第3話
なんだかんだで月日は流れて6歳の儀を受ける当日になった。
パパもママも私も今日はお洒落着をきてる。
普段着てるのが村に馴染むように着てる服なら
この服は都会に行ってもそのまんま馴染めるのではないだろうか?
私はギフトの不安よりも普段着ない服を着て気分がルンルンになってるのを抑えられなかった。
それにしても・・私は両親を見る。
父親は都会出身の人だからかっこいいのはわかるけど、母親は本当にこの村出身なのだろうか??
村出身としては段違いで綺麗なのだ。村の女性が嫉妬を起こすのもバカらしくなるくらいにレベチな美しさなのだ。
しかも性格も働き者で優しい。
というか・・父親のかっこよさも母親の美しさもどことなく貴族っぽい気がする。
もしかしたら昔父親も母親も貴族だったのかもしれない。
・・・ってそんな妄想をしていたらあっという間に教会に着いてしまった。
「ようこそおいでくださりました。」
あ!ルチアーノ神父さんだ!!
いつもの村民に紛れるような労働服じゃなくって今日はちゃんと教会の服を着てるのが新鮮だ。
いつも農作業を手伝ったりしてるし、よく父親と飲みに行ったりしてるから神父とは思わなかった。
「おや。ルルちゃん。可愛い服を着てるねえ・・よく似合ってるよ」
そう言って神父は私を抱っこしてくれた。
「ありがとう!ルチアーノ神父!」
「ははは・・それでは儀式でもしようかな?しかし一人だけと言うのはなんとも珍しいねえ・・。」
「ええ・・本当に。」
神父さんは私を下ろして、教会のドアを開ける。
私たちは教会に入っていった。
教会の内部をきちんと見たことなかったけど、中央に祭壇がありその奥に綺麗なステンドグラスがあった。
そしてその祭壇の前には男性神とも女性神とも区別がつかない美しい像が立っていた。
右手には天秤を左手には剣を持ってる姿が凛々しい神様の像だった。
「うわあ・・ヴェルーダ神ってこんなに美しい神様だったんだあ・・。」
私の声に大人たちはくすくす笑い声をあげる。
「神様も喜んでるよ。」
「さあ・・儀式を始めようか。ちくっとするけどごめんねぇ。
そして血を一滴この水晶に垂らしてもらえるかな?」
大丈夫です!前世でも注射は怖くなかった人間だから。
そして私が血を垂らした瞬間だった。
神様の像がいきなり光出したのだ。
『ああ・・やっと僕の声が聞こえたね。愛子よ。
そして愛子の親に神の信徒よ』
「ヴェ・・・ヴェルーダ様!!」
ルチアーノ神父は慌ててお祈りを捧げる。
『ああ・・そんなに畏まらないでおくれ。ルチアーノ。
君はずっとぼくに祈りを捧げてくれてるね。中央にいる人間とは段違いだ。
あの幼い時初めて祈りを捧げて以来、ぼくは君のことをずっと見ていたよ。
君が教会に入って神の信徒になったことがどれほど嬉しかったことか。
ぼくはそんな君に折り入って話があってこのような形をとらせてもらった。』
「おお・・何なりと!何なりとおっしゃってください!!」
『ぼくはね、この愛子のことをとても愛おしいと思ってるんだ。
そしてこの子を産んでくれた両親のことも。だからね・・・。
ぼくがこれから与えるギフトに関しては君は何も上に報告するのやめてくれないかな?・・と言ってもこのギフトはこの愛子としか理解できないと思うけど。
後一つ。ぼくはこの愛子にこの世界をあちこち回って欲しいんだ。
戦争もやっとなくなって穏やかなこの世界をこの愛子に死ぬまで享受して欲しいと思ってる。お願いできるかな?』
「も・・・もちろんでございます!!私ルチアーノが命に変えましても全うさせていただきたく存じます。」
『そうか・・ありがとう。ならぼくは君たちに奇跡を与えよう。
いいかいそこら辺に転がってる赤い雑魚な魔石があるだろう。それを集めてハート型にして1ペスコインと一緒にしてアクセサリーを作って売りなさい。ぼくが特別に愛の加護を与えよう。この小さな村が観光名所になるだろう・・。君がこの教会を維持するためにどれだけ頑張ってるかよく見てるからね?』
「ですが・・教義ではそのう・・・。」
『ああ・・いいんだよ!特別だ。それとも君はぼくよりも教会の教義を信じるのかい?』
「いいえ・・滅相もございません。」
『そうだなあ・・教会の印のアクセサリーをこの両親の商店に下ろせばいい。
商売のプロなんだから、なんとかしてくれるだろう?」
そう言って神様はパパとママを見る。
パパとママは慌てて神の祈りを捧げてる。
私は何がどうなってるかわからないまま突っ立っていた。
『さて。君たち両親にはお願いがあるんだ。この子がこれから先どのような人生を歩むのかは私にもわからない。神様だからと言って未来を見通すことなんてできないからね。だからこの子をどんな時でも愛して欲しいんだ。この子はたっぷりと愛情を与えることが大事な子供だからね。』
ああ・・神様は私の前世を知ってるんだ・・。
私が思い出さないようにしていた前世を・・・。
『ああ愛子よ。そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。ぼくはどんなことがあっても君を見捨てることはできないんだよ・・。ねえ・・。みっちゃん。ぼくのことをもう一度クロって言ってよ。』
私はその名前に目を見開いた!
「クロ?クロなの??」
『そうだよ!みっちゃん。なぜかぼくはこの国の神様になってたみたいだ。
みっちゃんが地球で命を終えた時慌てて地球の神様にお願いしてなんとかどうにか
魂を譲り受けて、この国に転生させたんだ。もう一度だけでいいからみっちゃんに会いたくって。』
私は前世の時、両親からネグレストに近い形の扱いを受けていた。
お金だけあったから、食べることに困らないし衣服にも困らない。
だが、徹底的に両親から愛情をもらうことはなかった。
今にして思い出しても理由がちっともわからない。
何せ父親と母親はとても仲が良かったから。
ただ、子供には異常に無関心だった。
私が生活できたのはお手伝いさんがいたからだ。
そして人としてマナーがなんとか維持できたのもそのお手伝いさんのおかげだった。
ある日、私は可愛い仔猫の黒猫を拾ってきた。それがクロだった。
クロは体は弱っていたけど、ペットを飼ったこともない私がどうしたらいいのかわからなかった。そんな中お手伝いさんは色々と手助けしてくれた。
ペットを飼う心構えや猫の世話の仕方などを教えてくれたのだ。
最初はおっかなびっくりのクロとの生活だったけど、お手伝いさん以外心が許せる相手がいなかった私はすっかりクロの魅力にハマっていってしまった。
そんな中。ある日のこと両親が酔っ払って帰ってきた。
「ギャン」
最初は小さい声だったけど明らかにクロの鳴き声だった。
私は寝ていたけど急いで起きてクロのところに向かった。
両親は汚物を見るようにクロのことを掴んでいた。
「や・・やめて!!クロはなんも悪いことしてないでしょ??」
普段親に反抗的なことを言ったこともない私が反抗的な言葉をあげたのが
両親は気に入らなかったのだろうか?」
「うるさい!!お前に大人の何がわかる!!!」
「そうよ!ガキはガキらしく黙ってなさい!!ああこんな子供産まなければよかった。お前を産んだおかげで体の線も少し崩れてしまったじゃない。ああ最悪!」
「本当だな!女として崩れたんじゃないのか?」
「はあ?何よ!あんたなんか全然たたないくせに何男ぶってるの?
毎回つまらない遊戯に付き合わされて演技してる私の身にもなってよね!」
「・・お前・・・」
「何よ?」
父親はイラつきついでにクロを思いっきり壁に叩きつけた。
クロはグッタリとして動かなかった。
「クロ!!クローーーーーーーーーーーーーーーっっ!!い・・いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ」
「ああ?うるさいガキだなあ。まずお前からぶっ殺すぞ?」
父親はそう言って私を蹴り上げた。息が苦しくなって意識がなくなった
私が気がついた時は病院のベットの上だった。
私が知らないだけで、両親は裏で悪どい商売をやっていたらしい。
その証拠が匿名で警察に通報され、そして警察の捜査がはいり両親は逮捕された。
一人っ子で親戚もいない私はお手伝いさんに拾われてその後私が死ぬまでずっとお手伝いさんいやお母さんと暮らすことになったのだ。
『みっちゃん。この世界ではもう前世みたいに嫌な思いしなくていいんだからね。絶対にみっちゃんのことはぼくが守るから・・と言っても、神様の過干渉は良くないからできる範囲が決まってるから・・。そしてこれがぼくが与えるギフト。
【ガイドブック】とこれはスマホ型のカメラ。使い方もわかるよね?
このカメラとギフト使って世界中旅して欲しいな?ぼくが作った世界をみっちゃんに
たくさん見て欲しいんだ!ぼく神様として頑張ったんだから。』
私は泣きながらたくさんうなづいた。だってうなづくしかできないじゃない。
これからどうなるかわからないけどこのギフトとカメラは大事に使おうと決めたのだった。
『そうそう・・このスマホ型カメラ。今の魔法具士の技術なら作れると思うから作らせて発展させてね。この村かこの辺境領なら、この魔法具は作れるでしょ?そしてこれも
君たちの辺境の資金にすればいい。王国にとって大事な拠点なのに雑な扱いしてるのも腹が立つんだよなあ・・。あ!これは内緒ね。・・・って今回はこれくらいかな?
そうだ!お願いがあるんだみっちゃん。黒猫のアクセサリーを広めてくれないかな?
黒猫モチーフならなんでもいいよ?最近信仰心が汚れてきてるから。教会メインで黒猫を広めて欲しい・・。そしてさ。いずれかこの村の教会独立するようになったら一番いいな。頑張ってねルチアーノ!!ああ・・たくさん喋ったなあ・・。楽しかったなあ・・。さっき最後と言ったけどやっぱり最後は嫌だ!もっと喋りたいなあ・・。
でも。今回はここまでか!じゃあみなさんまた会おうね。バイバーイ』
神様の銅像に光は収束した。
私たちは呆然としていたけど、一番早く立ち上がったのはルチアーノ神父だった。
「ふふふ・・ふふふ・・やった!やった!!やったぞーーーー!!やはり神はいるのだ!!ああこうしちゃいられない。今から孤児院に行かなくては!ああ・・えっと。
ギフトのことなどはお任せください!中央には絶対に悟られないようにするので。
あとは・・そうそう!!レーンさん。雑魚の赤い魔石があったらできるだけ欲しいのですが?」
その言葉にパパはビクッと体を動かしてさっきの言葉を思い出す。
「は・・はい!!任せてください!!アクセサリーができましたらうちの方にとりあえず一つおろしてもらっていいですか??」
「もちろんです!あと魔宝具の方もこちらでおまかせしていいですかね?」
「もちろんですわ!そっちは私がなんとかしますわ!!」
今度は母親が立ち上がった。
「で・・ではヴェルーダ神様が満足する結果を作りましょう!!」
この人生においてとても濃い1日が私の人生の歯車を確実に動かせたのだった。
それと村の運命も。
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