番外編① 幼馴染の想い - 寛視点
本編と関係ありませんが補足描写としてUPしました。本編だけ見たい方は飛ばしても大丈夫です。
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その日の放課後、俺──横田寛は一人で図書館の警備をしていた。
道都は生徒会の仕事で遅れるらしい。悟は本の整理。あかりは教室で補習を受けていた。
「ふー、一人って退屈だな」
俺は図書館の廊下を歩きながら、ぼんやりと考えていた。
あかりのこと。
幼馴染のあかり。小学校の時からずっと一緒だった。
いつも本を読んでいて、おとなしくて、でも笑顔が可愛い女の子。
最初は、ただの幼馴染だと思ってた。
「相棒」って呼んで、一緒に遊んで、困った時は助けて。それだけの関係だと。
でも──
「いつからだろうな」
俺は壁に寄りかかって、天井を見上げた。
いつから、あかりのことを「女の子」として意識するようになったんだろう。
中学の時か?あかりが髪を伸ばし始めた時。
「寛、どう?変じゃない?」
照れくさそうに聞いてきたあかりの顔を思い出す。
「似合ってるじゃん!」
そう答えた時、胸がドキドキした。
それとも、高校に入ってからか?制服姿のあかりを見た時。
「寛、一緒に登校しよ?」
いつもの笑顔。でも、制服を着たあかりは、なんだか大人びて見えた。
「ああ、もちろん!」
明るく答えたけど、心臓は跳ねてた。
そして、図書館に来てから。
道都と話すあかり。真剣な表情で訓練するあかり。本を読む時の穏やかな表情。
全部が、愛おしかった。
「やべえな、俺」
俺は頭を掻いた。
完全に恋してる。幼馴染のあかりに。
でも、言えない。
だって、あかりは──
「道都のことが好きなんだろうな」
それは、見てればわかる。
道都と話す時のあかりの顔。嬉しそうで、幸せそうで。
道都に褒められた時の、あの笑顔。
俺に向けてくれる笑顔とは、明らかに違う。
「くそっ」
俺は拳を握った。
悔しい。でも、仕方ない。
道都は完璧だ。頭もいいし、強いし、カッコいい。
守護者として、生徒会長として、みんなから尊敬されている。
俺なんて、ただの明るいだけの奴だ。
「勝てるわけねえよな」
でも──
「それでも、あかりの傍にいたい」
幼馴染として。仲間として。
あかりの笑顔を守りたい。あかりが幸せなら、それでいい。
たとえ、自分の想いが報われなくても。
その時、足音が聞こえた。
「寛?」
あかりだった。補習が終わったらしい。
「おう、あかり!補習どうだった?」
「大変だった。数学、全然わかんない」
「へへ、またわかんないことあったら教えるぜ!」
「ありがとう、寛」
あかりは笑った。
その笑顔を見て、俺は思った。
ああ、やっぱり俺は──
この笑顔を守りたい。
たとえ恋人になれなくても、あかりの傍で、ずっと笑顔を守り続けたい。
それが、俺の役割なんだろうな。
「なあ、あかり」
「ん?」
「俺たち、ずっと友達だよな?」
あかりは不思議そうに首を傾げた。
「当たり前じゃん。寛は私の一番の親友だよ」
親友、か。
ちょっと切ないけど、それでいい。
「へへ、そっか。なら安心だ」
俺は笑った。いつもの、明るい笑顔で。
心の奥の想いは、隠したまま。
それでいい。それが、俺のやり方だ。
「じゃあ、今日の警備、一緒にやろうぜ!」
「うん!」
二人で図書館を歩く。
いつもの、幼馴染としての距離。
でも、俺の心の中では、あかりはもっと特別な存在だった。
きっと、ずっと。
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