第23話 拙者、剣士でなく忍に御座る

「拙者は死なぬ」


左手を失ったドラゴンハンバーグ忍者はその目線の先にディープ・ネイドを見据えていた。


「…」


忍者は大剣の切先を彼女に向け高らかに豪語する。


「同胞よ、腕の一本落とした程度で拙者に勝ったと思ったか?残念だが貴様では拙者に勝てぬ。絶対にな。」


「…?」


「解せぬか。然らば…その身に教えてやる!!」


大剣を残った右手でで引き摺りドラゴンハンバーグ忍者は走り出す。


「…『丸鋸ヘリコプリオン』!」


再び丸ノコが襲い来る。


「でえェい!!」


ドラゴンハンバーグ忍者は右手の大剣をディープ・ネイドに向かって思い切り投げつける。

巨大な鉄の塊が彼女目がけて飛んでいく。


「飛び道具が貴様の特権と思うたか!」


最小限の動きで丸ノコを躱し、忍者は叫ぶ。


「…!」


ディープ・ネイドは冷静に飛んできた忍者の大剣を日本刀型ステッキで打ち払う。


この時彼女は気付いていなかった___

___大剣で隠れた死角から煙玉が飛んできている事に。


「!!」


炸裂した煙がディープ・ネイドを包む。


「悪いが拙者、剣士である前に忍で御座る。」


彼女が気付いた時には既に忍者は大剣を持ち間合いに居た。


「『メガ__


「__遅い!」


ザンッ!


ドラゴンハンバーグ忍者の鋭い大剣の一撃はディープ・ネイドを真っ二つに叩き斬った。


「"逢引氾瀑斬あいびきはんばくざん"!」


ドラゴンハンバーグ忍者は残心すると、静かに刀を納めた。



***



真っ二つになったディープ・ネイドの体は霧の様に消え、やがて元のビー玉に戻った。


「貴様が負けた理由、教えてやろう」


それに向かって忍者は静かに語りかける。


「願望機兵は願われた姿になるのだったな。貴様もそうだろう?」


ビー玉は返事を返さない。


「拙者は願われたのだ。あの子から『勝て』とな、ただのそれだけだ。それだけだが、それで充分。片手を失おうが首が落ちようが拙者は勝つ。何故なら___


_拙者はドラゴンハンバーグ忍者だからだ。」



そこまで言ってドラゴンハンバーグ忍者は地面に倒れ伏す。


「しっかりするトゲ!ドラゴンハンバーグ忍者!」


「心配無用…少し肉汁を流し過ぎただけだ。暫く眠れば腕も戻る。」


そう言ってドラゴンハンバーグ忍者はビー玉に戻る。


「…とりあえずビー玉は二つとも回収トゲね」



***


「〜〜ってな事があったトゲね。」


泥地哀浜支部のデスクにビー玉を二つ並べ、アーちんはドラゴンハンバーグ忍者の死闘を事細かに報告した。


「ドラゴンハンバーグ忍者がここまでの負傷…強いねそのディープ・ネイドってやつ」

真鈴ますゞは慣れない手つきで報告書を書く。


「願望機兵と怪人の重ね合わせみたいな物トゲからね」


「ドラゴンハンバーグ忍者…早く治ると良いな」

客間の椅子に座った将吾は心配そうな顔をした。


「…将吾くん、この玉って願いで変身するんだよね。もしかしたらドラゴンハンバーグ忍者が治ることを願ったらいけるんじゃない?」


「そうか!やってみる!えっと忍者のはこの赤いビー玉の方だから。」



ドラゴンハンバーグ忍者が治りますように


ビー玉が光る。

「うおおおおおおおお!」

腕の戻ったドラゴンハンバーグ忍者が現れた。


「治ったねあっさりと。」


「都合の良い玉トゲ」


「やったー!」

将吾が飛び跳ねる。


ドラゴンハンバーグ忍者は辺りを見回している。

「ここは…魔少連支部か」


「とりあえず机から降りるトゲ。」


「真鈴殿、先刻は世話になった。感謝する。」


「いやいや此方こそ、大怪我してまで戦って貰って。加勢できなくてごめんね」


「謝らずとも良い、拙者が言い出した事だ。それに将吾殿を狙われた以上護衛役が離れるわけにもいくまい。」


この人存外気遣いの人なんだよな…と思う真鈴であった。


「ところで真鈴殿、失礼を承知で聞くのだがナマコの魔法は臓物を吐けるのか?」


「えっうん、あんまやりたくないけど吐けるのは吐けるよ」


「やっぱり臓物の魔女だ!」


「将吾くん、私あくまでウニの魔法少女だからね?そんな怖い名前してないからね?」


そんな談笑の中突如アーちんが言った。


「一つ良いトゲか?」


「どしたのアーちん」


「仮説トゲけど。あの怪我のドラゴンハンバーグ忍者が一瞬で治ったって事はトゲ。ディープ・ネイドも同じなんじゃないトゲか?」


真鈴はその言葉にぞっとした。


「それが本当なら…倒しても無限に復活するって事になるよね」


机の上のもう一つのビー玉に視線が集まる。


「どうしたら…」


「ビー玉を壊すのは?」


「魔物は量産したと言ってるトゲ。全部破壊は現実的でないトゲ…」


四人は途方に暮れる

なかなか恐ろしい事態になってきた。


その時、考え込んでいた忍者がふと何かを思いついた。


「拙者に良い考えがある」




_____________________

続く

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