第23話 王都コトへ

昨日は、すぐに峰雪亭に戻り、結界を張って寝た。

サシャは店を出たら、プリンに突然体を包まれたので、寝入るまで困惑していた。

リルは思考を巡らせる。

プリンがサシャを守った。

あの時、魔族はサシャに何か仕掛けようとしたのだろう。

サシャが巫女というのが関係しているのだろうか。

情報が足りないな。

どうしたものか。

そう言えば、コトに彼奴が居たな。

嫌味な奴だが、私が知る限り、知人で一番博識だ。


「サシャ、突然で申し訳ないが、これから王都コトへ行こう。」


「えっ、わかりました。どうしたんですか。」


「昨日のプリンの行動が気になって、知人がコトにいるから、相談したいんだ。」


「かわりました。」


リルは変身魔法を解除し、フェンリルの姿に戻り、全速力でコトを目指す。

リルの背中にはサシャがまたがっている。

プリンはサシャの体を覆っている。

これで絶対防御の状態のようだ。

全速力で駆け抜けてきたので、昼過ぎには王都コトに到着した。

リルは再度人化すると、王都郊外にある稲荷寺を目指す。

1時間程で到着すると慣れた感じで境内の中に入る。


「白狐~白狐~いる~?」


しばらく静寂が続く。


「誰じゃ?」


「僕だよ、リル。」


「リル?リルという名で人族に知り合いはおらんが。」


「惚けないくても良いじゃん。」


「フェンリルのリルだよ。」


「おーあのハチャメチャ聖女の従魔リルかのう。」


「そのリルだよ。」


「何の用じゃ。」


「教えてほしいことがあるんだ。」


「ただじゃ教えん。」


「教えてくれたら、いなりを百個あげる。」


「200じゃ。」


「150。」


「180。」


「160。」


「しょうがない。160で手を打ってやろう。」


「食いしん坊め。」


「で、何じゃ。」


「巫女について教えてほしい。」


「巫女?仏事の巫女でなく称号の巫女か?」


「知っているの?」


「伊達に500年も生きとらんよ。」


「で?」


「称号の巫女は、世界樹ユグドラシルを支える者と言われておる。」


「世界樹ユグドラシルって!」


「そう。北大陸にあるあの巨大な精霊樹だ。」


「・・・・・・。」


「現在、魔王は10年前にリル達勇者パーティに討伐されて不在のままだが、北大陸は魔王の配下に占領されたままの状態よな。」


「魔王を討伐するだけで精一杯だったんだよ。

 生き残ったのは、カインと僕だけだしね。

 カインは左足を失ったし・・・。」


「別に責めているのではない。良いから続きを聞け。」


「はい。」


「世界樹の精霊力が尽きてくると巫女という称号の娘が12人生まれてくると言われておる。

 そしてその娘達の共通項が白髪と言われておる。

 また、その娘達には必ず守護者が付くとも言われておる。」


「はっ・・・・・。」

リルはサシャとプリンを見る。

伝承のままじゃん。


「昨日、魔族が現れたんだ。」


「魔族?」


「魔族の視線に気が付いた時には、プリンがサシャを全身で覆って護ってくれたんだ。」


「なるほどな。」


「魔族は世界樹から精霊力を奪い取り、新しい魔王の擁立をしたいのであろうな。

だが、世界樹の精霊力が弱ってきたので、巫女を集めて世界樹の復活を目論んどるのかもしれんな。」


「なら、魔族なんか滅ぼしてやる。」


「それはできんな。」


「何故?」


「リル、お主は何族だ?」


「神獣だよ。」


「そう、神族に該当する。よって、おぬしは介入できん。」


「えっ。」


「だが、戦いに参加はできんが、その子を護るだけならルール違反ではないぞ。」


「そうなの?」


「何も知らんのだな。」


「・・・・・・。」


「ハァー、後で、女神クリスティア様にお祈りするから、おぬしも付き合え。」

白狐はあきれた感じで大きくため息をつき、リルをお祈りに誘うのであった。

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