「異空庫を作った後…。」 殺人姫:枷取菜緒は幸せに  たい

sterben

第1話 異空庫を作った後…。 その1

 病院の一室、延命措置を施されている寝たきりの少女の部屋、そこに菜緒は居た。

「…体は、どう?」

 ピクリと、動くはずの無い体が動いた。

「良い感じですね。何年も寝たきりとは思えないです。」

 少女は目を開け、笑顔を浮かべながらベッドから降り、立ち上がる。

「ん。」

 菜緒は《異空庫》から巨大な姿見を取り出し、少女に見せる。

「へー、髪が白黒になってますね。元々髪は黒だったのに。元が何色か分かりませんけど、目も金色?に。後、痩せては居ますけどガリガリでは無いんですね。」

「エリクサーもどき?を飲ませといたから…」

「…もどき?」

「私の血を聖水に混ぜて、神気を注いだやつ。」

「……血。」

「それで、生き返った感想は?」

 少女は頭を傾げて考える。

「お腹空きました!」

「ん、じゃあ後の説明は食べながらで。」

「はい!」

 病室を出ようと歩き出し、少女の方を振り向き

「紬ちゃんは何食べたいの?」

 と聞く。



 * * *



 〜菜緒の家 食堂〜

「このお粥、凄く美味しいです!」

 すごい勢いでお粥を口に運び…

「お漬物もいい具合にしょっぱくて。」

きゅうりと白菜の漬物をポリポリ食べ…

「おかわり、いる?」

「はいっ!」


 …数十分後

「ん、これで五杯目だから、シンプルに梅干しだけのやつ」

「いただきまーす!」

 そして、また、すごい勢いで食べ進める。


 …結局、紬は十杯目を食べ終えるまでずっと口に食べ物が詰まっていた。


 両手を合わせ、菜緒に向かって…

「ごちそうさまでした!」

「食べてる途中で、説明するつもりだったんだけど…」

「美味しくて、つい」

 紬は、頭をかきながら照れている。

「ん、まぁ、いいけど…説明始めるね。」

「よろしくお願いします!」



 * * *



「まず、その体の元の持ち主について…」

「はい。」

「名前は椎 濡羽。魂が体から抜けて成仏しちゃった人。」

「はぇー?」

「…魂が無いから起きないし動かない、生きた死体。」

「……。」

「病院歩いてた時に見つけて、持ち主の親に売って貰った。」

「人身売買!?」

 菜緒の後ろから一人が声をかける

「…お嬢様、説明が足りてません。」

「ん?」

「正確には、病院内の霊祓いの依頼を受け病院内を見回ってる最中に、延命措置を止めるという話を耳にし、どうせ延命を止めるならと新しい治療法を試すという条件で枷取家が治療代諸々を負担して体を引き取った…ということです。」

「ん、長文ありがと。」

「いえいえ。」

 紬は説明を聞きながら、一つ疑問が浮かんだ

「…でも、なんで体を引き取ったんです?」

「ん?」

「延命措置を止めるってなったの、多分私と出会う前ですよね?」

「ん。元々は《降霊術》試すために引き取ったから」

「じゃあ、私が入ってちゃダメなんじゃ!?」

「それは大丈夫。」

「お嬢様は《降霊術》を試そうとして師匠殿に止められてしまいましたので。なんでも私が仕える前の、お嬢様のご先祖様が試して成功したそうですが、代わりに師匠殿が神界で怒られたらしいです。数十年神界へ立ち入り禁止になったとか…」

「だから、延命だけして放っといた。」

「なるほど。」

「…で、次が今の紬ちゃんの状態。」

「呪力量?でしたっけ、多分3日前よりも増えてますよね。」

「ん、最初のお仕事の後にこっそり呪力あげたから。後、騒霊になってて…」

「魂が無い体に取り憑いた?ですよね。」

「ん。体を奪う、"成り替わり"に近いけど…騒霊(ポルターガイスト)でもある、一応不死族の仲間入り。」

『"成り替わり"は人に憑いた霊が、元々の魂を追い出すor取り込むことで成る。』

「それに…生き返った感想は?って聞いたけど、実はまだ生き返ってる途中だから、体から離れれるし、簡単に死ぬ。」

「えっ!?」

「そのうち体が魂に、魂が体に馴染むから、霊としての能力の一部が術式として体に刻まれる。そしたら完了。」

 椅子から立ち上がり

「…続きは庭で。」

庭に向かって歩き出す。



 * * *



〜枷取家 庭〜

「今から、紬ちゃんを強くする。」

「おー!」

「馴染む前に霊として進化させる。」

「「おー!」」

 聞き覚えのある声が聞こえ、紬が後ろを振り返る

「こんちは」

「一応関係者だから…悠、呼んどいた。」

「菜緒姉、千賀のお母さんは無理だって。おまけで千賀と鈴姉がついてくることになるって言ってた。」

『千賀ちゃんはともかく、鈴ちゃんには見られたくないし…』

「ん、分かった。」

「悠君こんにちは!三日ぶりですね。」

「紬さん生き返れてよかったね。…見た目変わってるけど。」


「悠、これから紬ちゃん進化させるから、案出して。」

「分かってるって。」

 菜緒は《異空庫》に手を入れ、ホワイトボードと踏み台を取り出す。

「ちゃんと機能してるみたいだね。…家じゃ相変わらず使えてないけど」

「ん。悠。」

「はいはいっと。」

 菜緒からペンを受け取り、踏み台に乗ってホワイトボードに書き始めた。



 紬 ポルターガイスト【騒霊】 進化先候補


・ゾンビ【腐肉人】 (←退化だ、コレ。)

・スケルトン【骨人】 (←コレも退化…。)

・ゴースト【霊】 (←退化…。)

・レイス【幽霊】 (←紬さん、元々コレ。)

・ファントム【幻霊】 (←派手なだけ、火力は無い。)

・スペクター【亡霊】 (←強い執念が必要、主に恨み。)

・ジバクレイ【地縛霊】 (←移動に制限がかかるけど、強い能力になりやすい。)

・リッチ【不死導師】 (←術系の進化先。高火力。)

・ヴァンパイア【吸血鬼】 (←物理系。適性があるか、誰の眷属になるかが重要。)

・レギオン【群霊】 (←数の暴力、術式化したら多分使役系になるハズ。)

・ノーライフキング【不死之王】 (←素質がないと多分無理。)


・オーバーロード【超越者】 (←無理。)


「…大体こんな感じかな?他にもあるだろうけど、呼び方は人が付けたやつだし、ゲームじゃないから進化先一覧とか無いし…一旦これで終わり。」

 悠はペンのキャップを閉め振り返った。

「おぉー!すごいですね!」

「ん。お疲れ」

「十二個書いたけど…半分近く、書く意味無かったね。退化と無理で。」

「紬ちゃんは、どれになりたい?ここに書いてるの以外でもいいけど…」

 ホワイトボードを見つめ、

「んー、一つづつ詳しく聞いていいですか?」

「どうぞ?」

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