第5話 今までで1番緊張する夜 その2

買い物を済ませた俺と朋美さんは、スーパーを出て俺のアパートへと移動する。


勿論、買い物袋は男である俺が持っている。両手に一袋ずつ。結構買い物したなぁ。朋美さんに散財させてしまって申し訳ないな。


​「雄二さん、荷物重くないですか? 私も一つ持ちますよ?」


​朋美さんが心配そうな顔をしてそう言ってくれた。しかし! 俺も男だ。意地がある。いくら買い物袋が重くて腕が千切れそうになっていたとしてもだ!


​「いや、大丈夫ですよ。このくらいは余裕ですから心配無用です。それに、朋美さんだって手が塞がっているじゃないですか」


(…本当は結構きつい。でも、この買い物は俺たちのこれからを象徴するようなものだ。男としてここで弱音は吐けない。)


買い物袋を両手に持って移動している俺が、自分のビジネスバッグを持てる筈も無く、申し訳無いのだが俺のビジネスバッグを朋美さんに持って貰っているのだ。ちなみに朋美さんのバッグはショルダーバッグなので手には負担はない。女性のバッグだから(俺の勝手な予想では朋美さんのバッグの中身は財布と化粧ポーチくらいだろう)そんなには重くないだろうと勝手に思っている。


​「俺のビジネスバッグ重くないですか? すみません、バッグ持って貰って。重かったら貸して下さい。俺が持ちますから」


俺のビジネスバッグには結構色々な物が入っている。営業の時に使うパンフレットやノートPCや筆記用具など。男の俺でも少し重たいと感じる時があるので、朋美さんみたいな華奢な女性には相当重く感じるのではないだろうか?


​でも朋美さんは俺のビジネスバッグをギュッと胸に抱き締めて


​「大丈夫です。雄二さんのバッグ、そんなに重くはありませんから。このくらい余裕ですよ♪ 気遣って頂いてありがとうございます」


​と笑顔でそう告げてきた。


​……でも朋美さん? バッグを持っている手が若干だけどプルプル震えているけど。本当に大丈夫なのだろうか? 凄く心配だ。


(しまった。俺の意地なんかより、朋美さんの負担を最優先すべきだった。何をやっているんだ、俺は。)


……これは朋美さんには申し訳無いが、歩くペースを上げて早めにアパートに辿り着かないと。じゃないと朋美さんの腕が限界に達してしまうかも知れない。俺のアパートまでここからなら後10分くらいだから。


​「朋美さん」


​「はい。雄二さん」


​「少しだけ歩くペースを上げても構いませんか?」


​「私は構いませんが。何故ですか?」


​「いや、朋美さん。本当は俺のビジネスバッグ重たいんでしょ?」


​「!? そ、そんな事はありませんよ!? 何故そう思うんですか!?」


​「だって...朋美さんの手。震えてるじゃないですか」


「っ! だ、大丈夫ですよこのくらい!」


​「俺はね、朋美さんに負担を掛けたくないんですよ。だから申し訳無いのですが、早くアパートに到着する為に歩くペースを上げさせて頂きますね」


​「……はい。本当の所は少しだけ重かったんです、雄二さんのバッグ。お気遣い頂きありがとうございます。……雄二さんは良く見ていらっしゃいますね。普通なら気付かない位の震えだと思うのですが」


​「……分かりますよそのくらい。さぁ急ぎましょう」


​「はい!」


そう言って俺と朋美さんは早足でアパートへと向かった。早足で歩いたせいか、いつもなら10分くらい掛かる距離が、今日は5分弱くらいでアパートに到着した。


急いで部屋の鍵を開けて中に入り、両手に持っている買い物袋を玄関に置き(投げ捨てた)、朋美さんから俺のビジネスバッグを直ぐに受け取った。


​「ありがとうございました。重かったですよね。すみません無理させちゃって」


​「いえいえ! 私が好きで持っていただけなので! 確かに重くはありましたが、あのくらい平気ですから!」


​でも朋美さん? 手をブラブラと振っていますよね。言葉と行動が伴っていませんよ? もしかして無意識ですか? 俺は朋美さんのその行動に気付かない振りをした。触れない方が良いだろうからな。


「汚くて狭い所ですが、どうぞ」


​「それじゃあお邪魔しますね」


​俺は朋美さんを部屋の中に招き入れた。買い物袋はキッチンへと移動させるのを忘れない。


​……朋美さん、靴を脱ぐ姿も綺麗だな。靴を脱いだ後もちゃんと向きを変えて揃えているし。あっ、俺の靴も揃えてくれた。自宅でもきちんとしているのだろうな。じゃないとこんなことは自然には出来ないからな。俺なんて靴を脱いだらそのまんま放置するからな。


​部屋の中に入った朋美さんはキョロキョロと部屋の中を見回していた。あまり見ないで欲しい。あまり部屋の中綺麗にしていないから恥ずかしいな。


​「お部屋の中綺麗ですね。私、男性のお部屋に来るの初めてでしたが、想像とは違っていました。びっくりです」


​「……朋美さんが想像していた男性の部屋ってどんな感じを想像していたんですか?」


​興味が湧いたので聞いてみた。すると朋美さんは顔を赤くして


​「…えっと、怒らないで下さいね」


​「大丈夫ですよ。怒ったりはしませんので。ただ世の中の女性の男性部屋のイメージが知りたかっただけですので」


​「……ゴミとペットボトルがあちらこちらに散乱していて、ベッドの近くにエッチな本があるイメージ……でした////// ごめんなさい//////」


​「…………」


​「な、何で無言になるんですかぁ! 怒らないって言ったのにぃ! 雄二さんの嘘つき!」


​朋美さんは真っ赤な顔をして顔を両手で隠してしまった。……可愛い。おっと、フォローを入れなくちゃな。


​「全然怒っていませんから安心して下さい。大丈夫ですから」


​「じゃあ何故無言になるんですかぁ」


​「いや、朋美さんが可愛いと思っちゃったので…つい言葉を失ってしまっただけです」


​「かっ、可愛っ!?」


​あっ、やべっ! つい本音が。下手すればセクハラ案件だぞこれ!?


​俺は自分の発言に慌ててオロオロになっていると


​「じ、じゃあ早速お料理作っちゃいますね。お台所お借りします。雄二さんはどうぞ寛いでいて下さい」


​と言ってキッチンへ逃げるように行ってしまった。





ここまで読んで頂きありがとうございます。


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これからも拙作を宜しくお願い致します。

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