赤耳の天啓
みるのあ
第1話 赤耳病
「いやね、そんなに構えなくても大丈夫だよ」
「突然のことでびっくりしているかもしれないけど、そんなに珍しい病気ではないのは君も知っているだろう?」
「ちなみに
「だーいじょうぶ大丈夫、私もこの仕事をやって長いから、たいていのことでは驚かないよ」
「だから、安心して話してほしい」
「それで、マコト君。君はどんな『
僕はここで初めて、固く閉じた口を恐る恐る開けたのだった。
「僕は―—―――――」
◆◆◆
「マコト、昼飯一緒に食べようぜ!」
教室で最も話しかけづらいであろう転校生の僕にもリクは話しかけてくれる。
「今日は何にしようかな・・・」
「僕は今日もカレーでいいや」
「またカレー?昨日もカレーじゃなかった?カレー好きなの?」
「いや、考えるのが面倒なだけだよ」
「せっかく学食のメニュー教えてやったのに意味ねぇ・・・」
カレーを職員から2つもらい、席に着く。学食利用者が少ないのか、席がかなり空いていた。
「君までカレーにする必要はないのに」
「俺はカレー好きだからな!そんなことより、学校生活には慣れたか?」
「ゲームのNPCみたいな話しかけ方するね」
「いや、転校してきてまだ1週間だろ?そろそろ慣れたかなって」
「まあ、新しい学校生活には慣れたよ。どっちかというと、これのほうがまだ慣れないな」
僕は右耳についているカバーを触ると、ため息をついた。
赤耳病という病気がある。
ある日突然、片方の耳が赤くなり、耳たぶがなくなってしまう病気だ。とはいえ、それで痛みが出たり、体調が悪くなったりすることはない。ただ、見た目が変わるだけである。一度かかると見た目が戻ることはなく、整形手術をしても元の赤い耳に戻ってしまうらしい。
健康被害がないのであれば問題ないと思うのだが、この病気は人から人へと移る可能性があるらしい。まだ解明されていない部分も多いが、このカバーを耳につけると感染が防げるというのだ。かなりシンプルな黒色のポケット状のカバーで、日常生活にそれほど支障はないが、最初はかなり気になる。最近はそれでも慣れてきて、気にならなくなってきた。
僕がこの、
赤耳病には見た目以外にもう一つ症状があるのだ。
「それにしても、Aクラスはもっといいもの食ってんだろうな」
「そうなの?」
「絶対そうだろ!超VIP待遇とかされてるって絶対」
「どうなんだろう。棟が違うし、説明も特にされなかったんだけど、そんなに待遇違うんだ」
「俺もAクラスになりたかったなー。せっかく『
「聞いてみたらいいんじゃない?別に聞いちゃダメとかではないんだよね?」
「Aクラスに知り合いなんていねえよ・・・。会うこともないし」
リクはカレーを食べる手を止めて、ため息をつく。そして、思い出したように手を動かし始めた。
「そういえば、マコトはどんな
「ん?僕はね・・・。『熱湯に触れると火傷する』だったね」
「それは間違いなくCクラスだな。言われなくても分かってるよなそんなこと。火とか熱い鉄とかでもなく熱湯限定なのもつまらないな」
「そういう君は何をもらったの?」
「俺か?聞いて驚け。俺がもらったのは『空を飛ぶ種類の鳥がいる』だ」
「・・・それはCクラスだね」
「だよな・・・。マジでつまんねぇ。空を飛ぶ種類の鳥がいるってなんだよ!大半の鳥は空飛ぶだろ!」
「まあ、ペンギンとか空飛ばない鳥もいるもんね」
「そんなの俺だって知ってるよ!あー・・・、Aクラスの奴らはどんな天啓もらってるんだろう。きっと世界滅亡の日とか未確認生命体とか宇宙人とかについて知ってるんだろうな」
そう言いながら、リクは窓に目を向ける。窓の外にある木に雀が何羽か止まっていた。ここ数日は快晴で、5月の桜の木が鮮やかな緑色をなびかせている。
赤耳病にはもう一つ症状がある。
耳が赤くなった時、頭に直接話しかけられたように声が聞こえ、その声がこの世界の絶対的な真実を1つだけ教えてくれる。これを国は『
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