路地裏の激闘

アズエルの解毒が終わった後、僕は今日のご飯の食材を買いに市場に来ていた。


「アズエルが好きなムニキノコも買っておこう。」

ちなみにムニキノコによく似たムニダケっていう猛毒キノコがあるから気をつけてね!って…誰に話しかけてるんだろ、虚しくなってきた


まあいいや、買い物もだいたい終わったし。

そろそろアズエルを探しに行こうと

そう思い、市場のある賑やかな通りから外れ、人気のない路地裏に出た。


なんだか不気味だなぁ…

霧が濃いのがどうにも怖いや。そんなことを考えているうちに、僕の目の前に1人のフードを深くかぶった男が立ちふさがった。


「どうかしましたか?」

僕は問いかけたが返答が帰ってくることはなく、

その男は斧を取り出していきなり襲いかかってきた。

幸い相手の武器は剣の類ではない。

迎え撃つしかないか!


「火魔法〈ファイアボール〉!」

僕が言葉を発するとその言葉は火の玉となり、敵に飛んでいく。

しかし、その火の玉が当たっているにも関わらず、男は気にせず突進してきて…!


「がぁ!」

激痛とともに血が舞った。見ると胸に斧が刺さっている。幸いにも浅いが…どうにもおかしい。

僕の火魔法は決して人間が軽々しく当たってこれる威力ではない。それに斧を刺したのにここまで傷が浅いのも変だ。


「とにかく一回大人しくさせるしかない…か」

僕は槍を背中から取り、

敵から離れて間合いを取る。

魔法が効かないなら物理で攻めるまでだ!


「火属性付与エンチャントファイアブレイズランス!!」


属性付与エンチャント

武器や防具に魔法をかけてそれを纏わせる技術だ。


その燃えた槍を敵の足に突き刺した。

これは流石に効くはずだ。


「少し痛いけど我慢してください!」

その男は少しも苦しむ様子は見せなかったが、動きは止まった。

も、もしかして殺してしまっただろうか…

僕が不安になっていると、

僕がよく知った白髪の自称元"最強"、

アズエルがこっちに向かって走ってきた。


「やっと見つけたぜ!って、急ぐ必要なかったみたいだな」

肩で息をしながら男と僕を交互に見る。


「ど、どどうしようアズエル!僕人を、人を!」

僕の顔の何が面白かったのか、アズエルは馬鹿にするように笑ったあとこういった。


「こいつはアンデットだよ、生きてる人間じゃない。魔力で無理矢理動かされてんだ」

僕は緊張の糸が切れたように地面にへたり込んだ。


「なぁんだ…よかった」

人殺しになるところだったよ。危ない危ない


「しかしよく倒せたな。相手はナイフや剣をもってなかったのか」


「うん。幸運だったよ」

僕は答えたが、本当に運が良かったんだと再確認させられた。


「てか胸怪我してるじゃねぇか」

アズエルは言った、が


「心配には及ばないよ、僕は昔っから傷の治りがとんでもなく速いんだぁ。」

アズエルは驚いたように傷口を見て言った。


「本当だ、もう傷口がふさがってやがる」


「凄いでしょーふふっ」

僕は照れながら言った。


「ああ、凄い凄い。そんじゃこれから敵の親玉を叩きに行くぞ」


「えっ」

適当にあしらわれたショックと、突然の報告に僕は思考が止まってしまうのであった。

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