第12話 夢、オチ?

……



なんていうんだろう、別に馬鹿にしてるわけじゃないんだけど。いつの日にか夏樹と見た現代アートみたいだ、間近で見てもどんな感想というか

思いを抱けばいいのかわからない。


あの後は唖然となっちゃって、最低限の事しか聞けなかったと思う。




「そ、その、ご両親とは大丈夫?」

「うん!関係良好だよ、普通に一緒に暮らしてるし。」

「こ、後悔とかってない?」

「うん!」


……なんか終始「うん!」で片付けられたな。

でも美波がそれでいいならそれでいっか。


ちなみに呼び方は美波に矯正された。

「私も春に戻すから、春も美波って呼んでね?」

「え、いやでも」

「呼んでね?」

「……」

「ね?」

「……はい、」


俺という生き物はなんて圧に弱いんだ。圧をかけられると、なんだか意思がぽっくり折れる。


今日は情報量多かったから、考えまとめるために一人で帰らせてくれと頼んで帰っている。


「……もう家かぁ」


考え事がある時に限って家に帰るまでが早く感じてしまう。


「ただいまー」


さぁ、一旦考え事は置いといて、備えるか


さぁ、来い!


「……おかえり」

「え、」


帰宅時に必ず来る夏樹タックルが……こない?

それも驚きだが一番の驚きというか恐怖は夏樹だ

廊下の奥から、ぺたぺたとゆったりこちらに来る様子はどっかのホラー映画でのワンシーンそのもの


「ど、どうした?夏樹」

「お兄ちゃん、もしかしてさ学校に那佐美波っている?」


どうしてその質問なのか、なぜ夏樹に話したはずのない那佐さんが出てくるのか分からなかった。


てか、今かよ。ついさっきまで那佐さんの過去の告白を聞いていた俺からするとタイムリーすぎる質問だ。


「あ、あぁいるけど」

「はぁ」


溜め息をつく夏樹、それから頭をくしゃくしゃしながら「あぁもう!」と怒りを露わにしている


え?ほんとなに?こわいよぉ、、、


「ま、まぁいいやお兄ちゃん、あの人は碧ちゃんと同じ人種だから気をつけてね。あと、出来るだけ話さないで!」

「う、うん」


思わず返事しちゃったけど、別に学校では喋ってもいいよな?バレるわけないし…バレないよな?


部屋に戻って、ようやく休息を得る。考え事を

再開させたいが、過去についても振り返りたい。


ヒーローになりたくてあちこち飛び回った俺は、いったい何人助けたんだろう。


碧のことだけじゃいまいちだったけど、美波の話も聞いて、パズルのピースがハマるようにどんどん思い出せる。


……助けすぎじゃない?碧と美波だけでもすごいのに俺の記憶だと後何人かは女の子と仲良く遊んでた。


別に女の子を狙ってた訳じゃない。実際、男の子を助けた記憶も遊んだ記憶もある。


──春!俺はお前より凄いヒーローになるぞ!

──兄貴!俺、兄貴みたいになりたい!


ふむ、いるな男。思い出の中が女の子ばかりじゃ無いことに謎に安心感をおぼえる。


会いたいな、元気かなみつるかずだっけ

最近、女子としか話してない気がする。おかしいないつの間にか男が恋しいぞ?




風呂に入って寝るまで何しようかと暇してる俺の元に風呂上がりの夏樹が部屋に来た。


「お兄ちゃん、ひま?」

「あぁ、今ちょうど暇してた」

「じゃあ、久々に髪乾かして!」


少しびっくりしたけど、たまにはいいかと

やれやれと夏樹の部屋に行く。


「痒いとこはありませんか?お客様ー」

「んー、快適快適ー」


ドライヤーの音は兄弟の言葉を遮る事はなく。

ただただうるさく鳴っている。


俺はこの兄妹水入らずの時間が好きだ。夏樹とはいつでも話せるがこういうのを疎かにしたくない


「はい、出来た」

「お兄ちゃん相変わらず上手だね」


いつものポニテではなく、風呂上がりの髪を下ろしているスタイルはサラサラな髪を際立たせる。


「夏樹は髪下ろさないのか?」

「んー、下ろしちゃうと被るからなぁ」


へぇ、友達同士では違う髪の方がいいのか。

まぁ確かに身近な人となにか被っていると、

嬉しかったり、嫌だったりもする。


「じゃあ、お兄ちゃん寝よっか!」

「もう寝るの?いいけど」


ベッドに入る夏樹。それを見て俺も部屋に戻ろうとする。


「どこ行くの?お兄ちゃんもこっちだよ?」

「へ?」

「いやいや、夏樹さんそれは色々まず──」

「碧ちゃんとはしたくせに?」

「……みてたの?」


まじか、当人たちからすると感動のストーリーなんだけど、三者視点はやっぱり犯罪者だったか。


「お兄ちゃん、碧ちゃんに出来て私に出来ないなんて事ないよね?」


ここで否定すれば、夏樹の事を異性として意識していることになる!?


ギルティだ。それは兄としての矜持に反する。

そうだ、おれはお兄ちゃんだぞ?兄と寝たがっている妹がいたらどうする?


寄り添ってやる。それが兄だ。


「わかった。今日は一緒に寝よう」

「やった。」


小さく喜びのガッツポーズを決める夏樹。なんて尊いんだ、俺はこの子に劣情を抱きそうになっていたのか?


くそ、こんな事になるなら碧ちゃんにチンピラさんと一緒に俺のJr.を蹴ってもらうべきだった。


その前にまずは兄としての役割を果たそう。

夏樹が待つベッドに入る。碧の時とは違ってすんなり入れた。


「お兄ちゃん、あったかいね」

「そうだな」


夏樹が相手だからかな、案外早く眠気が来て俺はそのまま眠りについた。


「……ん」

「はぁ……あ、」


ん?なんだか声がする。当たり前に夏樹だが、なんだか様子がおかしい。うなされてるのか?それにしてはその声は違和感がある。


なんだか左手にも未知の感触がある。

と、とろとろ?


「……ん?」

「!!!……おにい、ちゃん?」


一瞬目を開けた。目に入った光景で全てを察して寝たふりをした。


違和感を感じた夏樹の声は喘ぎ声であり、左手の感触は夏樹のア、アソコだった。困惑が止まらない、これを見て俺にどうしろと?


ひとまず寝てるふりだ。やり過ごさないと


「お兄ちゃん、寝てる?」


小声でそう囁く夏樹の声はほんの少し色気を孕んでいた。


「ん、あぁ、お兄、ちゃん、」


……再開してしまった。これほんとどういう事?

夏樹はもしかして、俺のことが……好き?

今はそんな事、些細なことか。


……でも、どないしよこの状況


「お兄ぃ、好きぃ♡」


好きと明言されてしまった。俺は相も変わらず

寝ているままだが、気まずさが募っていく。


こんな状況なんだけど、俺はいま猛烈にトイレに行きたい。俺は寝る前にトイレ行かないと眠りにつけない人間なのだが、一度寝て起きてから寝ようとしても尿意が来る。


つまり、俺にとって尿意は睡眠欲と共生している存在である。


そんな事を考えていると、千載一遇のチャンスがまわってきた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん。んんっ♡!」


左手越しに感じたこの痙攣、分かりたくないけど分かってしまう。夏樹が果てた。


今しかない、今起きましたみたいな雰囲気で夏樹に猶予を与えつつ起き上がる。


出来るのか?俺に


いや、やらなきゃ別の意味で俺が果ててしまう。


「ん、ううん」

「え、おにいちゃん⁉︎」


大丈夫、ゆっくりゆっくり


「あぁ、夏樹起きてるのか?」

「う、うんお兄ちゃんも起きちゃった?」


スルスルと布が擦れる音がする。


まだだな、もう少し時間がいる。


「あぁ、ちょっと、トイレに」


左手に感触、たぶんティッシュだな。でももちろんここでは

何も聞かない。


今だ!


上体を起こし、目を擦る。


「ふわぁあ、じゃトイレ」

「う、うん。気をつけてね」



用を足して手を洗う。


あぁ、どんな顔して夏樹に会えばいいんだ?

これが普通の兄妹……な訳ないですよねぇ


いや、このまま寝ぼけたふりして自分の部屋に戻って寝よう。色々考え事があるのもそうだけど、最近満足に寝れていない。


そう思って、2階に上がら自分の部屋を目指す。

ところが……


「な、夏樹?」


部屋の前には夏樹が居た。居たってか、ここは

通さんと言わんばかりに仁王立ちで立ちはだかっている。


「お兄ちゃん、今日は私と寝るって言ったでしょ?まだ寝ぼけてる?」


なんてことだ。あんなことがあったのにこの子は平然と俺と寝るつもりだ。でも、ここでの拒否は先ほどの行為を見たと言っている様なものだ。


ここは大人しく夏樹に従おう。


「あぁ、そうだったわ、ごめんね」


てか、シーツかなり濡れてた気がするんだけど、寝れるか?


「……え?」


目に映ったのは信じられない光景。びしょ濡れのシーツなんてものは存在しなかった。何度もどこを触っても乾き切ったいい香りのするシーツ。


なんだ?あれはなんだったんだ?


「どうかした?お兄ちゃん」

「え、いや」


夏樹からはそこはかとない恐怖を感じる。


「なんでもない、寝よっか」


そういえば、左手もそうだ。手自体はティッシュで拭かれていたが、トイレで手を洗うまでベタつきすら感じなかった。


あれは、夢だったのか?そう考えざるおえなかった。



え、俺が欲求不満なだけだった、てこと!?



ごめん、ごめんな夏樹。こんなお兄ちゃんで、


何はともあれ、そう考えると気が楽になった気がする。俺は後でJr.を叱っておくとして、今日は気持ちよく眠れそうだ。



「ふふっ、おやすみ、お兄ちゃん」



────────────

12話目過激回。

許される過激度合いがあまり分かっていないので今回はこんな感じで行かせてもらいました!

次回はヒロインたちの密会?

いつも応援してくださっている皆さんありがとうございます!♡や☆、コメントなどで

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