第25話
バーベキューは予定よりも早く切り上げる事となり、片付けを終えると早々に帰宅する事となった。
帰り道、最後まで一緒にいた氷室さんと二人で電車に揺られていると、スマホで安田さんと連絡を取っていたらしく、
「病院で手当てもしてもらって、家でゴロゴロしてるってさ。あんな事があったのに、普段通りにしてんの、なんか拍子抜けだよね」
「そっか。でも大事なくてよかったよ」
「そうだね」
改めて、僕らは安堵する。
一つ間違えば命を落としていた可能性もあったと思うと、ゾッとする思いだ。
「でも本当によかった。寧々が無事で」
シリアスにそう言う氷室さんは、下手すれば今にも泣き出しそうな表情にも見えた。それくらい安田さんの事、大切なのだ。
「大貫くんのお陰でね。あの時は本当にすごかった」
「うん・・・・・・」
今まで恋敵として見ていた相手だけど、今は大貫くんの偉大さに感服する他ない。彼の行動が安田さんを救ったのだ。あの場にいた誰もが立ち竦んでいた中、彼だけは咄嗟に動いていた。それは誰にでも出来る事じゃない。ああいうところにこそ人の本性が隠れていると思う。大貫くんはチャラチャラしているけれど、ああいう時、助けに行ってくれる男気を持っている人だったのだ。人は見かけによらない。口先だけ達者な人とは一線を画す。
僕の言葉に返事だけして以降、氷室さんは口を噤んだので僕もそれ以上話すのはやめた。そのまま気付けば最寄り駅に着いて僕らは別れを告げた。
「それじゃあ氷室さん、今度は学校でかな? またね」
「うん、じゃあね」
こうして今日が終わる。色々あって、あっと言う間の一日だった。楽しい思い出もあったけれど、あんな事があった後では、無事に終わってよかった。と纏めずにはいられない。本当に安田さんが無事でよかった。
§
数日後。氷室さんからメッセージが届いた。
文面は氷室さんらしい、要点のみを抽出したような端的な物言いで書かれていた。
『さっき寧々から電話があって、大貫と付き合う事にしたって』
「・・・・・・・・・・・・」
それを見て僕は固まる。
でも動揺したのも束の間、どんな返事を書こうかと僕は思いを巡らせる。返信した後、再び氷室さんからメッセージが届く。
『どこかで会えないかな? 会って話がしたいんだけど』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます