「自由」といえば、籠の中から小鳥が解き放たれるようなイメージがある。しかし、籠から出て行った小鳥は誰からも餌を世話してもらえないし、寝床も自分で確保しなければならないし、外敵からは自分で身を守らなくてはならない。自由とは、自分で選んだことに自分で責任を持つという意味だ。ときには自分自身の存在そのものを賭けてでも。
屈強な女戦士の軍団で知られるダニア。その軍に所属していたネルは、戦争の後、軍と母国を捨て、たったひとり、自由な生き方を求めて旅に出た。決して居場所がなくなったわけではなく、友人もいたけれど、あえての決断だ。もちろん、もともと弓兵なので、弓の腕前には自信があり、そんじょそこらのならず者なら射抜くのもわけはない。彼女の目の前には、どこまでも広がる広大な世界が待ち受ける。気ままに旅するネルが出くわす事件とは?
事件に関してはネタバレを避けたいので、ここでは触れないでおく。本作は、強くて気ままな女性戦士の冒険譚だが、単に気ままなだけでなく、自分で選んだ道の結果を、ごく自然に自分で背負う覚悟をしていることが、言動のはしばしから見てとれる。おそらく彼女は、見知らぬ旅路の果てに野垂れ死ぬことになろうとも、無責任な恨み言を吐くことはないだろう。ストーリー上の波乱万丈だけでなく、彼女の潔さが、吹き抜ける風のような爽やかさで全体を貫いていて、読後感も心地よい。
ちなみに、弓兵ネルの前身は、作者様のシリーズ作「蛮族女王のプリンセス」シリーズに述べられている。ネルが「自分勝手」から「自由闊達」に成長をとげる過程が、迫力の戦闘描写とともに綴られており、本作でネルに興味を持たれた方にはこちらもおすすめしたい。