第20話 僕の考えてた最強の忍者が!

9月15日木曜日(岩ヶ瀬達がドラゴンハンバーグ忍者と出会う2日前)


この世界には魔法少女が飽和している。


正確には、魔法少女だけが。


あんなに数がいるのにどうして男の子ウケするカッコいいヒーローはまだ夢物語なのだろうか。


「せめて実在すればなあ」


竜見たつみ 将吾しょうごは来年小6になる。そろそろそう言う趣味も卒業かなぁ…とそんな事をぼんやり考えていた。


今日は朝からマラソンがあるせいでなにかと億劫だ。


その退屈のままにやたら野菜の多い給食を食べ終わり適当に廊下を歩いていた。


「…なんだこれ?」


床にビー玉と紙切れが転がっていた。紙切れには「何デモ欲シイ物ニナル石デス」と書かれている。雑な説明書の様だ。


そんな事ある訳ないと思いながらビー玉を拾い上げる。

適当に思いついた事を念じてみた。


・なんかめちゃつよのヒーロー出せ!

・ドラゴンとか出ろ!かっこいい奴!

・忍者とかでもアリ!

・でっかい剣とか付いててさ!

・あそうだ今晩ハンバーグ食べたい!チーズ入ってる奴!

・etc...

適当にやり過ぎてどうでも良い事まで願ってしまった。ビー玉は特に反応しない。


「だよなぁ…」


落とし物コーナーに投げ込んで教室に戻る。やっぱりヒーローなんて…



***



9月19日月曜日(19話の翌日)


いた!ヒーローいた!


暇だったので本でも読もうと放課後に図書室に行ったらそれは居た。


ドラゴンの羽と尾。網焼き目のハンバーグ頭、忍び装束にでっかい剣。


僕が願った事ばかりだ。


「まとめて出てくるんだこう言うのって…」


「む?何処かでお会いしたか?」

話しかけて来た。口無いのに。


「えっと…そのハンバーグチーズ入ってる奴ですか?」


「貴様何故それを知っている。」


「やっぱり!僕だよ!ほらビー玉に願い事した!」


僕は事細かに木曜日の事を説明した。


「…よもや生みの親にまみえようとは」

忍者は少し驚いていた。


「それで…何してたの?」


「なに、魔物とやらが街で暴れていると聞いたゆえ、それらを退治する方法を調べておった。」


「戦えるの!?」


「無論、拙者はドラゴンハンバーグ忍者。この学校を脅かす者を成敗するのみだ」


「カッケェ〜!!」

名前がそのまま過ぎるのは気になったが他に良いのを思いつかないのでそのままにした。


「ところで魔物って生物図鑑に載ってるもんなの?」


「魔物の姿と似た生き物はその魔物と弱点も同じと聞いた」


へぇそう言うもんなんだ。


「じゃあ僕も手伝うよ」


「良いのか?」


「親の責任って奴だよ」


「…かたじけない。」


「この辺の魔物の感じだと…海の生き物に絞った方が良いかも!」


「ほう…一理あるな。」


 それから放課後の人がいない時刻には図鑑を読み漁るのが僕とドラゴンハンバーグ忍者の日課になった。ドラゴンハンバーグ忍者はいつでも人型からビー玉に戻れるから意外と友達にはばれなかった。


***


1週間ほど経ったある日の事だった。


「ねえドラゴンハンバーグ忍者!ナマコって体色変えたり表面を硬化したり出来るんだって!」


「なるほど、あの娘はそれで…嗚呼いや此方こちらの話に御座る」


「あとね!ナマコって内臓吐き出して攻撃出来るんだって!」


「臓物をか!?拙者で言うところのチーズ…あの娘そんな事も…?いや流石に年頃の乙女がその様な真似はせぬか。」


「おとめ?」


「なに、知り合いにナマコの戦士が居てな。ハハハ」


そんな微妙なモチーフの魔法少女いるのか…


「…む。」


不意にドラゴンハンバーグ忍者が何かを察知した。


「将吾どの、ここで少し待っておれ。拙者野暮用が出来た。」


そう言ってドラゴンハンバーグ忍者は大剣を担いで図書室を出て行った。



***



ドラゴンハンバーグ忍者はひとり夕闇のグラウンドに佇んでいた。


「…また性懲りも無く魔物か。」


「良く気付いたトロね」

空から数体の魔物と共にドグラ・マグロが現れる。


「今日こそ君を連れ帰るトロ」


「拙者を倒すなら魔物百匹でも連れて来るのだな」


「言ってくれるトロね。今日の魔物は一味違うトロよ!」


魔物は一斉に襲いかかる。がドラゴンハンバーグ忍者はそれを的確に捌き、吹き飛ばす。


ギィィェェア…


「変わったのは貴様らだけでは無い。知恵を得たドラゴンハンバーグ、とくと味わうが良い」


ドラゴンハンバーグ忍者は超ハイパー最強ドラゴンカリバーをドグラ・マグロに向け構えて高らかに言い放った。


「次は貴様だ。」



_____________________

続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る