2話 !?中庭の過剰防衛戦

2話 !?中庭の過剰防衛戦

私、メシア・ヘルメスは臆病だ。


だって私には外の記憶がある。掃きだめの古都、ソドムに捨てられる前の両親との記憶が……


「おい女、いや女児か?一丁前に俺達のひよこ豆弾を弾いたからって良い気になってんじゃねぇ」


パンッ! パンッ!ひよこ豆の銃弾が教会の壁を削る。私の翼が小刻みに震えた。


「どうせこいつら先込め式の古いマギテックガンしか知らねぇんだろうな」


「なら絶望しかねぇな、一度俺等の攻撃防いで満身創痍のお嬢ちゃんに良いこと教えてやるよ」


ひよこ豆たちが銃口をこちらに向けて整列する。思わず前に出てしまった。二十の銃口全てが私に向けられる。


「「俺達のひよこ豆は短機関銃!!」」


「「「ピヨピヨピヨピヨ」」」


ダダダダダッ!弾幕が迫る。息が詰まる。心臓が早鐘を打つ。


(怖い、怖い、怖い——!)


服に仕込んだ防御の護符が消費されてるのがわかる。


(怖い、怖い、怖い——!)


竜族の翼が少女の視界に広がる。


「交易魔術、【ダメージ換金】、まったくお前に守られるほど弱くは無いぞ」


「ごめんなさい、ドヴェルグ」


「だがまぁいつも通りだ、【コインマシンガン】」


放たれる銅貨、頼れる背中に隠れてヘルメスが動く。


「私は普通の錬金術師の家に生まれた普通の女の子、だからビビるし怖がるの、だって負ければ死ぬし、大切な物を失うの、そんなの準備するしか無いじゃない」


カチッ。ガチャリ! ガチャリ! ガチャリ!歯車が回る音。


教会の窓という窓から、仕掛けが次々と展開していく。


バリスタが窓枠を押し開く。


マギテックガンが照準を合わせる。


石弓、ボウガン、そして——


「て、テメェー卑怯だぞそう言うの」


ひよこ豆の1人?が叫ぶがカラクリは止まらない。


「だから死ぬほどビビって、死ぬほど準備するの!!」


ズンッ!教会の屋根に刻まれた巨大魔法陣が青白く発光する。


「【機械仕掛けのクリスマス】、全弾、斉射ッ!!」


ドガァァァンッ!!


バリスタの矢が空気を裂き、マギテックガンの光弾が雨のように降り注ぐ。


魔法陣からは氷の槍が無数に放たれ、ひよこ豆の陣形を容赦なく粉砕していく。


「ピ、ピヨォォォ!?」


「な、なんだこの火力はァァァ!!」


ひよこ豆たちが慌てて散開するが、あまりに遅い。


「貴方達の敗因は準備不足よ」


巨大なバリスタの影でヘルメスがつぶやく。


大丈夫、今日も私の翼は震えている。だから生きてる。


「【コインマシンガン】まったく持って金遣いが荒い」


ドヴェルグが銅貨を弾きながらヘルメスの隣に立ち、何時もと変わらぬ様にヘルメスの戦い方にケチを付ける。


それに彼女は笑って返した。


「あらごめんなさい、でも生きてる。これが私の守り方だから」


「なにかまわん投資のための貯金だ、それに何よりこの魔物は金になる」


フハハハと笑うのもまた何時も通り、


有翼族の錬金術師と竜族の商人魔術師、彼女もとっくに染まっているのだ掃き溜めに。


「ちくしょー、テメエら卑怯だぞ」


ひよこ豆の鳴き声虚しく、この戦いは終わろうとしていた。


「へへへ、下級戦士キャロットを倒したのはお前だな」


「クッソこの女、俺を輪切りにしやがった、綺麗な年輪が丸見えじゃねぇか!!」


リリスは3体のビーツを相手にしていた。


(弾丸を撃つひよこ豆がいなくなってやりやすくなったけどこいつら自体が速い)


「ショ糖を多く含むビーツSがやられたが、今のでお前の動きは見切ったぞ」


その葉っぱで編んだリーゼントでリリスを指?指す下級戦士ビーツ。


「俺等と同じ下級戦士のキャロットとビーツSを倒したのは認めてやろう」


モヒカンを見せつける下級戦士ビーツ!!


「「だが!!」」


「我々カリウム豊富な我らビーツKKブラザーズのコンビネーションでお前を完封する」


「ビーツSなど、たまたま近くの席に座ってただけで同じグループ扱いされるボッチに過ぎない」


まさかここで、ビーツSに悲しい過去!!


「貴様は別格、だが他の奴らは残りの下級戦士ビーツで方がつく」


「我ら先遣隊で貴様らを蹂躙出来るのだ!!」

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