第25話 熊獣人の女の子

女神クリスティア様から巫女のことをご教示頂いた。

序に自分が神獣となった経緯も聞いたが・・・。

まあ現実を見よう。

リルは常に前向きである。

さて、巫女を見つけたらメイ様に預けるように言われたが、焦ることもない。

神託ではないのだから。

とりあえず、ジャポネ国を回ってみよう。

僕とサシャは、コトからトキオへ、トキオからオウウへと移動してきた。

旅の途中に魔族から襲撃を受けることもなく無事オウウに到着した。

「宿を探そう。」


「はい。」


オウウの冒険者ギルドに行き、比較的治安のよい宿を紹介してもらったのでそこを目指す。


「リル様、ありました銀雪亭。」


「うん。」


早速、宿に入り、空き室の確認をする。

「すみませーん。宿泊したいのですが、部屋は開いていますか。」


「いらっしゃい。空いてますよ。」


「2泊お願いしたいのですが。」


「お二人で一泊120,000ゼルなので、240,000ゼル金貨2枚銀貨4枚になります。

 朝晩食事つきになります。」


「かわりました。はい、金貨2枚銀貨4枚です。」


「ありがとうございます。お部屋にご案内しますね。」


部屋で夕飯までくつろぐ。

夕飯時に女中が呼び出しに来たので、食堂へ向かう。

食事は鮭が入ったクリームシチューと白パンだった。

「リル様、このシチューというもの美味しいです。」


「体が温まるね。」


「はい。」


「せっかく温まったのだから、今日は早く寝ようか。」


「わかりました。」


次の朝、早めに起きたので、宿から出て散策することにする。

そこで、サシャが何かを見つける。

「リル様、あそこのごみ箱が揺れています。」


「えっ。」

あれは子供かな。ゴミ箱の中に入って何をしようとしているんだろう。

しばらくすると、熊獣人の女の子がパンを2つ見つけたのか食べ始めた。

生ごみを漁っていたんだ。

こんな小さな子が・・・真っ黒になって・・・。

リルは見ていられなくなり、声を掛ける。


「ゴミ箱の物を食べるとお腹壊しちゃうよ。」


「お金がないんだもん。

お父さんとお母さんが居なくなって、こうでもしないとご飯が食べられないんだもん。」


「お父さんお母さんが居なくなったの。」


「怖いおじさんが来て、お父さんとお母さんを連れて行ったの。

 私はお母さんに隠れているように言われて隠れてたの。

 あれからお父さんもお母さんも帰ってこないの。」


「そうなんだ。大変だったね。」


「わーん。お父さ~ん。お母さ~ん。どこに行ったの。会いたいよ。」

熊獣人の女の子は泣き出してしまう。


リルは女の子に〈カサロス〉と唱え、汚れを落とす。

そして、収納ボックスからサシャ用に買った服に中で一番大きな服を取り出し、今身に着けているぼろぼろの服を着替えさせ、宿屋に戻った。

宿屋に戻るなり、リルは女中に説明し、追加料金を払い、朝食を用意してもらい、食堂で朝食を一緒に食べながら、詳しい事情を聴くことにした。

女の子の名はリセと言った。

リセが言うには親が連れていかれた理由に心当たりがないらしい。

ご飯を食べ終え、リルは〈カサロス〉を掛けたにもかかわらず、まだ汚れが残っているリセを見て、決意する。

魔法じゃ落ちない汚れ、お風呂に入れて綺麗にしよう。

「リセ、お風呂で体を洗うよ。」


「えっ、お風呂嫌いです。」


「ダメ。サシャ、プリン連れて来て。」


「はい。」

「ぷぷっ。」


プリンが体を伸ばしリセを包み込んでお風呂場に連れてくる。


「よし、洗うぞ。」


「いやー。お風呂嫌いー。」


10分後、リルはリセの両親が攫われた理由に目星がついた。

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