土中の壜

@tapioca_milk_tea

第1話

窓辺に腰を掛けて絶望していた。外に在る芸術は須く私に翳を落とした。木漏れ日は私をスポットライトで照らし、風の囁きはその姿を嘲り笑った。彼らは喜びに身を打ち震わせ、踊っているが、私は床に根を張り動けなくなっていた。このようになってからいくらほど経ったか、果たして何周目の今日だろうか。先程からずっとそのようにして憎らしく外を見ていたが、一向にそこに飛び降りる事はできない。結局の所それらと踊るには床に這った根と私の残骸を集めていかなければ。できるならば私はもう既にそこで踊っているだろう。ふとそこで横に見える瓶達を眺めた。私は瓶というものが好きで、見つけるたびにそれを収集した。一つ一つには喜びとそれに準ずるものが詰まっていた。そこでふと、これが私の残骸なのではと考えた。これらを残骸にして集めれば、私に這う根は解け、芸術達と踊れるのではと。嫌いなふうに言っていたが、結局そこに入れるなら入ろうとしてしまうものだ。しかし、そんな喜び達を砕いて踊りに参加したとして、芸術達はそれを良しと思うだろうか。こんな理由づけをして私は自分で希望を踏み潰す。本当は踊りに参加することが怖いのだ。何故私はその希望を砕いてしまおうとしたのだろうか。私は此処にいるまま彼処にいきたいのだ。そのどちらかの喜びを捨て、苦しみを享受しなければいけない。私はつくづく愚かな人間だ。しかし何故芸術達はあんなに嬉々としているのだろうか。彼らも瓶を持っているのかもしれない。それならば私は何故踊れないのか。彼らは集合体で踊っている。しかして私は一人だ。それが原因ならば、私は彼らの喜びを見なければいけない。そうしてそれらを鑑賞し、愛で、最後に私の喜びを差し出すのだ。名案だ。それならば私はそこまで根を伸ばそう。土中の壜を見るのが楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

土中の壜 @tapioca_milk_tea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ