親には内緒の蜜月同棲――謹慎中24時間密着のプレ新婚生活

11日目 謹慎中 最強ギャルの朝凸


 散らかりきった部屋を、戦場にいるようなスピードで片付ける。

 床に積んでいたラノベの山を、本棚に突っ込む。机の上のプリントを、ぐしゃっとまとめて引き出しに押し込む。

 ベッドの上。枕元に置いていたラノベを見て、凍りつく。

 表紙に描かれているのは、黒髪ロングの爆乳ギャル。タイトルは『塩対応な幼馴染ギャルが、扉を閉めて二人きりになったら母性全開で甘々搾り取ってくる』。


「……これ、バレるやつでは……」


 会えない三日間。これを読んで、募る想いを消化していた。そうでもしないとやりきれなかった。

 レナさんに似ていて、ページをめくるたびに沈んでいけた。

 ……にしたって、搾り取るって。我ながらこのチョイスは欲望に忠実すぎる。いや、面白かったけどさ。チューチューアイスとかを二人で搾っていた。

 彼女が見たら何て言うだろう?

『何これ、アタシじゃん。キモ』と軽蔑されるか。

 あるいは『ふーん。こーゆーこと、されたいの?』とニヤニヤぷくくされるか。

 どちらにせよ、今のぼくの心臓には負荷が高すぎる。


(隠せ! 封印だ!!)


 表紙が見えないようにひっくり返してから、大事に、クローゼットの奥へ。

 一通り危険物は処理完了。部屋の中央で立ち尽くす。


 通話が切れたあと、しばらくベッドの上で固まっていた。

 ずっと固まっていたかった。こんな幸せ、今までなかった。けどレナさんがやってくる。それは今よりも、何倍も幸せ。楽しみすぎておかしくなりそうだ。

 その場で、見上げた。

 すぐそばにあった声の余韻が、まだ部屋の天井にこびりついている気がする。


『会おっか』


 耳元で囁かれたひと言が、鼓膜の内側で何度も反芻される。


『住所、教えて』


 続けて落とされた、その一言を思い出すたびに、心臓が、どくん、と暴れる。


「……ほんとに、来るのかな」


 自分で教えたくせに、今さら不安になる。

 SMSには、最後に送ったメッセージが残っている。


『東京都◯◯区◯◯町◯◯』


 それが、既読。

 たったそれだけ。

 でも、その既読の向こうに、レナさんの姿が見えた。

 寝落ちなんて、できるはずがなかった。

 この目で見たい。画面の向こうじゃなくて、現実のレナさんを。


 ピンポン、と鳴った。

 心臓が、喉元まで跳ね上がった。


(……来た)


 玄関までの数メートルが、フルマラソンより長く感じる。

 こんなにも楽しみなのに。

 どんな顔で会えばいい?


 一晩中語り明かした。

 電話越しで、あんなに……ぎゅうちゅう、した。

 耳の奥に粘りついた、彼女の熱い吐息音。

 ちゅ、じゅぷ、と鼓膜を震わせた、とろとろに濡れたリップノイズ。


『骨が折れるくらい、ぎゅうってして……っ』


 スピーカー越しに懇願された、理性を溶かす、甘ったるい声。

 あの時、ぼくらは確かに、離れた場所で、お互いを想像して抱き合っていた。

 まだ、体は熱いままだ。芯が痺れたまま疼いている。レナさんは? ドア一枚隔てた向こうにいる彼女は、今、どんな顔をしている?


 会いたい。

 今すぐ顔が見たい。

 でも、恥ずかしくて死にそうだ。

 脳みそがぐちゃぐちゃに溶かされる。寝不足の頭じゃ、もう何も考えられない。期待と羞恥で、全身の血液が沸騰しそうだ。

 ただレナさんに、会いたい……っ。


 手汗で滑りそうな鍵を、どうにか握って回した。ドアノブを押す。


「……っ」


 ドアを開けた瞬間、視界がバグった。

 朝の光が、コンクリートに反射して、目も開けていられないほど眩しくて。

 その光の中心は、制服じゃなかった。

 そこに立っていたのは。


 動画サイトのサムネでしか見たことがないような、国民的JK。

 夜をまるごと終わらせる朝よりも眩しい、とびっきり反則級の最強ギャルだ。


「おっすー、オタク♡」






(あとがき)


彼女が堕ちるまで、あと89日。


👉 面白かったらブクマ。

👉 最強ギャルの朝凸&ぎゅうちゅうにやられたら★/ハート。

👉 プレ新婚生活が始まります!!お待たせしました。

👉 一言感想「これからの謹慎生活に期待することは?」教えてください。

(例「甘々搾り本が見つかる」「レナさんの手料理」「一緒にお風呂」「理性の崩壊」)


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