第16話 スマートフォン

 カップ焼きそばを食べ終えた二人は、再び外出する計画を立てる。


「おなかがいっぱいなのじゃ」

「じゃあ、軽くお散歩でもしようか。買い物はまだ時間あるし、明日でもいいし」

「それは名案なのじゃ」

「そうだ写真を撮ろうか。エリザちゃんの服すごく可愛いし。もちろんエリザちゃんも可愛いけど」

「しゃ……写真!?」

「だ、だめだった!?」


 想像以上にリアクションの大きいエリザベートに、千夜子も驚く。


「いや、だめじゃないのじゃが、写真を撮るとすごくお金がかかるのじゃないか?」

「大丈夫だよ。スマホでパチパチ撮るだけだし」

「す……スマホ」


 エリザベートの顔に、驚きの色が浮かぶ。


「もしかして、魔界ではスマホ超高い?」

「高いもなにも、超レアものじゃ。我も実物を触ったことはない」

「そっかぁ。人間界では普通に使えるし……そうだ、エリザちゃんのスマホを契約しに行こうか」

「さすがにそれは申し訳ないのじゃ」

「大丈夫、大丈夫。人間界価格だから。それに一緒にいない時に連絡取れないと不便でしょう」

「通信魔法じゃだめか? 我が思うにスマホは人間の特権じゃと……」


 今まで千夜子がスマホを使用しても、エリザベートは何も言ってこなかった。道行く人がスマホを使っていることについても、特に質問することもなかった。それは遠慮であったのだと気づく。


「私、魔法使えないよ?」

「そうじゃったな。ごめんなさいなのじゃ。そう考えると人間はすごいのう」


 千夜子が「なんで?」と聞き返す。


「スマホという機械を使えば、それぞれの魔導素質そしつに関係なく通信ができる。すごいことなのじゃ」

「なるほどね」


 千夜子が当たり前のように使っているスマホは、エリザベートからすれば魔法のようなツールなのだ。


 

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