第三節 集結
美濃、岐阜城。
織田信長と呂布は、決戦の準備をしていた。
「呂布」
信長が地図を広げる。
「劉備と曹操、手を組んだぞ」
「...ああ」
呂布が頷く。
「厄介だな」
「だが、恐れることはない」
信長が笑う。
「お前の武力と、俺の戦術。この二つがあれば、負けはせん」
「...信長」
呂布が信長を見る。
「お前は、なぜ俺と組んだ?」
「...」
信長が黙る。
やがて、口を開いた。
「お前が、強いからだ」
「それだけか?」
「いや」
信長が呂布を見る。
「お前と戦いたかったからだ」
「!」
「だが、その前に曹操を倒さねばならん」
信長が刀を握る。
「曹操を倒した後、お前と決着をつける」
「...ああ」
呂布が方天戟を握る。
「俺も、お前と戦うのを楽しみにしている」
二人が笑い合う。
敵同士でありながら、互いを認め合う。それが、武人というものだった。
---
近江、小谷城。
劉備と曹操は、軍議をしていた。
「劉備」
曹操が地図を指差す。
「織田と呂布、岐阜に集結している」
「はい」
劉備が頷く。
「ならば、我々も動くべきだ」
曹操が立ち上がる。
「武田、上杉にも援軍を要請しろ」
「...曹操殿」
劉備が曹操を見る。
「この戦いが終わったら、どうなさるおつもりですか?」
「...」
曹操が黙る。
「また、争うことになるのでしょうか」
「...おそらく、な」
曹操が劉備を見る。
「だが、今は共通の敵がいる。それを倒してからだ」
「...わかりました」
劉備が頷く。
諸葛亮が口を開く。
「曹操殿、一つ提案があります」
「何だ?」
「孫権殿も、この戦いに参加させましょう」
「孫権...?」
「はい。三者で織田・呂布連合を叩けば、勝率は上がります」
諸葛亮が羽扇を揺らす。
「孫権殿の水軍があれば、琵琶湖から攻められます」
「...なるほど」
曹操が頷いた。
「では、孫権に使者を送れ」
---
瀬戸内海、厳島。
孫権は、周瑜と話していた。
「公瑾。劉備殿から、援軍要請が来た」
「はい」
周瑜が頷く。
「織田信長と呂布を倒すために、協力してほしいと」
「...どうする?」
孫権が周瑜を見る。
「行くべきか?」
「...」
周瑜が考え込む。
「孫権様。劉備殿は、いずれ我々の敵になります」
「ああ」
「ですが、今は織田と呂布の方が危険です」
周瑜が地図を見つめる。
「特に、呂布。あの男は天下無双の武人。放っておけば、いずれ我々にも牙を剥きます」
「ならば...」
「はい。劉備殿に協力しましょう」
周瑜が孫権を見る。
「そして、織田と呂布を倒した後...」
「劉備殿と、決着をつけるのか」
「その通りです」
孫権が立ち上がった。
「わかった。水軍を動かす」
---
各地から、軍勢が集結し始めた。
劉備軍、一万。
曹操軍、一万。
孫権軍、五千。
武田軍、五千。
上杉軍、五千。
合計、三万五千。
対する織田・呂布連合は、二万。
数では、劉備連合軍が上回っていた。
---
岐阜城。
信長は、報告を聞いていた。
「敵は、三万五千...」
「殿、このままでは...」
柴田勝家が心配そうに言う。
「いや」
信長が笑う。
「数ではない。質だ」
信長が立ち上がる。
「我々には、呂布がいる。そして、俺がいる」
「ですが...」
「案ずるな」
信長が刀を握る。
「勝つのは、俺たちだ」
---
その夜、呂布は一人、月を見ていた。
「貂蝉...」
愛しい女性の名を、呟く。
「お前は...どこにいる...」
その時、背後から人の気配がした。
「...誰だ?」
呂布が振り返ると、一人の老人が立っていた。
「呂布殿...」
「...誰だ、貴様」
「私は、ただの旅人です」
老人が頭を下げる。
「ですが、呂布殿にお伝えしたいことが...」
「何だ?」
「貂蝉様のことです」
「!」
呂布が立ち上がる。
「貂蝉を知っているのか!?」
「はい。貂蝉様は...生きておられます」
「本当か!?」
「はい。ですが...」
老人が悲しそうに言う。
「曹操に、捕らえられています」
「何!?」
呂布の怒りが爆発する。
「曹操め...!」
「曹操は、貂蝉様を人質に、呂布殿を操ろうとしています」
「...くそ!」
呂布が方天戟を握る。
「今すぐ、曹操を...!」
「お待ちください」
老人が手を上げる。
「今、曹操を攻めれば、貂蝉様が危険です」
「...!」
「まずは、この大戦を終わらせてください」
老人が消えていく。
「そうすれば、貂蝉様を救えます」
「待て!」
呂布が追おうとするが、老人は煙のように消えた。
「...貂蝉...曹操に捕らえられているのか...」
呂布が拳を握りしめる。
「必ず...必ず、救い出す」
---
翌朝。
信長が呂布を呼んだ。
「呂布、どうした?様子が変だぞ」
「...信長」
呂布が信長を見る。
「貂蝉が...曹操に捕らえられている」
「!」
信長の顔色が変わった。
「本当か?」
「ああ。昨夜、老人から聞いた」
「...曹操め」
信長が歯噛みする。
「貂蝉を人質に、お前を操るつもりか」
「ああ」
呂布が立ち上がる。
「だから、俺は...」
「待て」
信長が呂布を止める。
「今、曹操を攻めれば、貂蝉が危険だ」
「...わかっている」
呂布が拳を握る。
「だが...!」
「呂布」
信長が呂布の肩に手を置く。
「呂布。この戦を制してみせろ。貂蝉はそのあと、俺が取り戻してやる」
信長が真剣な目で言う。
「...信長」
呂布が信長を見る。
「その言葉忘れるな」
---
一方、小田原城。
曹操は、一人の女性と話していた。
美しい女性。その名は――
貂蝉。
「貂蝉」
曹操が女性を見る。
「お前を使えば、呂布を操れる」
「...」
貂蝉が黙っている。
「呂布は、お前のためなら何でもする」
曹操が笑う。
「それを、利用させてもらう」
「...曹操様」
貂蝉が口を開く。
「奉先様を、傷つけないでください」
「...」
「お願いします」
貂蝉が頭を下げる。
「奉先様は...私のために、十分苦しんでいます」
「...フッ」
曹操が笑った。
「お前も、呂布を愛しているのか」
「...はい」
「ならば、なおさらだ」
曹操が立ち上がる。
「お前がいれば、呂布を支配できる」
---
各勢力が、決戦の地へ集結していた。
劉備、曹操、孫権、武田、上杉。
対する、織田と呂布。
そして、人質として捕らえられている貂蝉。
すべてが交錯し、やがて――
日本史上最大の決戦が、始まろうとしていた。
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