第9話 魔法少女の戦い方じゃねえ!!

模擬店の買い出しに生徒たちが奔走している。

学祭が今週末に迫っていた。


ナマコの魔法で回復を覚えた私は元気を取り戻し、なんとか準備を手伝う(雰囲気を醸し出す)事に成功。それでとりあえず放課後までやり過ごした。


「じゃあ今日は戦略練るトゲよ〜」

とは言ってもアーちんはこの調子である。


「あのさ、あんまり準備抜けると私の信頼関係に響くんだよね。結局体育祭のリレー出る事になっちゃったし…そんなに言い訳のレパートリー無いしさ。」


それでも沙羅が信じちゃうから何とか上手い事行ってる訳だが(私が言うのも何だけど危なっかしい友人である)。


「仕方がないトゲねぇ…学祭当日は休みでいいトゲよ。魔物さえ出なければトゲけど」


「やった〜ありがと〜アーちん」


「なんか上機嫌トゲね。で戦略トゲけど、原則魔法は一つずつしか発動できないトゲ。例えば『鎧姫冠パラディアラ』での防御中には『偽装束アクトドレス』や『針姫冠ニーディアラ』を使えないトゲ」


「ナマコ形態でもウニの魔法は使えるの?」


「出来るトゲ。勿論逆も可能トゲよ。まだ真鈴ちゃんは遠隔で魔法使えないからステッキ両手持ちする事になるトゲけどね!」

私はモーニングスターと金棒を両手に持った魔法少女の絵面を想像して絶句した。早いとこ遠隔で魔法使える様にならなきゃ…


「その上で僕が提案する戦法はこれだトゲ!」


1.『針姫冠ニーディアラ』で針を出します。この針は魔法使用後もちょっと残るので先にいっぱい出しておく。


2.『偽装束アクトドレス』で透明化して後ろから相手を刺す。


「どうトゲ?透明化してそのままステッキでボコボコにも出来るトゲよ!」


「魔法少女の戦い方じゃねえ!」


「正々堂々が通用するほど甘い世の中では無いトゲ。誉は汐路逢浜で死んだトゲ」

アーちんは少し拗ねている。


「それはそうだけどさアーちん、信頼ってあるじゃんか。後ろから相手を不意打ちする魔法少女は誰も応援しないんだよ…」


「真鈴ちゃんは偶に魔法少女厄介オタクになるトゲね。」


「私が戦うんだから良いの!」


「そういうのは怪我しない余裕がある時だけにしておいて欲しいトゲよ」


〜♪


その時私の携帯が鳴った

沙羅からだ。

「もしもしガゼちゃん?今さ〜リレーの走順出たんだけどガゼちゃんの相手、黄間きはざまさんらしいよ〜」


「えっ!?黄間さんアンカーじゃなかった?」


「ガゼちゃんが最近足速くなって警戒されたんじゃね?」


「やり過ぎだろPC部幽霊部員に陸上部エースは」


「じゃそゆことで頑張って真鈴氏〜あ、そうd」


ブツッ

電話は沙羅がなんか言ってる途中で切れた


「えー…。アーちん今日走り込みした方が良いかも…」


「仕方ないトゲね学生は」

そう言ってアーちんは何処からかジャージを取り出した。


****

今日はまだ明るくえ微妙に人目もあるし、魔法少女状態での動きにもかなり慣れてるので変身なしでの走り込みだ。



「ゼェっゼェっ」

昼下がりの海岸沿いを走る。横腹が痛い。けれどこのままじゃ体育祭で大恥をかくことになってしまう。その焦りが岩ヶ瀬の足を突き動かしていた。


不意に足音が増える。


桶丸第三高校のジャージを着た、小麦色に焼けた肌の女の子。黄間きはざまさんだ。


「あれ?えーっと岩ヶ瀬さんも走り込みっスか?」

あんまり話したことない人だから微妙に気まずい。


「うん、ご存知だろうけど少しでも差を縮めないと色々ヤバい状況になっちゃったからさ」

戦う相手本人に言うのも変な感じだが。


「良い心がけっスね〜体育祭でも良い勝負ができそうスよ。」


「お手柔らかにね…ハハ」


「そうだ!ただ走るのもなんだし、勝負しないっスか?」

黄間さんは突如そう言い出した。


「いいけど、何やるの?」


「勝負内容は単純な事っス。」


そう言うと唐突に黄間さんは右手を掲げた。


「えっ何?…うわッ!?」



突如上から大鎌が落ちて来た。それを黄間さんが掲げた右手でキャッチする。




「__死闘デスマッチッスよ」



そう言って黄間さんは凶悪な笑みを浮かべ、黒い闇のオーラに包まれる。


「…ッ!?アーちん!!」


「受け取るトゲ!」ブォン!


だからモーニングスターを投げんな。


「クローゼスアップ!」


こちらも明明星モルゲンシュテルンをキャッチして変身する。


私を包む光と黄間さんを包む闇は、殆ど同時に消える。


「お久しぶりッスね、ディアデマ✴︎アクスちゃん。」


マグロの怪人少女、ブルフィン・トゥナーはそう言って狂気的な笑みを浮かべた。


_____________________

続く

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