた。
ただ一つの思い――復讐が私を支配していた。
復讐、それは簡単なことだった。
私にとって、復讐を選ぶのは容易だった。
しかし――私はそれは選ばなかった。
私だけが苦しんでいたわけではないから。
多くの人々が、大切な者を失っているから。
私が復讐を果たしても、それで満足するのは私だけだ。しかし、ここにいる彼ら、彼女らは、決して満足しないだろう。
私が復讐しようとしなかろうと、復讐を望むものは多くいる。
だからこそ、私は決意した。
異能者が支配するこの日本を変えようと。
いや、たとえ完全に変えることができなくても、少なくともその均衡を保とうと誓ったのだ。
あの戦争の渦中に巻き込まれた幼い時の私はその思いに従って行動した。
そして、間違っていなかったと気づいた。
私の周りから聞こえる慟哭は、私と同じ希求を抱えていたのだから。
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