第14話後 そこはかとなく気まずい空気!


「とりあえず大体聞けたからここまでにしとくトゲ。」


昼ごはん(取り調べなので何となくカツ丼)を食べもう少し質問をしてから取り調べは終わった。


「じゃあ僕は月海つきみさんに報告に行ってくるトゲ。」

そういえば事務員さんそんな名前だったな。


***


休憩室に黄間さんと二人取り残されてしまった。微妙に気まずい空気が流れる。


「…さっきは取り乱して悪かったッス」


「洗脳はしゃーないって」


沈黙が続く。

気まじ〜


「…岩ヶ瀬さんはなんで魔法少女になったんスか?」

突然黄間さんが切り出した。


「え?…んー恥ずかしいから誰にも言わないでね?」


「わかったっス」


「その、魔法少女になるの憧れてたんだ、私。キラキラした服で悪者倒して、たま〜に日常で魔法使ってズルするのが夢だったの」


「となると…だいぶウニの魔法少女はかけ離れてるっスね、なんか敵みたいだし」


「本当にね。なんなんだろうねマジで。だから心だけでも立派な魔法少女でありたいんだけどね…それ気にしながら戦える程強くないし、やっぱ難しいね何事も」

へへ…と小っ恥ずかしくなって笑う。


「いや、実際立派っスよ。昨日の状況で自分に魔物の方を倒す選択は出来なかったっス」


戦った人に褒められるのはちょっと嬉しい。


「やっぱ皆何か背負って戦ってるんスよねぇ…自分、全力で戦う事ばっかり考えて…ガキみたいッスね…。」


「それは私の魔法少女への憧れも似たようなもんだよ。それで死ぬかと思ったし昨日」


黄間さんは布団に寝転がる


「あーあ、魔法なんか手に入れても、結局何も気にせず全力で戦い切るなんて無理な話だったっスね…色々被害出した今更言えた義理じゃないっスけど」


黄間さんはうつろに天井を見つめている。どうにか元気づけてあげたいけど言葉が見つからな_


「あっそうだ!」

を完全に忘れていた。


「何スか?」


「まだ勝負って決着付いてないよね?」

私は身を乗り出す。


「いやでも、もう自分変身出来ないッスよ」


「勝ったら街を〜とかの約束は置いといて、まだあるでしょ?勝負の方法!」


私は休憩室のカレンダーを指差す。


「…体育祭?」

黄間さんはまだ腑に落ちていない


「リレーで決着つけようよ!黄間さん!」


黄間さんは目を見開いてビックリしている。


「…足で自分に勝てると思ってるっスか?」


「わかんない。わかんないけど、私全力で走るからさ!勝負しようぜ!」


「……」

黄間さんは少し考え込む。

「いいんスか?」


「いいとも!…古いか…」


「いつのTVっスかw」

黄間さんが吹き出す。


「岩ヶ瀬さん…勝ったらどうするッスか?」

そう言った黄間さんの顔は何かが吹っ切れていた。


「じゃあ、私が勝ったら…メアド交換しよ」

岩ヶ瀬は笑みを浮かべる


「なるほどッスね。なら私が勝ったら一つ言う事聞いてもらうっスよ」


「おう…どーんと来い!良識の範囲で」


私達は顔を見合わせて笑った。




***


一方、汐路逢浜上空


ドグちゃん、もといドグラ・マグロは一人戦いの跡を眺めていた。


黄間きはざま黒江くろえ…割と惜しい人材だったトロけど、捕まったなら仕方ないトロ。余計な解析される前にトゥナーの命令受信装置は停止トロ。」


少し物惜しそうに手元の端末の「停止」と書かれたボタンを押す。


「まあ複製ステッキはいくらでも作れるトロから、また誰かスカウトすれば良いトロね。」


そう呟くと、ドグラ・マグロの姿は夏空に溶けていった。




_____________________

つづく

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