第8話 お届けものです

 翌日。千夜子とエリザベートが朝食を済ませてしばらくした頃、インターフォンが鳴る。


「はーい」


 千夜子が玄関を開けると、外には段ボール箱を三つ抱えた男性が立っていた。


「お届けものです」

「どうも」

「ここにサインお願いします」

「あ、はい」

「ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございました」


 それがエリザベートの服や日用品であることに気がついた千夜子は、快く受け取った。


「ありがとうなのじゃ。その……こんなに持ち込んで邪魔じゃないか?」

「思ってたより少ないくらいだよ」


 床に置いた段ボール箱を一つエリザベートが開封する。中身は服と、分厚い封筒。


「これ、当面の間の生活費なのじゃ」

「え」


 千夜子の受け取った封筒はずっしり。厚みもあり、中に相当な枚数のお札が入っていることがわかる。


「足りるか?」

「うーん。これは無しでいいよ。私も一応稼ぎと貯蓄があるし、エリザちゃん一人くらいなら養えると思うんだ」

「でも……」

「そうだ、このお金はいざという時のためにとっておこう。それならいいでしょ?」

「う……うむ」


 何か言いたそうなエリザベートであったが、千夜子の決意が固く引き下がることにした。


「さて、他も開封しちゃおうか。足りないもの買いに行かないとだからね。私ずっと一人暮らしだからさ、いろいろと一人分しかないんだよねぇ。」

「千夜子は我が邪魔じゃないのか?」

「邪魔じゃないよぉ。むしろすごく楽しい! なんだかんだ私も寂しかったんだろうね」

「そうか。ならよろしくお願いするのじゃ」


 段ボール箱の中のエリザベートの服は黒一色。千夜子は、違う色の服も買ってあげようと密かに思う。

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