誰も見た話しのない「幽霊屋敷」。そこへ踏み込んでしまった少年が会ったのは、謎めいた和服姿の「魔女」千代子さん。小学生から中学生へ、少年が成長していっても、魔女は変わらないままで。そこには、少年の知らなかった、ひとつの秘密があったのでした。どうぞ、二度読み返してください。きっとジンと来るはずです。
上質な素材を丁寧に仕上げた、極上の練り切り菓子のようなストーリー。口にふくむと、ほろりと溶ける甘さとかすかな塩気が、濃茶のような人生の苦さを優しく包みます。
幽霊屋敷には、魔女が住んでいる。その魔法は派手ではないけれど、心を癒す魔法なんだ。時が流れるタカフミと、ずっと若いままの魔女。流れる時間と止まった時間。守りたかったものがあったから。その時間差が解かれ、魔法が世界に帰る時。寂寞と温かみを感じ、きっと心は満たされるだろう。そんな読後感を、全力で味わってみてください。