特殊能力者たちの特訓

リンネ

第1話 副隊長・ジンの特別訓練 其の壱

 11月3日。午前9時55分

特殊部隊本部・地下室にて。


 この部屋は、地下室とは無縁の姿をしている。壁や天井はコンクリートなのだが…床が花崗岩かこうがんで出来ているという、地下室より豪華で、訓練所に近しい雰囲気を放っている不思議な部屋。


 部屋の広さも地下室と呼べる程の広さではなく、短距離ならダッシュできるほどの広さで、六人が同時に武器を振っても互いに干渉しない空間を確保していた。


 そんな、地下室にいるのは六人の青年たち。薄い茶色の髪に、着崩した白いシャツとズボン姿の青年・ジン。 


 ジンと向かい合っているのが、金髪でオッドアイの小柄な青年・ライナと黒髪の小柄な青年・ノエル。ノエルの両手には、薄地の黒い手袋がはめれていた。


 彼ら二人の隣には、サーベルを腰にさしている薄い金色の髪をした青年・エイリスと、神妙な面持ちの橙色が混ざった金髪の青年・ビトリアに、赤い瞳に白い髪をした青年・アインもいる。


 ジン以外の五人全員が、緊張の色を隠しきれなかった。


 緊張している五人を見たジンは、不思議そうに言葉を紡ぎ始める。


「ん?お前ら何、緊張してるんだ?俺が本気でやるわけないだろう」


 彼の言葉に、ライナが反論した。


「緊張もするよ!だってジン、強いでしょ?いくら、僕たち五人で相手しても、コテンパにされるんだから」


 他の四人も無言で頷いている。ジンは深いため息を付くと、持ってきていた袋を床に置き、床に座り込んだ。


「分かったよ。お前らがそう言うと思って、これを持ってきたんだ」


 袋から取り出したモノたちをジンは、両手首や両足首につけ始める。ライナたちは、目を丸くしながら一部始終を見ていた。


「よし、これで準備万端だな。あとは…準備運動……」


 立ち上がったジンは、一人で準備運動を始める。


「え、ジン……、これ何?」


 ライナの質問に、ジンは準備運動をしながら答えた。


「ん?お前らのために、『ハンデ』を付けたんだ」


「ハンデ……?」


「そう。俺には不利なヤツで、お前らには有利なヤツ。俺は手足に重りを付けて戦う。しかも、『能力を制御している枷』も外さずにな」


「でも、お前らは本気でかかってこい。そんな感じだ」


「さぁ、俺を殺す気で掛かってこい」


 ジンの挑発的な発言。五人は怖がっていたが、意を決して戦闘体勢に入る。


 拳銃を持っているのはビトリアとアイン。エイリスはサーベルを腰から抜いている。


「ジンさん…やる気ですね……、これは腹を括るしかありません」


「ビトリアの、言う通りだね……。エイリス、覚悟は良い?」


「正直言ってやりたくないけど……やるしかないか」


 一方、ノエルとライナは武器も持たず、拳を握って構えていた。


「ノエル、大丈夫?眠くない?」


「大丈夫だよ、ライナ。おれは眠くない。この訓練が終わったら、イオから貰ったお菓子食べようね」


「うん!分かった!」


 私語を慎まず、仲良く会話をしている二人は、体術を駆使して戦うのだ。


 それは……ジンも同じなのだが……。




 



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