第17話 ユニーク武器
「ぶ、武具屋とひとくくりにいっても、NPCとプレイヤーが経営する店で、置いてある商品は全然違うんだ」
キョウノグラの大路を歩きながら、カオスが教えてくれる。
「NPCの店は安価だがその分性能は低い。一方プレイヤーの店は、鍛冶士の職業を取得した人がつくるから値段は張るけど、NPCより性能は良い。もちろん、ピンキリではあるけどね」
鍛冶士としてのレベルが高くなるほど、扱える素材も増えてより高品質な武具をつくれるようになるらしい。
「武具には等級が存在する。下から順に、コモン、アンコモン、レア、レジェンダリー、ミシック、ユニークの六段階だ」
「レア度が違うと、どうなるんですか?」
「単純に強い。武具に付随する追加効果の数や、基礎能力の高さは等級に影響される。だから冒険者はこぞって、レアリティーの高いものを欲しがるんだ。といっても、レアリティが低いからって、絶対にダメってわけじゃない。武器は特定の素材を消費して強化することができるからな」
必ずしも、レアリティーだけに左右されるわけじゃないのか。
たとえば、初期状態のアンコモンよりも、強化を施したコモンの方が武器攻撃力は高くなるなど……。
ただし、強化するのには注意がいる。強化された武器にはレベル制限がかかり、条件を満たしているレベル以上の者でないと装備できなくなるそうだ。
ユキノさんに出会った時に、刀が弾かれたのもそれが原因だろう。さらに、職業によっても装備出来ない装備も沢山あるらしい。
「へー、カオス君、詳しいんだねー」
カスミンさんが感心すると、カオスが顔を恥ずかしそうに顰めた。
「ま、まあこのくらいは攻略サイトに書いてあるし……」
「さっすがお兄ちゃん、伊達にゲームばっかしてないな」
「うっ、うるさいぞ!」
僕とはもう普通に喋れるようになったのに、カオスさんのカスミンさんに対する態度はぎこちない。
女の子が苦手なんだろうか?
まあでも、ちょっとわかるな。僕も憧れのユキノさんと会う時は、かっこよく思われたいと欲がでて、緊張してしまうから。
「ユニーク武器を持っている人はいるんですか?」
「いる、現在6人のプレイヤーが所持をしていると公式から発表がでている」
「たったそれだけ……」
数多いるプレイヤーさんの中で、たった数本か。
「暇な時は街を巡ってみるのも面白いぞ。武具屋以外にも、色んな店があるんだ。たとえば、ドロップアイテムに、道具の
「お兄ちゃんはそれ目的でお金を溜めてるんだっけ?」
「そうなんだよ!」
興奮したカオスが、拳を握りしめて力説する。
「最高傑作のアニメ、バーニング・ブラックソウルで、キャラや装備のデザインを考えた人が期間限定で、初心者向けのスキンを格安で販売しててさっ、それがどうしても欲しくて……あ」
人が変わったように早口で語るカオスに、カスミンさんの戸惑う視線と、ミーリャの冷たい視線が注がれる。
こほん、と咳払いをしたカオスは、額にじっとりとした汗を垂らした。
「ま、まあそれは置いておいて、ほ、ほら目的の場所についたぞ!」
キョウノグラの大路沿いに、建てられた木製建築のお店。
店の入り口には暖簾がかかり、壁には剣と防具の絵が描かれている。店内には所狭しと、様々な武器と防具が陳列されていた。
「ほら、あれだよ」
お目当ての武器はすぐに見つかった。
NPCのおじさんが立つカウンターに目立つように飾られている。
銀色の輝きを幻視させるほどの、美しいショート・ソード。
白い貴金属で鍛え上がられたブレードはなめらかな艶を帯びている。
芸術的な美を秘めた刃に対して、装飾の類はなく、柄の部分に滑り止めで緑色の無骨な巻き革があるだけ。
「これがユニーク武器……かっこいいですね」
まるで魅力の魔法をかけられたように、 僕は目を奪われた。
カオスが激しく首を縦に振る。
「わかる、わかるぞモブ! この武器には男のロマンが詰まっているもの!」
ひとしきりショート・ソードを鑑賞し、疑問が頭に浮かぶ。
「どうして誰も買わずに残っているんですか?」
ユニーク武器なら誰でも欲するはず。
トッププレイヤーさんでも、買えないくらいに高額なのだろうか?
「理由は簡単さ、見ててくれ」
カオスは、ショート・ソードに手を伸ばした。
しかし、触れる直前に、見えない壁に阻まれたように弾かれてしまう。
そして、店頭にいたNPCのおじさんが首を肩を竦める。
「悪りぃな、あんたじゃこいつを扱いきれないようだ。売ることはできん」
「こういうわけさ、あくまで冒険の射幸心を煽るための見世物にすぎない。運営が何かしらの制限をかけているんだろう。最初からプレイヤーに売るつもりないってこと」
「あたしもやっとこー」
「私もチャレンジするぜ!」
彼女達が同時に手を伸ばすと、ぱちんと弾かれる。
「あはは、やっぱだめだわ」
「って、分かってたことだけどな」
カオスが頷く。
「こんな感じで、初心者冒険者が遊ぶアトラクション化しているんだ。しかも、武器の性能も見ることできないしで、完全に売る気はゼロ」
そういうことなら売れ残っているのにも納得だ。
期待していたから少し残念だけれど、見れただけで満足しておこう。
「モブっちもいっときなよ」
「奇跡が起きる可能性だってあるぜ!」
じゃあ、一応記念に僕も触っておくか。
そう思って、腕を伸ばした時だった。
———ビリっ!
「うっ!?」
激しい痛みが一瞬頭を走り抜けた。
これは……
「大丈夫か!?」
「……え、ええ平気です」
頭を抑えた僕を心配そうに見つめるカオスを、手で制す。
なんだこの痛みは?
いきなり襲ってきたけれど、痛みはすぐに消え去った。
気を取り直して、ゆっくりと手を伸ばし……僕はショート・ソードを手に取った。
「おめでとう、あんたにならこの武器を売ってもいいぜ?」
NPCのおじさんが放った言葉に、全員の空気が凍った。
……どうしよう、装備できちゃった。
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