ULTRAS12

@FOOTBA

第1話 FC盛岡と自分

「ピーーーーーー 」

N3リーグ昇格を賭けた試合が終わった。

掲示板にはハッキリと、堂々と、表示されている。

FC盛岡 3対1 HONDA.FC.A


「うおおおお!!!!」

「よっしゃあああ!!」

「やっと…やっとだ」


俺の周りには阿鼻叫喚する者や、泣き出す者がいる。そらそうだ。この試合は勝てば、あのN3リーグに昇格なんだから。俺も正直泣きそうだ。創設15年目にして、NFL(Nリーグ4部相当)優勝及びN3リーグに昇格。

この長い長い道のりを経て、ここまで登り詰めたことが信じられない。そして、8年間ずっといたNFLともおさらばだ。


選手達はピッチではしゃぎ、スタジアムはお祭り状態。俺もめちゃくちゃ騒いでる。

もう来年には30歳になるのに、こんなハチャメチャしていいのだろうか。いや、今日だけは子供でいさせてくれ。この後は、選手たちと勝利の歌を歌ったり、祝勝会でサポーターの仲間と飲みに行くんだから。




話を変えるが、ここでこのクラブと俺について、少し紹介しよう。俺の愛するクラブ「FC盛岡」は、今年で創設15年目。天皇杯出場経験無し、過去に3回の経営危機や、活動拠点が地方のため、観客者数や資金面に何度も悩まされてきた、苦労100パーセントのクラブだ。

けれど、来年からは夢のNリーグ参入。日本のプロサッカーリーグ3部で、FC盛岡は、どのくらいやれるのか、とてもワクワクしている。


サッカーがやりたくなってきた。けれど、この足腰じゃ、もう無理か笑…。


俺自身、学生時代は、サッカー部に所属していた。けれど、対して上手くもなく、めちゃくちゃ下手くそでもない。ただ少し足が早いだけの凡人で、試合に出ることはあまりないプレイヤーだった。


仲間を自分と比較して、優越感に浸る日々。

スタメンに選ばれず、勝手に怒る自分。

試合で上手くいかず、メンバーから、ピッチでの信頼を徐々に失う日々。


こんな想いはもうしたくなかった。


なので、高校時代に、サッカー人生を終わらせた。


大学時代は、お金が欲しかったから、もうひたすらバイト三昧だった。サッカーなんてする暇なかった。


こんな俺だから、大人になるにつれて、サッカーへの情熱は薄れていった。もうサッカーはどうでもいいものと考えていたんだと思う。

けれど、ある日、地元の友人から、休日にアマチュアサッカーの試合を見ないかと誘われた。俺は少し考えたけど、暇だったから承諾した。

友人と行った試合は、東北リーグ1部の最終節。

両チームどちらかが勝てば残留。もう片方が負けたら降格という、面白みがある試合だった。

スタジアムは立派な陸上競技場。3万人収容できるらしい。


俺はその時に「FC盛岡」に出会った。

また、FC盛岡を応援するきっかけになった試合だった。


その時の試合の内容は10年前なので、あまり覚えていないけれど、圧倒的な試合だったことは覚えてる。とんでもないスコアで、試合後、ネットで少し話題になったことは覚えてる。

その試合は、FC盛岡が、1対13で負けた。イカれたスコアだった。

(俺がFC盛岡の選手だったら、この試合で引退だな。)と思った。

友人と凄い試合だなぁと雑談している中、

ふと目に入った。FC盛岡の少ないサポーターたちの姿だった。

残留を賭けた試合にも関わらず、このスコアなのにも関わらず、サポーターたちは励ましの言葉だけを、選手たちに送っていた。

選手たちは、まだ下を向いていなかった。

サポーターたちに来年、絶対昇格する。と、宣言していた。

宣言後、選手は深々とお辞儀。サポーターたちは、拍手で選手を見送り、少ない声量だったが、「FC盛岡!」とチームコールをずっとしていた。

俺はその光景を見て、学生時代に得ることができなかったものを感じた。サポート心だ。

俺が「FC盛岡」の試合を見に行くようになったのはこの時からだった。

友人には、「地域リーグ2部の試合なんて誰が見るん?」と言われたが、俺は友人を殴った。

そこから、FC盛岡を応援するきっかけを作ってくれた友人とは音信不通になったが、流石に後悔している。

そして、8年前に、FC盛岡がNFLに昇格した時から、アウェイにも行くようになった。ゴール裏にも行くようになった。もうハマってしまった。FC盛岡は俺の人生の一部だ。


ここで長い話を終えるが、来年から始まるN3リーグに向けてチームは準備している。俺も準備しないとな。まずは、仕事を頑張って、アウェイにも行けるようにしないと。

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