酒場②

「オカルトのオークションでやっと手に入れたんだこの本。」


一見何の変哲も無い本だが、三浦がおぼつかない手で落としてしまい、その本の中身が一部見えた。


「じびぬがわらひなさかたやらぎなだびが」


三浦の様子も相まって、見てはいけない物を見たと思い、気を紛らわそうと近くにあった酒を一気飲みした。


本を拾ってから三浦はその本じーっと凝視している。

「もう少しなんだ..」

今度は聞き取れず、様子が明らかにおかしかった。


「三浦、何か悩みとかないのか?

悩みがあったら聞くぞ?外で飲み直すか?」


三浦に語りかけるように声をかけたつもりだったが、三浦の表情は一変した。


「悩みなんかない!バカにするな!

お前にオレの苦しみが分かるのか!?

この偽善者が!」

怒鳴る三浦の一声に、ガヤガヤとしていた店内は静まり返り、こちらへの視線が痛かった。

いたたまれなくなった私は、支払いを済まし三浦を引っ張るように店内を後にした。


外に出ると夜もあってか、夏と秋が混じりあった風が吹き、少し寒い。


三浦はいつの間にか本をしまい、私に背を向けて帰ろうとしていた。


「三浦、おい帰るのか、あっちで飲み直さないか?」


三浦は私の言う事など聴こえてないみたいに足を踏み出した。


「..そんな本手に入れて、生き返らせたい奴って、一体誰なんだよ!」


三浦は一瞬ピタリと立ち止まったが、またすぐに歩き出した。


もう声は届かない気がした。

諦めて帰ろうとすると急に後ろから、


「お前に生き返らせたい人はいないのか?」


問いかけられ振り向むくと、三浦がこちらを見ていた。

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