<スカスカ> - Side “Jet Black” Version.

連星霊

Yohaku

余拍

 これはまだイントロにも到達していない、言わば0拍くらいの場所。




◇◇◇




 東京、とあるライブハウス。フロアの広さとしては、学校の教室より狭いくらい。キャパシティで言えば、押し込めば100人ギリギリ入るか入らないかくらいの、小さな箱。

 照明は落ちており暗い。

 観客は20人程度。


 流れている有名バンドの曲が音量を増す。


 それにかき消される程のまばらな拍手を受け、3人の少女は光に照らされたステージへと姿を現す。


 1人は紫色の髪のショートカットで、毛先にウェーブがかかっておりボーイッシュな雰囲気。服装は軽く、オーバーサイズのTシャツにワイドパンツ。手にはドラムスティック。ドラムスローンに座ると、準備運動だと言うように音を出し始める。


 1人は蒼色の長い髪。学校の制服と思わしきワイシャツとスカート姿だがシャツの裾は外に出ておりネクタイも解いており着崩している。ステージ下手しもてのブルーメタリックのFender製ジャズベースを手に取り、ストラップをかける。かなり低い位置にベースを構え、右手はだらんとまっすぐ下まで下ろされており、ラフなスタイルで指弾きを始める。


 そして、ステージ中央からほんの少し上手側へ寄ったところに、もう1人。緋色の長い髪をなびかせながら、オリンピックホワイトのFender製ジャズマスターを構える。服装はこちらもベースの少女と同じワイシャツとスカート。はちきれんばかりの胸元を煩わしそうにしつつ、ステージ中央に立てられ、そこから横へとマイクを伸ばすマイクスタンドを微調整しながら、そこに取り付けられたピックホルダーからトライアングル型のピックを抜き取り、三本指で持つと、エフェクターを踏んでジャズマスターを鳴らす。


 演者が揃い、準備が出来ると音が止み、ステージの照明が落ちる。


 ────静寂の中にほんの少しのノイズ。


「──This one's called…『Shake it all off』」




 ────。

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