前々から土地の売却を打診して来ていた不動産屋に、親の代から住み慣れた土地を売り渡した私は、新しい我が家にジジを家族としてお迎えした。


 ジジのおトイレを置く為に床に新聞を広げていると……目に飛び込んだ記事に私は言葉を失った。


 私の売った土地が汚染土壌だったことが分かり、引責辞任した土地開発会社の社長の名前は『戌飼』……カレだった。


 いったいどういう事なのだろうか??


 カレ……犬飼さんは何を考えていたのだろうか??


 カレの立場や信条に思いを馳せると涙が零れそうになるが……色んな意味で、カレが“遠い”存在だという事に結局は気が付いて……


「とにかく無事で居て欲しいよね」とジジに語り掛けた。

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