親には内緒の蜜月同棲――謹慎中24時間密着のプレ新婚生活
11日目 謹慎中 最強ギャルの朝凸
◆
散らかりきった部屋を、戦場にいるようなスピードで片付ける。
床に積んでいたラノベの山を、本棚に突っ込む。机の上のプリントを、ぐしゃっとまとめて引き出しに押し込む。
ベッドの上。枕元に置いていたラノベを見て、凍りつく。
表紙に描かれているのは、黒髪ロングの爆乳ギャル。タイトルは『塩対応な幼馴染ギャルが、扉を閉めて二人きりになったら母性全開で甘々搾り取ってくる』。
「……これ、バレるやつでは……」
会えない三日間。これを読んで、募る想いを消化していた。そうでもしないとやりきれなかった。
レナさんに似ていて、ページをめくるたびに沈んでいけた。
……にしたって、搾り取るって。我ながらこのチョイスは欲望に忠実すぎる。いや、面白かったけどさ。チューチューアイスとかを二人で搾っていた。
彼女が見たら何て言うだろう?
『何これ、アタシじゃん。キモ』と軽蔑されるか。
あるいは『ふーん。こーゆーこと、されたいの?』とニヤニヤぷくくされるか。
どちらにせよ、今のぼくの心臓には負荷が高すぎる。
(隠せ! 封印だ!!)
表紙が見えないようにひっくり返してから、大事に、クローゼットの奥へ。
一通り危険物は処理完了。部屋の中央で立ち尽くす。
通話が切れたあと、しばらくベッドの上で固まっていた。
ずっと固まっていたかった。こんな幸せ、今までなかった。けどレナさんがやってくる。それは今よりも、何倍も幸せ。楽しみすぎておかしくなりそうだ。
その場で、見上げた。
すぐそばにあった声の余韻が、まだ部屋の天井にこびりついている気がする。
『会おっか』
耳元で囁かれたひと言が、鼓膜の内側で何度も反芻される。
『住所、教えて』
続けて落とされた、その一言を思い出すたびに、心臓が、どくん、と暴れる。
「……ほんとに、来るのかな」
自分で教えたくせに、今さら不安になる。
SMSには、最後に送ったメッセージが残っている。
『東京都◯◯区◯◯町◯◯』
それが、既読。
たったそれだけ。
でも、その既読の向こうに、レナさんの姿が見えた。
寝落ちなんて、できるはずがなかった。
この目で見たい。画面の向こうじゃなくて、現実のレナさんを。
ピンポン、と鳴った。
心臓が、喉元まで跳ね上がった。
(……来た)
玄関までの数メートルが、フルマラソンより長く感じる。
こんなにも楽しみなのに。
どんな顔で会えばいい?
一晩中語り明かした。
電話越しで、あんなに……ぎゅうちゅう、した。
耳の奥に粘りついた、彼女の熱い吐息音。
ちゅ、じゅぷ、と鼓膜を震わせた、とろとろに濡れたリップノイズ。
『骨が折れるくらい、ぎゅうってして……っ』
スピーカー越しに懇願された、理性を溶かす、甘ったるい声。
あの時、ぼくらは確かに、離れた場所で、お互いを想像して抱き合っていた。
まだ、体は熱いままだ。芯が痺れたまま疼いている。レナさんは? ドア一枚隔てた向こうにいる彼女は、今、どんな顔をしている?
会いたい。
今すぐ顔が見たい。
でも、恥ずかしくて死にそうだ。
脳みそがぐちゃぐちゃに溶かされる。寝不足の頭じゃ、もう何も考えられない。期待と羞恥で、全身の血液が沸騰しそうだ。
ただレナさんに、会いたい……っ。
手汗で滑りそうな鍵を、どうにか握って回した。ドアノブを押す。
「……っ」
ドアを開けた瞬間、視界がバグった。
朝の光が、コンクリートに反射して、目も開けていられないほど眩しくて。
その光の中心は、制服じゃなかった。
そこに立っていたのは。
動画サイトのサムネでしか見たことがないような、国民的JK。
夜をまるごと終わらせる朝よりも眩しい、とびっきり反則級の最強ギャルだ。
「おっすー、オタク♡」
(あとがき)
彼女が堕ちるまで、あと89日。
👉 面白かったらブクマ。
👉 最強ギャルの朝凸&ぎゅうちゅうにやられたら★/ハート。
👉 プレ新婚生活が始まります!!お待たせしました。
👉 一言感想「これからの謹慎生活に期待することは?」教えてください。
(例「甘々搾り本が見つかる」「レナさんの手料理」「一緒にお風呂」「理性の崩壊」)
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