激イケメン女に「美しい手だね、働き者の手だ」って言われて〜!って思って頑張る女

たまごパン

激イケメン女と結婚したい女の子

 異世界転生、というものなのだろう、これは。



 高いところの資料を取ろうとしたら頭の上に落ちてきて、強い衝撃を感じて気を失ったところまでは覚えている。

 目が覚めると、こちらを覗き込む綺麗な女性と目が合った。

何を言っているのかは分からないがとても安心する声で、柔らかく微笑んでいた。

正直どちゃくそ好みだった。一目惚れかもしれない。

その女性の後ろから、むさ苦しい筋骨隆々の男が覗き込んできた。長年の経験からわかる、雰囲気からこの2人は夫婦だろう。失恋した。

とても悲しくなって、なぜか感情を抑えられなくて大泣きしてそのまま疲れて眠ってしまった。

赤ん坊の泣き声、私からしてるってことは、これはきっと異世界転生というものなのだろう。




 数年が経った。

前世で読んだことがある異世界転生モノでは、前世知識だとか、チートだとか、色々あったが、そんなもの使う気はないし、チートなんてそもそも持って無さそうだった。

ただ、私には夢がある。それは、

激イケメン女に「美しい手だね、働き者の手だ。」なんてそっと手を握られてそのまま結婚するのだ。

いや正直、そんなセリフ言われなくてもいいからめちゃくちゃかっこいい女性にナンパされたい、付き合いたい、あわよくば結婚して、夜を共にしたい。

でも軽い人はあんまり、できれば空き地に咲く一輪の花をひっそり愛でてくれるような、一途でかっこよくて、そんな方がいい。


 前世では結局誰とも付き合えなかったし、今世こそは、なんとしても叶えてみせる。



 そんな夢を胸に、男にはモテないように地味に、でも自分を磨けるよう、美しい母の真似をしつつ、この世界のことを調べていった。

その結果として、この世界は所謂、剣と魔法があり、ダンジョンがあり、魔王と勇者……は遠い昔のお話らしいのだけれど、そのような世界のようであった。

羨ましくも美しい母を射止めた父は、私が産まれる前は冒険者をしており、聞いてもいないのに数々の冒険譚を聞かせてくれた。

森の中にひっそりと咲く一輪の麗しき花のような素晴らしい母は、そんな父が冒険者として活動していたギルドなる組織の受付嬢をしていたそうだ。


これだ、と思った。

受付嬢として働いていれば色々な人とも出会えるだろう。その中にはきっと、私の憧れる、激イケ「美し手」女にもいることだろう!

そう思った私は母に、受付嬢の話を沢山聞いた。

受付嬢になるには何が必要か、冒険者にはどんな人がいるのか、それはもうあらゆることを。

10歳になったころに教会とやらに連れてこられて水晶に手をかざしてなんやかんやして大騒ぎになった事もあったが、知らない。それから父が私を鍛え始めたが、知らない。伝説の戦士と同じ職業だとか、「力」が見たこともないくらい高いだとか知らない。私は受付嬢になって激イケ女に出会うんだ!

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