第13話 SSR級の魔法
「僕だけのSSR級の……魔法?」
しかも世界に僕しかあつかえないって……この魔法のどこがそこまで特別なんだ?
「
戦闘が長引くほどリスクはつきまとう。
ブラストは全体攻撃ではなく、単体にダメージを与えるものだ。使い勝手こそ良いが、そこまで有用なものとは考え難い。
カスミンさんは青髪をゆらして、やれやれと肩を竦めた。
「はぁー分かってないなモブっち! いいかい、魔法やスキルってのは発動したら規定の時間が過ぎるまで同じ技は使えない。これは【ニュー・エリシオン】の常識!」
彼女はその理由を順序立てて説明してくれる。
「モブっちはボスの存在を知ってる?」
「はい、強力なモンスターたちの総称ですよね?」
「そう、この世界には色んなボスがいるの。フェールドにいるエリアボスや、ストーリボス、イベントボスって色々種類があって、中にはステータス差では絶対に勝てないギミックが搭載された敵もいるんだ」
ボスってそんなに種類がいたのか。
てっきり、強いモンスターをボスと呼んでいるだけと思っていた。
「ステータスで勝てないボスを倒すのに必要な要素、それがプレイヤースキルだよ。戦術を組み立て、いかにして倒すか。そこには、
どうなるか、か。
戦闘中は考えることが多岐にわたる。
攻撃だけじゃなくて、相手のモーションを見て、回避行動もしなくちゃいけない。
一撃が命取りになる格上相手では緊張で余裕もなくなるだろう。
そんな時に、どの魔法をどの順番で放てばいいかを考えるのは大変だ。
そこに大きなリソースを振り当てるくらいなら、有効打となる一種類の魔法を撃った方が効率が良い。
「同じ魔法しか使わなくなる?」
「正解! パワープレイのゴリ押しが成り立っちゃうわけ。だからこそ、そうならないように、
「な、なんとなく理解しました」
たしかに、ルールを逸脱したブラストは破格の能力だろう。SSR級と称するのも納得だ。
「けど、腑に落ちないことがある二つあるんですが……」
「なーに?」
「カスミンさんはどこかでこの魔法を見たことあるって言ってませんでした?」
「それなー、たしかにどこかで見た筈なんだけど……どこだっけ」
腕を組んでうんうん唸ると、唐突にはっとした表情で彼女はぽんと手を叩いた。
「お、思い出したー‼ モブっちの魔法って、チュートリアルのボスが撃ってきたやつと同じだ!」
「カスミンさん、その情報について詳しく!」
また、チュートリアルボスだ!
ユキノさんも言っていたけれど、一体何のことだろうか。
「え、モブっちは、トリガーハッピー野郎を知らないの?」
「と、トリガーハッピー野郎!?」
な、なんだその変な名前の人は!
「すみません、僕はチュートリアルってのをやってなくて」
「スキップしちゃったのか、色々学べるのにもったいないなぁ。トリガーハッピー野郎ってのはね、最初に【ニュー・エリシオン】のことをレクチャーしてくれる謎キャラなんだけど、これが超ムカつく奴でさ!」
思い出して腹をたてたのか、不機嫌そうにカスミンさんは唇を尖らせた。
「急に魔法盾を渡してきて、パリィを十連続で成功させろとほざいて魔法を連発してくるんだよ! しかもこれの判定がシビアで、成功するまで終わんないの。魔法を撃ってくる間はずっと笑って煽ってくる性格最悪のNPC! んで、その時の魔法がモブっちのブラストと同じやつだったわ!」
恨みの籠った声でカスミンさんがそう語り、拳を握りしめた。
「何がムカつくって、そこからようやく反撃のターンでストレス発散できると思ったら、あの野郎こっちが数回攻撃与えただけで、目つぶし攻撃して「サラバだ!」って消えてくんだよ……って、その目つぶしもモブっちが覚えてるやつじゃね!?」
「……みたいです」
「うわぁー、何であたし気がつかなったんだー!? まさかモブっちの力の秘密が、アイツと同じだったとは……。ちなみに、トリガーハッピー野郎はユーザーがつけた名前だけど、【ニュー・エリシオン】で最もヘイトを稼いだNPCで有名だよ」
僕は居た堪れなくなった。いや、僕がやったわけじゃないんだけど、同じNPCとして罪悪感が……本当にごめんなさい。
「……はあ、衝撃的事実すぎて、腰抜けそう。そういえば、あと一つ聞きたいことあるんだっけ?」
「はい、話は変わっちゃうんですけど、そもそもどうして
「……そ、それはほら、ゲームバランス的に運営が決めているっていうかさ」
「……運営ってなんです?」
「え、運営は運営だよ、この世界のルールを決めている神様的な?」
「ああ、神様のことだったんですね!」
「?」
時々耳にしてずっと気になっていたが、なるほど運営は神様のことだったんだ!
それなら納得だ。神様は僕らNPCに、役目を与える偉い人。理不尽な運命に一時は恨んだこともあったけど、こうして自由を与えてくれたから感謝している。つまり、力の制約なども、神が僕らに課した試練のようなものか。
でも、神様ってどんな方なんだろう、気になるな。
そもそも、数いるNPCの中で何故僕だけに自由を与えてくれたのか……いやそれ以前に、道具屋の店員として希薄な意識しか持たなかった僕が、自分の運命に不満を感じるほどはっきりとした意識が芽生えたのも、真相は謎のままだ。
『NPCタイプD チュートリアルボス』という職業、トリガーハッピー野郎、自我の覚醒、運営。この世界は、僕の知らない謎に満ちている。
だが、奇跡というのはそう何度も連続して起きるものじゃない。出鱈目に結ばれた紐を解けば一本の糸になるように、いずれすべての謎が繋がる、その時があるかもしれない。
まあなにはともあれ、謎が多いほど冒険をする楽しみがあるということだよね!
それよりも、今の僕が考えるべきことはもっと強くなること。
僕を否定した、シノノメさん、エンビさん、そして……イグニスさんには必ずやり返してやる。負けたまま泣き寝入りするほど、僕は甘くないぞって教えてやるんだ!
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