戦国男児の下剋上

白尾ガイア@怠惰の化身

プロローグ 戦国を生きた者

 血塗れた原の中に、その男は倒れていた。

 

 長享2年6月18日、須賀谷原。名も知られぬ男は、俗にいう須賀谷原の戦いで、山内上杉氏についていた、十字槍を使う足軽だった。


 肥後国で生まれたその男は、なんの才能も無く勘当され、関東まで出てきたが金もなく彷徨っていたところを長尾忠景様に拾われて兵になった。

 しかし、才能の差とは辛い。同期たちはグングン槍の腕が上がる中、一人だけ武器が決まっていなかったのだ。

 

 そんな中、扇谷上杉氏との対立。そしてのちにいう長享の乱が起き、少し磨いただけの十字槍で戦場に出たが、思うより上手くいき、足軽大将に任命される手前の出来事だった。愛槍、美濃国の無銘牛角十文字槍が折れたのだ。相手は珍しいことに刀を使っていて、その刀で胸を刺された。急所は外れていたがもう立てない。

 

 嗚呼、金がなくなってもしぶとく生き抜いてきたばい。ばってん、こぎゃんおいじゃあ、もうおしまいか、

次の生ではもっと、もっと十文字を極めるばい。そんでいっかあの憎き刀を叩っ斬るたい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る