“あいつ”と連れ立って妖怪くねくねを探しにいった“おれ”と、自分のことを怪人よだそうだと言う“彼女”と病院で出会った“あたし”。ふたりが語るふたつの過去と怪奇談。
くねくねは有名ですが、よだそうってなんだ? そう思って読み始めて、読み比べて、唸りましたよ。どちらもホラーではないんです。怪奇を入り口にして、ふたりがそれぞれ“あいつ”や“彼女”について語る――どちらもままならないものを抱え込んだ彼らの人物像を掘り下げていく回顧録なのです。
一人称がいいのですよね。語る対象が他人ですから、理解しきれない部分が大きくて、今もわからないことばかりで曖昧で、話をどれほど重ねても神視点じゃないからこそ謎と余韻がずっと居座る。
そして“おれ”と“あたし”がこの「わからない」という名の空白に自分の心情や心境を差し込み、対象者よりむしろ自分の心を浮き彫りにしていく展開、これに撃ち抜かれました。
モキュメンタリー風味の物語だと思ったらこの上ない私小説だった。そんななんともいえない叙情を噛み締めさせられる物語です。
(「“今”に潜むあやかしども」4選/文=髙橋剛)