第4話

この世界に生まれて6か月程度経った


まだハイハイは出来ないが、寝返りが出来きるようになった。少しだけだが話すことも出来るようになった。


そして、目が見えるようになってから両親にも会えた。

父は綺麗な銀髪を刈り上げた、細身だが筋肉質の高身長イケメン。母は茶髪、長髪で一つに束ねた所謂ポニーテールを腰辺りまで伸ばしたスレンダーな美人さんだった。


やっと両親に会えたが、別に私のことが嫌いというわけではなく、それほどまで両親は忙しいようだ。その理由として、「エドちゃん、エドちゃん」と言いながら頬すりして来るほど、父はべったりとしてきて母に怒られていたし、母は母で、部屋の半分が埋まるではないかというほど服や調度品を買ってきていた。


正直何の仕事をしているのかまでは分からないが、公爵家というだけあって生まれもそれなりにすごいのだろう。


これほどまで愛情をくれていることを知れてよかったし、資金力と容姿を兼ね備えた両親のもとに生まれることでが出来てよかったとも思えるが、その分私に対する周りからの期待が大きいのではないかと少し不安になった。



―――――――



この世界に生まれてから1年が経った。


身長が伸び、背伸びをすることで窓の外が少し見える。

やはり公爵家というだけはあり、綺麗に整えられた庭園や木々が広がっている。そして家を囲む塀の奥には中世イギリスのような建築物たち。

初めてこの光景を見たときは、一日中窓に張り付いて外を眺めていた。今ではこの光景に慣れてきたが、それでも毎回感動を覚えるほど、とても美しい。


そして、今まで「転生」したということは理解はしていたが、外の風景を見たことで改めて別の世界にきたのだと実感した。だからといって何かが変わるわけではない、逆に何も知らないこの世界を見て回れることに対する興味が湧き出る。


だから私は初めて歩けるようになったとき、部屋から出た。


しかしそこは魔境だった。


通路を隔てて無数に並んだ扉の数々。様々な部屋を出たり入ったりを繰り返す数多のメイドや執事たち。


私はその光景に驚愕し、探検することを諦めた。


それからというもの特にこれと言って変わらず、両親は再び仕事に戻り、メイドや執事に面倒みてもらいながら生活を送っている。


魔法については以前魔法を使っていたメイドさんに何度か頼んで使用してもらったが、結局原理は分からなかった。


魔法に関する本や教えてくれる人がいれば何とかなるだろうが、家が広すぎるて本など見つけられないだろうし、一歳の子供に魔法を教える人などいないだろうからまだ無理そうだ。



――――――


この世界に生まれてから2年程経った。


走れるようになり、言葉も流暢に話せるようになった。

また両親に頼み込んで、メイド同伴なら庭園までなら出ていいと許可を得た。


初めて外に出たときは空気や景観の綺麗さに圧倒された。しかしどこまでも広がる青空に感化され、どこまでもなんでも出来るような気持になり、はしゃぎすぎてしまった。何度か転びかけてしまい、同伴していたメイドに注意されてしまったが。


そんなこんなあってからは走り出したくなる衝動を抑えながらも、毎日外に出て庭園を散策している。そんなとき、魔法を使えるメイドが付き添ってくれることとなった。名前はクララというらしい。黒髪ボブの似合う、綺麗系の女性だ。


「若様、今日はどちらに行かれますか?」


「確か、修練場があるんだよね。言ったことないから行ってみたいなぁ」


流石公爵家というだけあって、この屋敷はかなり広い。屋敷から門にかけては庭園が、そして屋敷の裏側には修練場があるらしい。


「今のお時間ですと、丁度訓練しているはずです。少々遠いですが大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だよ」


修練場までは想像していた以上に遠く、30分程度歩きやっと着いた。


そこには50人程度の男女が皮でできた防具を身に纏、木剣で打ち合っている。私とクララは邪魔にならないように遠くから眺めているが、何人かが私に気づいたのか、チラチラと気にするようにこちらを見てくる。


見たいものは見れたし、日も少し落ちてきたためクララと供に部屋に戻る。今日はいつもより歩いたため、かなり疲れた。


服を着替えベッドに腰掛ける。


「そういえばクララ、魔法使えるでしょ」


「使えますが、まだ若様には早いですよ?」


クララは危ないから教えません、という風にすぐに拒否してきた。


「使い方じゃなくて、魔法とは何かを知りたいんだ」


クララはそれを聞き、少し悩む様子を見せる。魔法の使い方ではなく魔法における知識、それに伴う危険性はあまりないと考えたのか、クララは魔法について色々と教えてくれた。


曰く、魔法を使うには魔力が必要。その魔力は大小様々だが必ずみんな持っている。そしてその魔力量は生まれが全て、成長するものではない。

曰く、魔法とはイメージ。想像力で何でもできる。しかし魔力操作の練度が必要。


簡単にまとめるとこのような感じだった。

やはりこの世界は詠唱は要らないらしい。・だからこそ、想像力と魔力操作の練度は一定数必要であり、使えるようになるにはかなり難しく時間がかかるようだ。


しかし私には地球の知識がある。想像力に関しては何とかなるだろう。


魔法の練習が行えるようになるには当分先が、楽しみだ。




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