No doubt strawberry spy
@kennsaki
第1話
No doubt strawberry spy
この世の中には理不尽がたくさん転がっている。
ある人間は避けて通り、ある人間は踏みつけ、ある人間はそっと拾い上げる。だが大半は前者であり人間は基本的に他人の面倒ごとは避けて通りたいものだ。
そんな中落ちている理不尽から目を背けず日々感謝されることも賞賛を贈られることも勲章が与えられるわけでもないのに日々そんな理不尽を拾い上げる人々がこの世界に入る。
彼らは人知れず諜報員、スパイと呼ばれていた。
#1 兎と苺とクリームと弾丸と
朝いつも通りに六時に起きて朝ごはんを作ってスーツに着替え家を出る。いつも通りの電車に乗っていつも通りの道をいく。平日の成人男性の1日の始まりなんてこんなものだろう。
俺はこの何気ないなんでもない日常が愛おしい。
パンパンパン!
おっとこれが俗にいうフラグ回収というやつかな?
ほかの人が隣の車両に逃げ惑う中俺はスマホをしまって銃声の方へと向き直る。
「ごら!さっさと歩け!!」「ひゃい、ご、ごめんなさい!」
黒ずくめの男と小柄な成人女性。列車ジャックか?
「そこのひょうひょうとしたお前!」「俺ですか?」
「お前だよお前!!今から車掌のところへ行ってこの列車止めてこい!!」
銃を下賤にガチャガチャ鳴らしながら怒鳴り声をあげる。
俺はやれやれと肩をすくめながら男へと向き合った。
「言ってもしょうがない、か。」
俺はそうつぶやいた瞬間、男へ向かって走り出し彼は驚いて発砲した。
パン!パン!パアン!
俺は体をひねりながら男へと近づいていく。
足を思いっきり引いて男のみぞおちを一気に蹴り飛ばす。
「がっは・・・・!」
パン!
まだ弾があるのか俺はシートに飛び乗り男の頭に向かってけりを入れる。
「ぶっ・・・!」
脳震盪を起こしたのか男はよろめきたいせつな銃を落とす。
ふっ・・・!」
俺は勢いをつけて男の首を足でとらえ90度にへし折った。
「大丈夫ですか」
「は、はい!!」
背後で男が倒れる音がした。
「御協力ありがとうございました。以前からこの男は駅員たちとトラブルをたびたび起こしていまして・・・。」事件解決後に俺は警察の聴衆を受けそこから出勤した。
自動ドアをくぐり社員証をかざす。ピッと高い音がしてエレベーターに搭乗する。小さくなっていくスカイラインを見つめながら今日のタスクを考えていた。
チーン
俺の仕事場のフロアにつくと俺は真っ先に仕事のメールを確認した。
社員証をかざしピッと高い音がなったかと思うとゲートが開く。
PCを開くと新しいメールがボックスに入っているのに気がつく。
クリックするとそこには意味不明な文字の羅列がずらずらと表示される。
「本日九時にて会議室で新しい任務についての会議・・?あと、五分しかないじゃないか!!」
俺は急いでPCを畳むとオフィスをかけていく。
急いで階段を駆け上り会議室の扉を勢いよく開くと・・!
「遅かったなエージェントフレジェ。あと三十秒遅刻していたら貴様の鮮血で昨日クリーニングしたばかりのカーペットを汚すところだった。」
俺の上長である背の高い管理官が残念そうにマグナムをくるくる手で遊ばせる。
近くに清掃員が控えこちらに一礼してきたが本当に発砲するつもりだったのかこの上司。
「それでは会議を始める。この前新人研修を終えたルーキーたちが多く入社してきた。
そこで・・」
「お前らには新人教育を行ってもらう。」
え・・
「え・・?」
「ええええ!?」
会議室が一瞬静かになったかと思うとその場にいたエージェントたち・・俺と同じS級エージェントたちは一斉に声を上げた。
「待ってください、俺たちが!?抜けた穴はどうやって埋めるんですか!?」
「お前らの代えなどいくらでもいる。新人を教育しろ。」
「俺たちの代なんて拳銃渡されて現地に放り出されましたが」
「度重なる労基アタックの結果だ、ホワイト化だ」
「新人研修だけじゃダメなんですか」
「新人研修だけ済ませたルーキーどもがバタバタ死んでいったんだ、受け入れろ」
「えぇ・・」
資料を見ながら皆同じように苦虫をすりつぶしたような顔をした。
当然だ。初心者同然のルーキーを教育するなんてお荷物でしかない。俺も正直後輩との付き合いは大学以来のため気が重い。
「また厄介な任務だね、フレジェ」
「フィリア。君もこの任務を?」
黒い長い髪をリボン状にまとめ腰に刀をつった俺の同期であるフィリアが後ろから顔を覗かせる。
「本当ですよさっきも誰か言ってましたが俺らの頃なんて一等拳銃渡されてそのまま現場直行でしたから」
「それでは新人どもー、入ってこい」
スーツを着慣れていないまだのりが固まったままの新人たちがゾロゾロと部屋に入ってくる。
「それじゃプリントに書いてある2人でタッグを組めよ。今日の任務はまた社内PCに送ってあるから。以上」
管理官はそう棒読みで言い切るとさっさと会議室を出ていった。
「えーと、俺は・・十六夜兎京?変わった名前だな・・」
自己紹介の間を潜って写真の女性を探す。
するとやけに明るい声が前方から聞こえてきた。
「いったたた・・ヒールなんて履くの初めてで、ほんとすみませんすみません」
えーとあそこでしきりに謝っている小さい子が俺のバディこと新人か??
嫌な予感をさせながら近づくと彼女も気づいたようで持っていたプリントを二度見して顔を明るくした。
「フレジェ先輩!はわわこんなかっこいですみません、兎京。十六夜兎京です!」
「コードネームフレジェ。君の先輩だ。よろしく。」
2人してフロアを歩く。まじか、女の子か・・。
人生において数回しかこういう同僚と話したことのない俺は困ってしまう。
デスクへ着くと俺は山のようになっているプリントは無視して後輩に向き直る。
「今夜は武器承認の確保と殲滅。君、戦闘経験は?」
「一応戦闘訓練は。教官に止められたくらいなんで相手が心配なくらいです
締めるならわたしにおまかせを!」
鶏か
「じゃあ九時の任務まで俺たちは別件だな」
「はい!でも一体何を??」
今目の前にあるプリントの山こと報告書の制作だよ
夜九時の東京湾。
俺と兎京は2人してコンテナの影に隠れバイヤーを待った。
「いいか、バイヤーを見つけたらアタッシュケースは一つ回収しろ。それ以外はすべて処分な。」
「質がいいといっても俺たちにとっては屑に近い武器だ。すべて処分していい。」
最終確認をしていると夜の港に月明かりに照らされてのびた影がぞろぞろと湧いて出てきた。
「ラパーン、行け」
「ラジャなのです。」
十六夜はそういうと物陰へと隠れていく。俺はというと懐から取り出したレッドナインに手をかけ大きく深呼吸した。
「くっそ、殺せ!!!」
俺は足と手を中心に狙いを定め銃撃を開始する。俺の銃撃に気を取られたバイヤーたちを十六夜が気絶させながらアタッシュケースを回収していく。
「先輩!海に投げていいですよね!」
「ああ!」
「おい、やめろばか!!」「ふんっ!!!!」
ドボンドボンドボン
銀のアタッシュケースが藍色の海に沈んでいく。呆然とするバイヤーたちに白いトレンチコートを着た人物が指示を出す。
「邪魔なウサギは片付ける。いくら損害を出している。お前たちのその汚い内臓と体で払ってもいいんだぞ。」「?この声・・・・」「すみません、御前!!」
そういった瞬間バイヤーたちが一斉に十六夜へ襲い掛かる。十六夜は殴り飛ばしたバイヤーを盾にして次々と人間を暗い海へと落としていく。
「ラパーン!!!」
十六夜の後ろで銃をもって潜んでいた男が安全バーを外し標準を十六夜へあてていることに俺は気づく。
急いで銃の標準をバイヤーの上のコンテナの留め具へと発砲した。
「銃弾は、当たる!!!」
キイン!!
留め具に見事銃弾は当たり、コンテナが男の上へと落下する。
「ぐはっ!!」
「今のって・・・?あ!先輩ツ、後ろ!!」
「え・・・・・」
バキッ!!!
え・・・・・?何が何だかわからず俺の視界はブラックアウトした頭から暖かいものが流れる感覚。十六夜が何やら叫んでいる。俺の意識は深い暗闇の中に引きずり込まれていった。
バキバキッ!!
「つ・・・・!」
「口がかてえな、さすがだぜ。」
俺たちは時と場所は変わり港の小さな工場に連れ込まれ縛られていた。十六夜が背中で不安そうな顔をしているのがわかる。
俺は滴る血が口の中に入って不快な気持ちになるのを抑えながら必死に拷問まがいの尋問に耐えていた。
「じゃあ、この嬢ちゃんの頭ぶち抜かれたらしゃべるかえ??」
男がにやにやしながら+六夜の頭に銃口をごりっと突きつける。気絶しないだけ、さすがだ。
「く・・・・・・!俺たちは、全スパイ協会日本支部のものだ。とある人物から依頼を頼まれて武器の欧州と組織の壊滅を目的としてやってきた。」
「おい、お前!ほんとうか?」「正真正銘本当のことでっす!!」
「ちっ、あの国家の犬がよ。おい、お前らは交渉材料にしてやる。くれぐれも馬鹿な真似するんじゃねえぞ。」
...・・・・・」
バイヤーたちは笑いながら工場の外へと出ていく。
しんとしての打ち寄せる波のだけしかしない工場で俺は痛む傷口に耐えながら荒い息を吐いた。
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