第15話 いざ体育祭!
今日は日曜日、体育祭当日だ。
文化祭の方は準備の日に黄間さん
「よっしゃやったらぁ!」
「いつになくやる気トゲね…」
それもその筈、学祭の期間中は魔法少女は休みなのだ。
まあ自分のなりたかった仕事が休みで喜ぶのあんまり良くない気もするけど。
「あっ居たっス、そろそろッスよ」
黄間さんが顔を出す。
「もうそんな時間か。沙羅ー、リレー行くってよ」
「ちょい待ち〜」
沙羅は水筒を片付けながら言う。
直前で魔物の襲撃にあった(事になってる)私達三人はこのリレーへの出場が危ぶまれていたが、全員無事元気モリモリだった。
「じゃあ決着つけるッスよ」
リレーの集合場所まで移動しながら黄間さんが言う。
「ノリノリじゃん」
一昨日の落ち込み様はなんだったのか
「勝負する以上は楽しむッスよ〜負けたら、な・ん・で・も…っスもんね〜」
黄間さんはニヤニヤしている。
この子無邪気そうで案外強かかもしれない。
「あれ?ガゼちゃんと黄間さんそんなに仲良かったっけ?」
横から沙羅が口を挟む。
「いや〜魔物襲撃後に話してたら意気投合しちゃってさ」
「え〜ズルい私も仲間入れてよ〜
「言わなくても勝手に入ってくるでしょアンタは」
「という訳でよろしくね〜黄間さん!」
「うぃ…ッス」
急に歯切れ悪いなこの人
「どうしたの急に」
小声で聞く
「いやその…初対面が気絶させて人質ッスから未だにどう接すれば良いのか分かんなくて…結局謝れてないし…」
結局沙羅は黄間さんに気絶させられた辺りをよく覚えておらず、なあなあにする事になったのだ。その所為で黄間さんは謝るタイミングを見失っていた。
「何ヒソヒソ話してんの?」
そんな事はつゆ知らず沙羅当人はこのように呑気な様子だった。
「あー…えっとね、黄間さんめっちゃ人見知りなんだよ」
物凄く適当に誤魔化してしまった
「…ッス」
「ん〜まあじっくり仲良くなるか〜」
コミュ力の鬼め
そうこうしてるうちに集合場所についた。
***
パァン!
勢いよくピストルの音が鳴る
いけー!
差せー!
トゲー!
頑張れー!
なんか変な応援混じってんな。
私の青組の方がややリードしている。それもその筈。赤組の秘密兵器は私の横にいるこの黄間黒江、ここまでに他の組は出来るだけ有利を取らなければならない。
ついに私の番だ。テイクオーバーゾーン内で構える。やってきたのは沙羅と緑組の走者だ。
「ガゼちゃん!」
バトンが渡る。こちとらこの3ヶ月走りっぱなしだ。引き離せるだけ引き離してやる。
「PC部岩ヶ瀬さん速いです!これは青組のダークホースか!?」
実況がそう言った。PC部はそんなに関係ないだろ。
緑組とはかなり差を引き離せた。私がグラウンドの四分の一周くらいを回ったところで黄間さんにバトンが渡る。
数秒、ほんの数秒経つ頃にはもう黄間さんは緑組の走者を抜かしていた。侮ってた訳じゃないけどやっぱ県三位の足の速さは化け物じみている。
みるみる差を詰められていく。
まずい、なんとか追いつかれる前にバトンを_
そう考え終わる前に黄間さんは私の右横まで来ていた。黄間さんは私に目もくれず前だけを見ていた。このまま抜かれるのも時間の問題で_
違う、違うだろう
私が言ったんだ、彼女の全力に応えると。
なら余計な考えは後だ。
私は遠ざかりそうな黄間さんの背中に必死に喰らいつく。
一進一退の壮絶なデッドヒートの末、アンカーにバトンが渡したのはほぼ同時だった。
私達は走り終わった選手の列にのろのろと並ぶ。
結果は僅差で赤の勝ちだった。
***
「あ〜疲れた〜」
弁当の冷めた唐揚げを食べながら呟いた。
「久々に全力で走ったっスよ」
隣で黄間さんが晴れやかに笑っている。
「やっぱ速いね黄間さん。負けちった」
「いや自分が追い抜いて引き離せなかった相手は転校前でも中々居なかったッスよ。」
「そう?やったー!嬉し〜。まあ、でも負けは負けだよ。」
「じゃあ岩ヶ瀬サン、言うこと聞いてもらうっスよ」
金の掛からない内容でありますように
「魔法少女手伝わせて下さいッス」
「えっ」
想像だにしてなかった。
「自分がやらかした償いがしたいんス。雑用でもなんでも良いっス!」
すっごい真面目だけどこれどうすりゃいいんだ。
「ヘイ!アーちん」
「何トゲ?」
例によってにゅっと現れる。
「…これ私が決めて良いやつ?」
なんか色々規則とかあったよね確か
「聞いてみるトゲ」
アーちんは通信端末で支部に電話する。
「別に良いらしいトゲよ。」
そんなにあっさりいけるんかよ。
「やったッス」
「おめでと〜」
「よかったトゲね(元々社会奉仕活動として手伝わせる予定だったとは今更言えないトゲ)」
ギャアァオォォォ!
不意に魔物の声がした
「えっ今来んの」
体育祭の時に乱入するとかじゃないのかよ
「黄間さんは避難誘導、真鈴ちゃんは変身トゲ。」
「早速初仕事ッスね!」
「弁当食べ掛けなのにぃ…クローゼスアップ!」
三人(二人と1匹)は駆け出していく。
賑やかになってきたな、と真鈴は心の中で呟いた。
_____________________
続く
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