Monologue①
【Side:雪宮しずく】水無月
***
私はずっと、一人だった。
一人で、それが辛くて、でも、自分からは変われなくて。
周囲の人から、視線を受けているのは知っていた。
それが良いものも、悪いものもあるということに。
だから、私はずっと、誰かに変えてほしかった。
誰かと変わりたかった。
そして、彼に出会った。
いつも教室の隅で、誰にも見つからないように、ひっそりと過ごしている――古本久澄くん。
久澄くんは基本的に、誰とも喋らないけど、実は結構笑うことを、私は知った。
極度の寒がりで、いつも制服の下にカーディガンを着ているのを、私は知った。
コーヒーが苦くて飲めなくて、ココアばっ
かり飲んでいるのを、私は知った。
目つきの悪さで誤解されがちだけど、実は女の子みたいに綺麗な顔をしているのを、私は知った。
でも、それでも私は、ずっと、見ているだけで。
何もできなかった。
そうして、六月になった。
六月。あの日を思い出す、どうしようもない季節。
そんなときにやっと、私は一歩を踏み出そうと思えた。
嫌な季節だからこそ。
私は変わろうと、やっと思うことができた。
どうやったら、彼に近づけるんだろう。
どうやったら、彼と話せるんだろう。
どうやったら、彼に伝わるんだろう。
ずっとずっと考えて、あの人の言葉を思い出した。
――しずくに、幼馴染がいたら、僕はきっと、嬉しくて嬉しくて、そして、安心できる――
幼馴染。
久澄くんと、幼馴染になりたい。
それが、今はいない、あの人を安心させられる、唯一の術なんだ。
だから、私は言った。
一歩、踏み出した。
愛の告白のような、けれども、実は全然違う、言葉を。
『久澄くん、私と、幼馴染に、なってくれませんか?』
私は、幼馴染がいない。
でも、どうしようもなく大切で、どうしようもなく素敵な、『
◇◇◇◇◇
この話で一章は完結となります。
ここまでお付き合い下さった皆さん、本当にありがとうございます。
二章からは友達が増えてきた雪宮と久澄の新しい日常を書きたいと思っております。
これからもよろしくお願いします。
面白いと思っていただけたら、フォロー&★で応援してもらえると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます