2.幼馴染の心配




訓練が始まって三日目。


あかりは少しずつ異能のコントロールができるようになっていた。でも、身体は正直だった。毎日の訓練で疲労が溜まり、授業中にウトウトしてしまうこともあった。


「おい、あかり。大丈夫か?」


昼休み、寛が心配そうに声をかけてきた。


「うん、大丈夫」

「嘘つけ。顔色悪いぞ」


寛は自分の弁当を開けながら言った。


「図書館の訓練、きついんだろ?」

「まあ、少し…でも、頑張らないと」

「無理すんなよ」


寛は真剣な顔になった。


「道都の奴、厳しすぎるんだよ。あいつ、自分にも他人にも完璧を求めるからさ」

「でも、それは私のためを思って…」

「分かってるよ」


寛は笑った。


「道都は口は悪いけど、根は優しいからな。でもさ、お前が倒れたら意味ないだろ?」


寛の言葉に、あかりは胸が温かくなった。


「ありがとう、寛。心配してくれて」

「当たり前だろ。俺たち相棒じゃん」


寛は照れくさそうに頭を掻いた。


「お前のことは、俺が守るって決めてるんだから」


その日の放課後、寛は道都に直談判した。


「なあ、道都。あかりの訓練、少しペース落とせないか?」


図書館の執務室で、寛が言った。


「なぜだ?」


道都は書類から顔を上げた。


「あかりが疲れてるんだよ。授業中も眠そうだし、顔色も悪い」


道都の表情が変わった。


「そうか…気づかなかった」

「お前、厳しすぎるんだよ」


寛は続けた。


「あかりは頑張り屋だから、弱音を吐かない。でも、無理してるのは見てて分かる」


道都は黙って考え込んだ。


「…僕の指導が、間違っていたのか」

「間違ってるとは言わないよ。でも、もうちょっと優しくしてやれよ」


寛は笑った。


「あかりは、お前のこと信頼してるんだからさ」


道都は深く息を吐いた。


「分かった。訓練のペースを調整する」

「おっ、素直じゃん」

「横田」


道都は真剣な目で寛を見た。


「君は、本当にあかりのことを大切に思っているんだな」

「ああ」


寛は即答した。


「幼馴染だからな。あかりが笑ってるのが、一番いいんだ」


道都は何かを考えるような表情を見せた。


「…そうか」


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