特撮ヲタクの俺に何故か好意を抱いてくるヒロインが現れた!?
烏野郎
第一章
特撮ヲタクの日常1
特撮。それは、今も尚テレビ放送でコアなファンから愛されるテレビジャンルの一つ。
まだテレビが白黒の時代から特殊撮影技術を用いり、現実世界に非現実的体験を見せてくれている。
怪奇、怪獣、SF、ヒーロー、アクション。これらが主に特撮の物語を形作ってきた。
今では特撮といえば、『ヒーロー物』という括りで纏められやすい。特撮関連雑誌も、特殊なスーツを見に纏い、戦闘ポーズをつけて表紙に載るものが大半である。しかし、ヒーロー物は特撮世界において人気であるのも事実だ。
今や特撮ヒーローのスーツをダンボールを使いペイントをして自作し、完成したスーツをコスチュームプレイする。その様子をインターネットの映像サイトやSNSに発信し、多くの視聴者に注目を浴びるようにもなっている。
特撮ヒーローは、年齢など問わず、老若男女多くの人達から認知されていき、有名人の中に特撮を愛する人が次々と現れている。今や大物声優・俳優が出演し、その認知度を更に広げて…
『えーいーじーくーーーーーん!!』
映士が脳内で特撮の魅力を淡々と引け散らかしてる最中、陽気な甲高い女の子の声が鳴り響く。
その声はだんだんと近づいていき、映士の脳内へと届き、先程まで引け散らかしてた特撮の魅力を話すのをやめた。
次の瞬間に、誰かが映士の左肩に手を置いた感触が伝わる。
やや押され気味になった左肩に、映士はびっくりした。
『うん?』
その手には見覚えがある。小さくて純白で肌質が良く、一本一本が細く整ったその小さな五本指。そして綺麗に整った爪。
女の子の手であるが、映士にこんな気さくにボディータッチしてくる女の子は一人くらいしか思い浮かばない。
『おっはよぉ!』
そして聞き覚えのある幼さもどこか感じられる声。脳内であの子か?と連想した映士は自分の背中の方に視線をやった。
『あぁ。おはよ!茜ちゃん』
思ってた人物だった。
映士は、茜と呼ぶ彼女に視線を合わせて、先程まで真顔で特撮の魅力を話してた時とは違い、顔面の筋肉が緩やかに柔らかくなって、にっこりとした笑みを浮かべる。
その表情に釣られて茜も同じ表情を見せる。
お互いが向かう大学行きのバスの停留所に並んで待っている二人。その前にも数名同じ大学に行く為に並んでいた学生がいる。
バスが到着してきた。濃い青色の巨大な大学のキャンパスの様子が写真に載っているそのバスが、二人が通う大学への通行手段である。
到着して、誰もいないバス内に次々と並んでいた学生達が空いている席を探して座り出す。
映士と茜はいつも座る席に向かう。いつも真ん中の右側。ここが二人にとっての指定席。今日も座れた。
窓際に茜が座り、背負っていた黒いリュックサックを自分の膝上に移す。
映士もその横に座り、同じようにリュックサックを自分の膝上に移した。
バスが発車し、大学に向けて走行する。
その間に、映士は音楽を聴きたくなった。スマートフォンからプレイリストを画面に出し、いつもの選曲を用意。そして、耳に小型無線ワイヤレスイヤホンを装着。しようとした時だった。
『ねぇ、映士君。この前さ、アニヲタランドで何見てたのー?』
『え?アニヲタランド…えっ!?い、居たの?茜ちゃん』
にっしっしーと、満面の笑みを揶揄うように映士に向けた。茜のじっと映士の瞳に問いかけるように見つめる。
『映士君ってほんと好きねー』
『い、いいだろ?俺だって好きな物があるんだから…ってか茜ちゃんやめてって。しーっ!』
映士は自分の口元に人差し指で口封じするよう伝える。
辺りを伺いながら、茜にその話をあんまり公に話さないでと伝えた。
『俺が、これ好きだって言えるの…茜ちゃん…だけだって』
小声で茜に言った。
口を尖らせながら、映士は顔を周りに見られたくないようにシートに身を潜める。
わかったよ。と同じ声量で茜も答えた。何故か映士と同じようにシートに身を潜める茜。
お互いの視線が交わり合い、しばらく見つめ合うと、表情が柔らかくなり二人共笑顔を見せ合った。
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