29:俺の中にもぶっといのが
魔力の回路がつながったらしいというので、互いの魔力が行き来しているのか確認することにした。
そこで、俺がユカに魔力を流したら、ユカが真っ赤な顔ではあはあ言いながらしゃがみ込んだ。今ココ。
「あのー、ユカさん?」
「……アーくんだいしゅき」
「ユカ!?」
異物が入り込んでユカの身体がおかしくなったのではないかと心配して声をかけると、いきなり飛びつかれる。
「ユカ、いった……」
わけが分からぬままに俺の口はふさがれ、こじ開けるようにユカの舌が入ってきた。
何これ!? こ、こっちにも心の準備ってものがだな!?
「たいへん失礼しました」
「……別にいいんだけど、説明頼む」
少し経って、冷静になったユカは草原に座り込んで頭を下げた。
仕方ないのでこっちも座る。
別に謝罪はいらないんだ。何も嫌なことなんて起きてないし。
で。
「もうね、すっごいのが入ってきたんだ。こう、こーんなの!」
「…何だよそれ」
俺からユカへと、魔力は確かに流れ込んだらしい。
ユカの身振りの通りならば、帝王宮の芯柱より太い流れになって入り込んで、悶絶して、思わず錯乱したのだと。自分の身体より太いって何?
「そもそもユカと俺じゃ魔力量に差がありすぎるだろう? 流れるだけでも驚きなんだが」
「回路をつなげたから、もうボクとアーくんに差はないんだ。ボクの中にある時はボクの魔力、ダーリンの中にあったらダーリンの魔力ってだけで」
「はぁ!?」
「ボクに全力で流した魔力は、元々ボクたちが持ってた魔力を足して半分に割った量だよ。すごかったー」
………。
「こ、これってユカにメリットはあるのか? 単に力を半分奪われただけじゃ」
「ボクがこの世界で生きていくには、これしかないと思うよ。ボクとアーくんは二人で一つ」
ユカの覚悟を俺は理解しきれていなかった。今になってそれを知った。
「それはそれとして、………その、入ったとか太いとか言うのはさすがに…」
「ふーん。…じゃあ、確かめてみる?」
「何をた……うがあああ………」
途中で自分の声がかすれて消えた。
ヤバい。
股の辺りから身体を串刺しにするように何かが押し込まれる感覚。
いや、さすがにこれは…。
「ボクはね、………もっと、もっと、入れてほしいんだ」
我が新妻が怖いんだけど。
言いたいことは山のようにあるが、ともかく回路はつながった。
あとは師匠を治療するわけだ。
「赤土龍は赤いと名がついているけど実際には濃い茶色で、ごわごわの毛に覆われてて、背丈はガラちゃんの腹のあたり。なんで高さの単位がガラちゃんなの?」
「あいつがぼーっとしてたら腹に衝突したんだ。わかりやすいだろ?」
「ボクはアーくんの胸のあたりだね」
「お、おう」
回路をつないだ理由は、ユカが俺の知識を使うためでもあったので、魔物に関する情報を流したらちゃんと伝わった。
一言もしゃべらず、頭の中で何かを伝えたいと念じて、ユカに読み取らせる。
ガラで測ったことなんて、俺は伝えようとも思っていなかった。ユカの話では、俺の頭の中の赤土龍に関する部分だけ読み取れるようになって、自分がぱっと思い出せないような細かい記憶も大量に流れたらしい。
で。
「……まさか、これだけなのか?」
「うん」
ユカの記憶を俺が読み取ってみる。
魔法関係は難しそうなので、ユカが暮らしていた家の情報を開示してもらったら、なんにもない。
木造二階建て、入り口の扉は引き戸、窓が引き戸の左右に二つ。あとは、勾配のきついトンガリ屋根。
「子供の落書き並みの情報しかない。ユカが思い出せないんじゃなくて、そもそも記憶がなくなっているってことなんだな」
「そうみたいだねー」
ユカは苦笑いだが、正直言って苦笑いで済む話ではない。
召喚の魔法を、彼女はコントロールしたと言っているけれど、実際にはできていなかった、それは間違いなさそうだ。本当にコントロールできてたら、火球になって山に落ちないだろうし。
「実験はもういいかな。早く師匠を助けたい」
「ああ、急ごう」
釈然としない思いを残しつつ、ウドガに戻ることにした。
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