「『鎧姫冠（パラディアラ）』！」

「『全加速（フルアクセラ）』」

両者の魔法を帯びた肉体が再びぶつかり合う。

「自分に飛び道具が無いのが残念っスよ！」

素手での衝突は不利と見たブルフィン・トゥナーは投げ捨てた大鎌を拾い、超高速の凄まじい連撃を叩き込む。『鎧姫冠（パラディアラ）』で防いではいるが、衝撃や痛みは少しづつ私を削る。

「自分の加速とディアデマちゃんの硬化！どっちが先に切れるッスかねえ！！」

彼女の加速が解ければ私の一撃が当たり、私の硬化が解ければ彼女の一撃をモロに喰らってしまう。まさに我慢比べだ。

「ぅおらっ！」

私はナマコの魔法ステッキ(金砕棒)を思い切り横に振り払う。だが硬化中は動きが遅く。ブルフィン・トゥナーは軽々とそれをかわし距離を取る。

「その戦法じゃ自分には当たらないッスよ？それかもしや限界の時間ッスか？」

「…ッ」

時間だ。『鎧姫冠』が解けていく。

「もう終わりッスか！『超過速（アクセラオーバ）』！」

その隙を逃さず彼女はさらに加速していく。

彼女の鎌が魔法なしの私の防御を易々と貫き、お腹に深く突き刺さった。

「ぐぅ"っ…！…と、き…」

腹部が熱い。マスクの中で鉄の味がする。自分の鼓動が聞こえる。

「時？そうっスよねぇw時間が足り無かったッスねぇ」

「……この瞬間（とき）を待ってた」

ギィィアァァアア！？

突如沙羅を抱えていた大型魔物の腕に炎が爆ぜる。

「なっ！？」

ブルフィン・トゥナーは何が起こったのか理解していない。

「『偽装束（アクトドレス）』＿解除」

答え合わせの様に魔法を解く。

「＿＿全く、無茶しやがる魔法少女トゲよ。」

透明から解除され、アーちんが現れる。

「ちょっと焦げたけどまあ無事トゲね」

魔物の腕から滑り落ちた沙羅を抱えてアーちんは一目散に逃げる。

「まさか、透明化を妖精に使ったっスか？」

「正解…ゲホッ私は透明の魔法使ってる間他の魔法使えないけどアーちんは使えるからね。火球の魔法で不意打ちさせたんだ。」

「…それが自分が刺されてまでやる事っスか？」

トゥナーは聞いて尚理解できてない様子だ。

「わかってないなぁ黄間さんもアーちんも…」

私は痛む身体に無理矢理力を振り絞る。

「魔法少女がなァ！人質を放って戦う訳ねえだろがい！」

その気迫にトゥナーは気圧される。

「！！…この女イカれてるッス！」

「(同情はするトゲよ)」

若干引き気味のブルフィン・トゥナーは大鎌を私の腹から引き抜こうとする。しかし＿

「ッ！？離れな＿＿＿」

私の腹の口が鎌を押さえていた。それでもちょっと痛いけど。

「『マジカルビーム・キュビエ(仮称)』！！」

刺された痛みで若干ハイになっている私の腹の口から臓物が噴射される。

「ヴェロロロ"ロロォェェェアッ！！」

鎌が抜けると同時に臓物がトゥナーの全身にまとわりつく。

「ぎゃあっキモいッス！しかもなんか痛いッス。」

それは本当に申し訳ない。

とりあえず距離を置いた事で刺された傷と内臓を『起死回生（エリドーナ）』で治す。

「へへ…なんちゃってゾンビアタック。」

マジで死ぬかと思った。

「へぇ〜治りもするんスねぇ…でもそんなに魔法使いっぱじゃ、魔力は空（から）寸前じゃないッスか？」

図星、私の魔力は限界だ。私はC.Q.ホロスリアの姿を解いてウニ形態に戻る。

「そう言う貴方も中々のダメージでしょ」

「自分はこうすりゃ良いんスよ！」

トゥナーが指でサインを送る。

後ろに気配がした。

「！…『提灯（アリストテレス）』」

過去一大きな口を開けた腹の口が後ろから襲いかかる大型魔物の腕をガツガツと平らげる。

ギィィャァア！

痛みで大型魔物が喚く

「これでビーム一回には充分！」

「つくづく面白い魔法少女（てき）っスねえ」

お互いに睨み合う。沈黙が辺りを包み、呼吸すら許さない緊張が走る。

「『超音速（アクセソニック）』」

「『マジカルビーム(仮称)』！！！」

これを外すわけにはいかない。

私は雷の様に動くブルフィン・トゥナーに＿＿

＿＿＿背を向け、大型魔物に光線を撃った。

私が吹き飛ばされるのと。大型魔物が爆発四散したのはほぼ同時、これで良い。

＊＊＊

変身が解除された私は地面に転がっていた。

土埃の向こうからトゥナーが歩いてくる。

「…なんで私を撃たなかったんスか？」

少し不機嫌そうだ。

「…貴方は魔法少女（わたし）としか戦わない…街の破壊に興味がないんでしょ？…なら魔物の方を倒さなきゃって思って」

朦朧としつつある意識で答える。

「なるほど、参ったッスね…」

「結局街や友人のためにしか戦えない訳っスか。面白くねえ〜。じゃあもうディアデマ✴︎アクスちゃんは用済みッスよ」

トゥナーは失望の眼差しで鎌をこちらに向ける。力が入らない。ここまでか。

「そう焦らないトゲよ。殺した所で次の少女がスカウトされるだけトゲ。」

割って入って来たのはアーちんだった。

「何用スか？妖精が」

「まあ聞くトゲ。全くこの娘ときたら無茶ばっかで世話が焼けるトゲよ。」

半分はお前がさせた無茶だろ。

「その点僕は優秀トゲから、＿＿＿＿」

アーちんは空を見上げる。

「もう報連相を済ませてあるトゲ。」

　その時、途轍もない速度で、それは空から降ってきた。彼女は高速で私達を抱き抱えると、トゥナーから離れた場所へ丁寧に下ろした。

「15:45分、魔法少女ジェリィ◎メドゥーサ、現着。」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

続く