23日目

調査23日目:2020年11月23日


地方ニュース 電子版

タイトル:【緊迫】テロ警戒続く—周辺宿泊施設は満室状態に


2020年11月22日 15:00 報道


指名手配中の容疑者と見られる人物によるネット上での「宣戦布告」が世論を大きく二分している。警察は、子籠村の警察署周辺の警備を継続して一部強化。周辺には検問が敷かれ、不審車両の取り締まりが強化されている。


特筆すべきは、事件現場となった子籠村や、県警本部が所在する市内のビジネスホテルや民宿がほぼ満室となっている点だ。地元観光協会関係者によると、子籠村では通常、この時期は宿泊客が少ない時期であり、周辺宿泊施設の職員は困惑しているという。宿泊施設の予約状況を調査したところ、事件に強い興味を抱いた一般市民や、ネット掲示板などで「真実の探求」を標榜するネット民や、興味本位の者が多数現地入りしていることが確認された。この外部からの訪問者が、警察の捜査活動を妨害し、新たな混乱を招く可能性が指摘されている。


県警幹部は、容疑者の主張を再び「事実に反する逃亡犯の戯言」として否定。同時に、一部で囁かれる「村の警察官の動揺」についても「士気に問題はない」と強調し、情報の錯綜に警戒を呼びかけている。



 ◇



Webページ

呪いの箱を解呪する方法急募します(Part 13)

タイトル:【Akari.T】事件の真実と、私の宣戦布告


(Akari.Tからの続報はないが、現地の警備情報など情報提供コメントが多く投稿されている)


No. 166. ユーザー名: 現地潜入部隊A 投稿日時: 2020年11月23日 12:15

コメント本文: 子籠村の警察署の裏手の画像アップした。応援の警備員が数名増えたが、大したことない。簡素な建物でセキュリティは低いままだ。子守箱の保管はやっぱりあの簡素な保管室のままだ。警備の交代時に穴があるはず。


No. 167. ユーザー名: 子籠村民X 投稿日時: 2020年11月23日 12:30

コメント本文: 村の警察署には、事件後から異様な空気が流れているらしい。署員の中には、事件を「カルトではない」と信じている者がいる。特に若い署員に動揺が見える。


No. 168. ユーザー名: Deep-Runner 投稿日時: 2020年11月23日 13:00

コメント本文: 報道では興味本位の者で満室って言ってるけど、俺たちは愛と真実のために来てるんだ。ホテルが無理なら山で野営だ! この熱量が、あかりさんたちを救う力になる!


No. 169. ユーザー名: 天才ハッカー 投稿日時: 2020年11月23日 13:15

コメント本文:どうやら村の古老連中が集まっていて警察署に侵入を企てているみたいだぜ。確実に動くだろうな。


No. 170. ユーザー名: 情報収集班・宿 投稿日時: 2020年11月23日 13:30

コメント本文: 子籠村の民宿に宿泊中。明らかに「観光客」じゃない人たちがいる。カメラ機材、無線、みんな隠してるがバレバレ。奪還のための物理的な協力者が増えているのは間違いない。


No. 171. ユーザー名: ネットの真実 投稿日時: 2020年11月23日 13:45

コメント本文: 警察は「事実無根」の一点張り。箱の危険性を認めたくないだけ。隠蔽は許されない。Akari.Tさん、指示を待つ!


No. 172. ユーザー名: リア充爆発 投稿日時: 2020年11月23日 14:00

コメント本文: ホテル満室?  いいね、まるで世紀末のフェスだな。早く皆で裸のテロリストたちを捕まえろ。


No. 173. ユーザー名: 古物研究家G 投稿日時: 2020年11月23日 14:15

コメント本文: 古老たちの動きが活発になっているのは、箱が村の警察署という脆弱な場所に留め置かれていることへの焦りだ。彼らは自分たちの儀式で箱を解体するつもりだろう。


No. 174. ユーザー名: 潜入部隊B 投稿日時: 2020年11月23日 14:30

コメント本文: 署の裏手の警備員の交代時刻は変わってないが、応援組の警備員は村の地理に詳しくない。愛の戦士たち、チャンスはあるぞ。



 ◇



非公開ログ オペレーション・ラストリゾート

(秘匿チャットルーム)


呪い殺し:「子籠村の古老連中が動いているらしい。彼らは、箱が警察の手にある状態を危険視していて警察への侵入を企てているようだ」


深層恐怖:「古老って、以前、あかりさんや葉月さんを襲った奴らだよな。だが、箱の呪いの権威だ。彼らが動くのは本気だろう。警察に警備の穴が生まれるチャンスかもしれない」


葉月:「呪い殺しさん、真実の探求者さん、情報ありがとう。古老の動きは利用したいです。村の警察署も襲撃事件後は応援警備員で目が光っています。侵入のタイミングを合わせるなら古老の行動時期(作戦決行がいつなのか)を正確に特定する必要があります」


真実の探求者:「OK。だが古老の動きだけでは陽動は足りないな。警備突破は不可能だ。三段構えの混乱を生み出したい。古老の行動と別に、もう一つのダミー突入部隊を用意する。その混乱に乗じて本命(葉月さん、あかりさん、あとは数名の守護者)が侵入する作戦はどうだろう」


呪い殺し:「別のダミー部隊? なるほどな。水元の仇を討つためならやってみるか。その陽動は俺が考えるよ。村のじじいたちと合わせて突入失敗を演じてみせる」


葉月:「でもそれでは、陽動する呪い殺しさんが捕まってしまいます」


呪い殺し:「そのリスクなら、全員一緒だろ」


葉月:「でも……」


深層恐怖:「警察内の不穏な空気の情報もあるぞ。村の警察官の中にあかり氏の真意を信じる者がいるなら、貴重な協力者になるかもしれない。彼らの協力を得られれば箱の奪還も脱出も光が見える」


真実の探求者:「確かにそうだな。古老の動きとこちらに協力する警察官の存在、この二つが作戦の成否を分ける。深層恐怖さん、お願いできないか。村の警察官へ接触の可能性を探ってほしい」


深層恐怖:「了解。心理戦は得意分野だ。彼らが本当に『正義』を信じているのか、見極めてくる」


葉月:「本当に助かります、皆さんに感謝します」


深層恐怖:「気にするな。俺たちはあかり氏も、葉月氏も、水元氏にも理不尽に負けてほしくない。そう思ってるだけだ」


呪い殺し:「とっくに共犯だしな。名前出てないだけ俺たちのほうが助かってる」


呪い殺し:「……ところで葉月さん。一つ聞きたい。作戦とは関係ないんだが確認しておきたい。あなたは、あかりさんとやったのか? 女性に聞くのは少しためらうが大切なことなんだ」


葉月:「……(沈黙)。私の目的は、水元透さんを助け、あかりの使命を完遂することです」


真実の探求者:「わかった。クールじゃない質問だったな。葉月さんの覚悟は理解した。全力を尽くすぜ」


葉月:「ありがとう、みんな。必ず成功させる」



 ◇



橘あかりによる手記

日付:2020年11月23日 16:00


場所:山間部の隠れ家


焦燥感が日増しに募っていた。箱が警察にある時間が長引けば、それだけ透さんの容態が悪化するという予感が、私を突き動かしている。


葉月さんたちの慎重な判断は理解している。今の警備体制に無謀に突入すれば、全員が透さんのように犠牲になる。彼らの準備が整うまで私にしかできないことに集中する。


私は、あの寺子屋で、惨殺された子どもたちの怒りを子守りの愛により鎮めた。その時、私は同時に、子守箱の呪いを解く方法を知ったのだ。

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