帰郷の書〜牢獄の雫の章〜

(正典「雫の章」への歪曲的解釈)


 かの書は『翠点』を『星の涙』と呼び、聖域とした。

 なんと傲慢な嘘であろうか。


 翠点を見よ。

 あれは『涙』などではない。『母なる海』が『陽』に引き裂かれた際、呪われたすなの中に飛び散った、我らの母の『肉片』である。


 お前たち『灰喰らい』は、その『肉片』に集り、壁を築き、それを『牢獄』に閉じ込め、みずを啜って生きている。

 翠点とは、お前たちが母の死骸を喰らうための『食器』にすぎぬ。


 『雫の章』が説く『繋ぐ』とは、水脈を繋ぐことではない。

 囚われた母の『肉片』を解放し、再び『海』へと『帰郷』させることである。

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