学祭準備編

第6話前 知らない人が馴れ馴れしいよ!!

 相も変わらず夏の日差しは私達に猛威を振るっている。要するにクソ暑い。

私、岩ヶ瀬がんがせ真鈴ますゞが魔法少女になって3週間くらいが経とうとしている。


魔物が出始めたと言われた割には大した出現頻度でもなく、殆どがアーちんの地獄の特訓の日々だった(慣れたのは慣れたけど)。


たまに定期報告会で隣町の魔少連ましょうれん支部しぶに呼ばれて何をするかと思えば、事務員さん(ジェリィ◎メドゥーサ)とお菓子食べながら適当に駄弁る謎の時間を過ごすだけだったり、なんと言うか田舎の魔法少女は思ったより暇なのかもしれない。まあ良いことだけど。


***


 一方で桶丸第三高校の生徒達は体育祭の準備に勤しんでいた。


「!?ガゼちゃんいつの間にそんな足速くなったの!?」

 ストップウォッチを持った万田まんだ沙羅さらが目を丸くする。

「いや〜ちょっと最近走り込んでて」


「ああ食べ過ぎたのね…」


「ちがわい」


事実、数週間に及ぶアーちんの猛特訓の効果はひしひしと身体に現れていた。


「ガゼちゃん、このタイムだとアンカー任せられるかもよ?」


「えーでも流石に陸上部の人とかでしょーよ。黄間きはざまさんとか」


「あー転校生の子ね。嘘みたいな速さしてたもんね。」


_ちくり、と腕に刺激が走る。


「いてっ…ごめんちょっとトゲ刺さったみたい」


「え?大丈夫?真鈴氏ますずし


「平気だよ。ちょっと保健室に絆創膏もらいに行ってくるから」


そう言って運動場を後にして校舎裏に歩く。認識阻害魔法を解いたアーちんが姿を現す。


「海岸付近に魔物出現トゲ」


「それはわかるけど刺す必要あった?」


「スパイ映画みたいでカッコいいとふと思ったトゲ」


「思いつきで人を刺すんじゃねえ。…クローゼスアップ!」


なんか最近変身前に文句垂れてばかりな気がする。


***

……

「マジカルビーム(仮称)!!」

ギィィア

フジツボの魔物が灰と化していく。

「最近倒すのが早くなったトゲね。良い余裕っぷりだトゲ」


「キラキラアピール入れる余地も出てきたり?」


「問題は目撃者がほぼ居ない事トゲね」


「クソ田舎がよ」

そうやって悪態をついて変身を解こうとした時だった。




「おっかしいなここ集合の筈なのに…」

黒い服の少女(私もそうだけど)が砂浜を歩いてきた。

「あっ多分あの人だ!お〜い」

少女が手を振ってこっちに走ってくる。


「えっ誰?アーちん知り合い?」

「いや初見の魔法少女トゲ」


「良かった〜集合時刻なのに誰もいないんスから、それで今日の業務内容の確認なんスけど」


いや業務内容って何だよ。魔物の事だろうか。


「…こっちで片付けたから今日はあと報告だけトゲけど」

アーちんが応える。


「えっもしかして私遅刻っスか!?おかしいな時間通り合流してフジツボ先輩と戦う筈なのに…」

何か話が噛み合わない。あとなんか馴れ馴れしい。


「君、名前は?」

とりあえず聞いてみた。


少女は落ち着きなく喋り出す。

「確かにそうッスね、自分は今日から配属の怪人ブルフィン・トゥナーっス!えっと…の人っスよね!」


「えっ」

怪人。少女は確かにそう言った。



_____________________

つづく

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