偽ノ日常
NaIVIak0 -なまこ-
プロローグ 悲しき男の29日日記
第1話 9/1~9/6
9/1 一日目
やっとのことでバカンスを手に入れた。あの上司め、法律違反するかしないかのギリギリのラインで仕事を渡してきやがって。お陰様でそこらの人たちよりも一月遅くなってしまったじゃないか。来年もこれなら、あいつをセーヌ川に沈めてやろうかな。俺は今、それくらい怒っている。昨日は家に帰って満身創痍。服を着たまま玄関で寝たからな、日をまたいでもやはり収まらん、この怒りは。友人からの誘いもすべて断ることしかできなかった。まあ、あの上司にはもう、死んでも神に許されずに霊となったあとも天罰が下ってほしい。
とりあえず、一回、初日からネガティヴに行くのはやめよう。そろそろ12時を回る。俺はもう一回寝て、明日なにするか考えよう。
9/2 二日目
一人暮らしをしていて、やはり一つだけ。不便なことがある。ガールフレンドがいなくて寂しい?いいや、そんなことではない。「一緒に飲む仲間がいない」これだ!確かに、「寂しい」はそうだ。ただ、「寂しい」にもベクトルがある。そう。なんかこう、違うんだ。
今日の昼、友達に一緒に飲もうとのメッセージを送ったのだが、あいつらはもうバカンスが終わっていたらしい。ますますあの上司が嫌いになった。他の奴らにも送ってみたが軒並みダメだった。10人誘って、10人ダメか。まあそんな日もあるだろう。
今日は思いっきり飲む。バカンス取得祝い。そんな名目で酒を飲もうと思う。今、手元にはウォッカ、テーブルにはその他の酒がある。どうせバカンスが終わればまた仕事だ。今ここでぶっ倒れて病院に行けばバカンスが長くなるかもしれないし。急性アルコール中毒で死んだっていい。なんてことはないけど。まあ、いつ寝てもいいように今日記を書いてる。
9/6 六日目
3,4,5,6...3日間か?いや、今は夜の9時か。ならほとんど4日間ぐらい。寝ていた...というよりはほぼ気絶、昏睡に近い。なんでそうなったかって...なんでって...ウォッカ、テキーラ、ハイボール、ジン...どのくらい飲んだ?部屋の中が少し酒臭いのはそうだ。それが証拠か。
あー...水で薄めたっけ...確か炭酸水が1,2,3...本あったっけ?じゃあロクに割ってないな......死ななくてよかった〜。完っ璧に急性アルコール中毒で死ぬとこだった。酒に強くてよかった。初めて体質に感謝した。
腹痛え...
気持ちわりぃ...
頭痛え...
今どこにいるかって?そりゃあもちろん、トイレに決まってる。
...で、日記を書いてる。
どうやら俺はアルコール中毒者というより、日記中毒者のほうが当てはまるらしい。
にしても、不思議なもんだ。あれだけの酒飲んで、4日間、寝ていた。その割には糞尿の一滴すら漏らしていない。そういうこともあるもんだな。神様に感謝だよほんとに。11時40分を過ぎた。2,3時間近くトイレに篭っている。
少々、夜風に当たろうとする。するも、期待していたほど風は心地よくない。少し、生暖かい、しかし包容力の欠片もないバカンス帰りの風が裾を通ってゆく。
夜だというのに、やけに明るい。あれ?住んでいる街はこんな感じだったっけな?という思いに駆られる訳だが、この2,3年続けてきた日記ではもう定型文だ。12時。寝る時間だ。おやすみ。
今日わかったこと。こんな愚行は死ぬときにやること。
───────────────
みなさん、お待たせしました。NaIVIak0です。記念すべき第一作目の第一話です。
プロローグはこんな感じに主人公の日記から始まりますので少し平凡で平坦な物語が展開されます。だからといって撤退しないでください。お願いします(懇願)。
次回は11/5の22:00にて配信予定です。
───────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます