狐居酒屋 ~えー毎度バカバカしい小噺を一席~
みなつき
狐居酒屋
えー、毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席。
ある長屋に
ところがその亭主、朝から晩までゴロゴロゴロゴロちっとも働かねえ。
痺れを切らした
「あんた、少しは働いておくれよ。野に行って兎なり鼠なりさ、狩りするとかさ」
「何言ってんだい。俺は身体が弱いんだ」コンコンと嘘咳なんぞしやがって。
「あんたが働かないと、子のミルクも底つきちまうよ」
この亭主、悪知恵だけは働きます。
「俺にいいアイデアがある。そこの横丁の狸じじい、最近羽振りがいいそうじゃねえか。お前、安酒でも飲ませてさ。少しばかりおぜぜをいただくってのは?」
亭主が亭主なら女房も女房。
まあ、女狐と言えば昔から、少々性悪と相場が決まっております。
「悪くないね」と、家の前に机と椅子出して、狐酒屋の出来上がりってわけさ。
さっそく提灯を見て、狸じじいがのこのこやってきた。このじじい、酒と女にゃ目がねえってんだから、すっかり姐さんに入れ込んじまいやがった。
自慢の腹鼓に「あれまあ、素敵な出っ腹」なんて姐さんが煽てるもんだから、毎晩毎晩やってきて飲むは食うわ。子分をお供にポンポコポンポコ大騒ぎ。
ところがこの狸じじい、渋ちんときてる。明日払う、明日払うと毎晩、
これではたまらないってんで、「ちょっと、あんた。そろそろ狸じじいから、取り立ててくんないかい」と亭主に相談。
次の夜、狸じじいに少し酒が入ったところで、亭主が切り出した。
「旦那。そろそろ附け金を払ってくれ」
「俺、金なんぞ持ってないぞ」
「なんだと。羽振りがいいんじゃなかったのか」
「羽振りがいいのはカミさんの方さ」
「じゃあ、初めから払う気なんぞなかったってことかい」と、大喧嘩。
それを見ていたじじいの子分、呆れて姐さんにこう言った。
「おいら働き者だ。あんたの子の面倒も見る。こんな亭主放っておいて、一緒に来ないか」
「あら」と見れば、25-6ぐらいのトビの兄さん。これがシュッとしたいい男。年上の色っぽい姐さんに惚れちまったってわけだ。
「そうねえ」と、二人は手に手をとって駆け落ちさ。
これが本当の トンビに油揚げ攫われた。取らぬ狸の皮算用。
お後がよろしいようで。<(_ _)>
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